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2017年9月初旬、5Gのユースケースが具体的になるようなデモや実証実験を、ソフトバンクとKDDIが相次いでアナウンスした。ソフトバンクは4つのユースケースをデモ、KDDIは時速190kmという世界最速のハンドオーバーに成功した。

ソフトバンクは、ファーウェイ(華為技術日本)と共同で、5Gのエンドツーエンドネットワークが提供する「超高速通信」「超低遅延通信」「エッジコンピューティング」といった性能を活かしたユースケースを、パートナー企業向けにデモンストレーションした。デモは「超高精細リアルタイム映像伝送」「イマーシブビデオ」「超低遅延でのロボットアーム遠隔制御」「GPUサーバーによる遠隔レンダリング」の4つだ。

ソフトバンク「超高精細リアルタイム映像伝送」

「超高速通信」では、5Gネットワーク上で800Mbpsのスループットで伝送することで、高精細映像データを配信。実際には、目の前に見えるお台場の景色を60インチの大型モニターにほぼリアルタイムで映し出すことに成功した。「イマーシブビデオ」では、4方向の180度カメラの映像を合成して作成した広角パノラマ画像を、5Gネットワーク上に圧縮して伝送。スマートフォンやタブレットで臨場感の高いユーザー体験を実現できる。「超低遅延でのロボットアーム遠隔制御」では、2ミリ秒という伝送遅延を実現。エアホッケーゲームをするロボットアームをカメラの映像によって5G経由でリアルタイムに制御して、パックを打ち返すことに成功した。「GPUサーバーによる遠隔レンダリング」では、5G基地局に隣接して設置したGPUサーバーによってエッジコンピューティングを実現した。画像のレンダリング処理を、5Gの超高速・超低遅延通信で端末からGPUサーバーに移転して行うことができた。

KDDIは、5Gに関連する2つのアナウンスを相次いで行っている。1つはサムスン電子との高速移動中の5G通信について、もう1つはエリクソンとの4.5GHz帯を利用した実験についてである。

サムスン電子との実験では2つの成果を得た。1つが、時速192kmという高速移動中の5Gのハンドオーバーの成功。韓国の龍仁市にある「Everland SPEED WAY」 に構築した28GHz帯の実験システムで、複数の基地局間のハンドオーバーが可能なことを実証した。サムスン電子によれば、世界最高速での5Gのハンドオーバーの成果となる。もう1つが、時速205kmで走行する車両の中との5Gデータ通信の成功。こちらも世界最高速の記録だという。

エリクソンとの間では、4.5GHz帯による5G実証実験の実施に合意した。2017年度内に国内の複数の都市で、4.5GHz体を使った5G実証実験を実施する。エリクソンとKDDIは、2017年1月から東京の新宿で、5Gの周波数帯候補である28GHz帯を使った実証実験を実施している。今回の合意により、いずれも5Gの周波数帯候補である28GHz帯と4.5GHz帯で実証実験を実施することになった。

【報道発表資料】
5Gに関するデモンストレーションを実施(ソフトバンク)
世界最速! KDDI、サムスン電子と5Gを利用した実験で時速190km超での移動中のハンドオーバーに成功(KDDI)
KDDI、エリクソンと共同で4.5GHz帯を用いた5G実証実験の実施に合意(KDDI)

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。