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サッカー選手向け認知トレーニング

2017.09.13

Updated by WirelessWire News編集部 on 9月 13, 2017, 07:00 am JST

俊敏でボールコントロールが巧みな選手を集めてもサッカーの試合に勝つことはできない。チームで戦うスポーツの場合、個々のプレイヤーの身体能力だけ高めてもダメで、敵味方の位置と動きから状況を読み、先を見越して動くことが求められる。

オランダのサッカー・チーム、AZアルクマールの、ジュニアの若い(14歳から17歳)選手たちは、その能力をIntelliGymというコンピュータ・プログラムで養っている。画面にインベーダーの宇宙船がいくつも現れて、それらを撃墜するなど、一見すると単なるコンピュータのシューティング・ゲームだが、IntelliGymは認知スキルを上げるためのトレーニングであり、プレーを素早く読み取り、複数のプレイヤーの動きのパターンを同時に認識して、攻守の切り替えを迅速に行うために、脳のワーキング・メモリーを強化する。頭も筋肉と同じで、使えば鍛えることができるのだ。

記事によれば、週に2回、30分のIntelliGymトレーニングを10週間以上行った選手たち52名は、行わなかったグループに比べてサッカー場でのパフォーマンスが30パーセント向上したという。アムステルダムのVU大学による研究成果だが、ちなみに、過度な肉体トレーニングが身体に悪影響を及ぼすように、脳トレもやり過ぎるとネガティブな影響があるようだ。

IntelliGymには長い歴史がある。そもそもはイスラエル空軍の心理学者だったDaniel Gopher氏が、Space Fortressというビデオゲームをするとパイロットの認知能力が向上することに気づいたのがきっかけだ。これは20年以上も前のこと。この研究論文を読んだDanny Dankner氏が2001年に設立したACE(Applied Cognitive Engineering)社(直訳すると、応用認知工学社)が、IntelliGymの開発元で、現在はイスラエル工科大学(テクニオン)教授のGopher氏は同社の研究部門を統括している。

ACE社は2015年、EU(欧州連合)から220万ドルの資金提供を受けてサッカー版IntelliGymを開発してきたが、これにはAZアルクマールを含め複数のサッカー・チームが協力し、どのような脳トレがサッカーの能力向上に役立つか実証的なチューニングに寄与してきたという。IntelliGymにはサッカー版のほか、ホッケー、バスケットボール向けもある。戦闘機の空中戦と同様、どのスポーツも複数のメンバーが敵味方に分かれて移動しながらゲームを進めるという共通点がある。

人気チームには資金が集まり、有力な選手を獲得できるが、お金がないチームは戦力が揃わず、人気も落ちて、有力な選手が引き抜かれてしまい、さらに弱くなるという負の連鎖に陥りがちだ。野球ではオークランド・アスレチックスが統計学を駆使して選手の能力を引き出した話が有名だが(「マネー・ボール」という書籍に描かれ、映画化された)、サッカーの世界でも、資金力のないチームは、賢く戦わなければならないということだろう。

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