Cybertech TelAviv 2018 レポート(1) プレナリーセッションで見えた日本とイスラエルの違い
2018.02.19
Updated by Hitoshi Arai on February 19, 2018, 16:08 pm JST
2018.02.19
Updated by Hitoshi Arai on February 19, 2018, 16:08 pm JST
毎年1月末にテルアビブのコンベンションセンターで開催されるCyberTechは、今年で5回目になる。毎年規模が拡大し、初日(1月29日)時点での主催者発表で、今年の参加者は世界78カ国から15000人以上、講演を行なったスピーカーは170名、出展者は125社、であった。
カンファレンス初日は、カンファレンスチェアマンのYossi Vardi氏の挨拶で始まった。その中で特に印象的だったのは、「Cybertechカンファレンスのモデレーターは50%が女性」と紹介したことである。
二番目のスピーカーとして登壇したベングリオン大学プレジデントのRivka Carmi氏は、サイバーセキュリティへの同大学の取り組みを説明した。
日本でも、Webやマーケティングの分野では女性の活躍が目立ってきているが、サイバーセキュリティという極めて技術的で、しかも軍事的側面のある領域でも、企業や政府機関、大学の重要ポストで多くの女性が活躍し、国際会議の運営にも深く関与している、という事実は、日本とイスラエルとの違いを強く感じさせた。
続いてのキーノート・スピーチでは、イスラエル国家サイバー局のYigal Unna氏、スポンサーの民間起業からはチェックポイント・ソフトウエア・テクノロジーズCEOのGil Shwed氏など数名が登壇し、それぞれの立場からサイバーセキュリティへの取り組みや問題意識をプレゼンテーションした。
Yigal Unna氏の講演は、昨年11月30日のCyberTech Tokyoでの内容と重複する点も多かったものの、イスラエルとしての戦略および今後の方向性として、国際協力が重要であることを強く主張していた。
Cybertech Tokyoのキーノートでは、総務省の谷脇康彦氏が内閣サイバーセキュリティーセンターとしての施策を説明していたが、網羅的状況説明に終始していたと記憶している。それに比べると、Yigal Unna氏の講演は、世界の状況を踏まえた「大局観」が感じられる内容だった。
続く企業のスポンサーによる講演は、自社の取り組み紹介が中心とはいえ、単に商品やサービスを紹介するだけではなく、脅威やトレンドの分析を踏まえて「我々は何をすべきか」ということを訴える内容が多かったように感じられた。この点も、CyberTech Tokyoでの日本のスポンサー企業の講演とは差があるように思う。
参考までに、特に印象に残ったチェックポイントのGil Shwed氏のスライドを紹介する。過去数十年を世代ごとに分析したもので、第5世代の特徴としては、攻撃が大規模になり、マルチベクターとなり、しかも国が支援しなければ開発できないような技術が出現、と説明したうえで、これらの脅威に対処するためにAIを活用した「Nano Seurity」という概念を紹介した。
日本は、かつてはサイバーセキュリティは「やむを得ないコスト」であり、ここへきてようやく「利益は薄いがやらねばならないビジネス・投資」になってきた、という段階にある。しかし、Cybertech TelAvivの講演を聞くと、イスラエルでは「当たり前に取り組むべきこと」であり、個々の企業の発表にしても、その商品・サービスの紹介の裏にそれなりの「大局観」を感じさせられた。
日本のセキュリティ分野の専門家と話をすると、個々の分野・技術では遜色はないものの、技術が単に技術であることが多く、この大局観のようなものが感じられないことが多い。サイバーセキュリティ分野に対するイスラエルの取り組みの長い歴史と、国全体としての戦略的位置づけが、大局観につながっているのであろう。
サイバーセキュリティ分野でのイスラエルの「女性の活躍」と「大局観」は、日本との違いという意味で印象的だった。
※今後、数回に分けて、Cyberteck TelAvivのレポートを順次掲載する予定です。
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登録はこちらNTT武蔵野電気通信研究所にて液晶デバイス関連の研究開発業務に従事後、外資系メーカー、新規参入通信事業者のマネジメントを歴任し、2007年ネクシム・コミュニケーションズ株式会社代表取締役に就任。2014年にネクシムの株式譲渡後、海外(主にイスラエル)企業の日本市場進出を支援するコンサル業務を開始。MITスローンスクール卒業。日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。E-mail: hitoshi.arai@alum.mit.edu