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ロンドン 時計 2018

2018年のテック業界予測

Tech predictions for 2018

2017.12.31

Updated by Mayumi Tanimoto on December 31, 2017, 08:49 am JST

2017年もあっという間に過ぎてしまいましたが、年末に最も話題を集めたのは仮想通貨の暴騰でした。2018年はテック業界にとってどんな年になるんでしょうか?

・EU一般データ保護規則(GDPR)の混乱

EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)は、欧州連合(EU)における新しい個人情報保護の枠組みであり、2016年4月に制定されましたが、実際に適用されるのは2018年5月25日からです。

準備期間があったわけですが、新規制は思った以上に内容は厳しいので大変な注意が必要です。

まず、EU以外の企業にも適用されることが決まっていますし、個人情報の定義の範囲が広がったことも重要です。さらに、企業が個人からデータを取得する際の承認方法、児童のデータの取得と保存方法、データ保護のインパクトアセスメントの義務化、データ保護保護オフィサーの指名、データブリーチの通知方法、データの移動方法も厳しくなっています。

違反に対する罰金も大変金額が大きく、前年の売上の4%もしくは2000万ユーロとなっています。規制の細かさ、罰金の大きさから、個人のアプリケーション開発者や零細企業が中小企業バーコード等の規制に従うことはかなり難しいということで混乱を招いています。

EUに子会社、支店、営業所を有している企業、日本からEUに商品やサービスを提供している企業、EUから個人データの処理について委託を受けている企業にも適用されますので、ウオッチしておく必要があります。

・ブロックチェーンの実装が加速化する

2017年後半のビットコインを始めとする仮想通貨の暴騰で「億り人」が登場しましたが、このブームによりブロックチェーンの認知度が高まりました。欧州では金融だけではなく小売や交通、旅行業界での実証実験や実装も始まっており、2018年は仮想通貨以外の分野へのブロックチェーン適用元年となるでしょう。

2017年後半にロンドンで開催されていた旅行業界の展示会でさえも、最も注目を集めていたセミナーの一つがブロックチェーンで、技術者以外の観覧者が多く立ち見が出たほどです。

・仮想通貨規制の実施

仮想通貨は世界各国で注目を集めていますが、2018年の早い時期には規制が厳しくなることが予想されます。 英国の財務省は、アンチマネーロンダリング法と反テロリスト法が仮想通貨にも適用されると発表しています。

EU の他の国と同じく英国では、現在、AML (anti-money laundering regulations)とKYC(know your customer)規制が厳密に適用されていません。規制強化には、 EU とのすり合わせが必要なので、2018年の早い時期に EU との交渉が行われる予定です。

しかし、この規制の強化に関して大変面白いのが、欧州当局は日本の金融庁による規制をフレームワークとして参考にしていることです。 日本では規制が一足早く実装され、市場が安定化することで、スタートアップが日本の市場に流れ込むという可能性もあるでしょう。

とはいえ、各国の当局はブロックチェーンと仮想通貨というのは別のものだと考えていることに注意を払う必要があります。 政府の個人認証や金融機関による医療費送金業務などにブロックチェーンを実装するという議論は活発です。

・AIがハイプから実装へ

2017年は AI がハイプ(過大評価気味)の段階でありましたが、2018年は実装されていく時期になると思います。単なるデータベースやソフトの一部のジャンルをAIと呼んでいたビジネスも多いのですが、2018年は実態がはっきりしてくるのではないでしょうか。

・AIと機械学習への資金投資

欧州で2017年に目立ったのは、AIと機械学習、そしてフィンテックに対する投資の急激な増加です。ロンドンの場合、2017年Q2のファンディングは欧州とイスラエルをあわせて783ラウンドあり、件数はQ1に比べ10.2%だったものの、投資金額は48.9%の増加でした。2016年同時期比では59.5%増加しています。Q1は2016年の同時期比で59.5%増です。

大変興味深いのは、IT大手は北米だけではなくベルリンやロンドン・オックスフォードなど、欧州でも投資を活発化させ欧州本部を拡大していることです。

英国やドイツでは、AIや機械学習に関する研究者や専門家をリクルートしやすい、というのがその原因説ではありますが、2018年は北米だけではなく欧州にも注目して行くべきでしょう。

・データサイエンティストの仕事がより深く理解されるようになる

2017年は、ビッグデータに関する話題は若干盛り上がりませんでしたが、実務の世界ではビッグデータの重要性がますます認識されるようになっています。しかしながら、ビッグデータと呼ばれるのではなく単なるのデータ解析と呼ばれるようになることが増えるかもしれません。

また、漠然としたイメージを持たれていたデータサイエンティストの仕事というのは、どんどん細分化されて様々な業界で認識されるようになるでしょう。

データサイエンティスト需要のピークは2020年と言われていますが、 現在の人材不足や教育課程の不足を見るかぎり、2020年後もその不足する可能性が高いでしょう。

・自動運転車の議論の進展と実装

2017年も自動運転車が話題にはなりましたが、実装は思ったより進んでいないようです。その理由のひとつには、やはり自動運転車に関する規制が十分整っていないことがあるように思います。

どうしても技術に関する話題が先行しがちですが、欧州や北米においては自動運転車の規制や、AIは危険な状況に対してどのような判断をするべきかという倫理に関する議論がされています。2018年は、そのような議論が注目を浴びるでしょう。

その一方で、軍事や犯罪の世界では実装が急速に進むでしょう。英国では、2007年の終わりに自作した自動運転の車を使ったテロ実行犯が逮捕されています。この事件は未遂に終わりましたが、類似する事件が起きるようになるでしょう。 また戦場では自動運転車だけではなく、AIを搭載した戦車が実装段階です。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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