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あきた芸術村にて開催された「IoT インパクトチャレンジ in 仙北」。トークセッションの様子。

AIに対応できるよう小学生から教育しよう〜仙北インパクトチャレンジから

2018.03.13

Updated by 創生する未来 on March 13, 2018, 15:27 pm UTC

先ごろ開催された、事業創造をテーマとした見本市、および商談・交流イベント「仙北インパクトチャレンジ」では、「2020年、小学校プログラミング教育の必須化に向けて」をテーマにしたトークセッションがもたれた。ここでは、その中から次世代教育の要諦をお送りします。
※当日のプレゼンテーション資料はこちらから。

 

▼あきた芸術村にて開催された「仙北インパクトチャレンジ」。トークセッションの様子。
あきた芸術村にて開催された「IoT インパクトチャレンジ in 仙北」。トークセッションの様子。

効果抜群!ドローンを題材にしたプログラミング学習

このトークセッションでは、まず各登壇者の自己紹介を兼ねた事例報告が行われた。
モデレーターを務めた駒形政樹氏(FPV Robotics代表取締役社長)のは、2016年に仙北市でドローンレースを開催したり、東京の小学校(渋谷区・中野区)で、ドローンを活用したプログラミング体験「ドローンインパクトチャレンジ・エデュケーション」などを産学連携(経産省、文科省、総務省)で推進している人物だ。

▼モデレーターを務めたFPV Roboticsの代表取締役社長 駒形政樹氏
モデレーターを務めたFPV Roboticsの代表取締役社長 駒形政樹氏

▼駒形氏は、ドローンを活用したプログラミング体験も東京の小学校で開催している。
駒形氏は、ドローンを活用したプログラミング体験も東京の小学校で開催している。

駒形氏は教育への熱い情熱を語った。「子供たちに、設計力、表現力、物事を前進させる力を育んでもらうために、プログラミングの知識や技術を身につけられるイベントを開催している。テクノロジーを道具として、自らのアイデアを実現し、主体的に社会に働きかけられる人材を育成したい。」

パネリストの伊藤昭光氏(仙北市立西明寺小学校教論)は、小学校の授業でドローンを積極的に活用し、大きな反響を呼んでいる。同校は「ドローンを用いたロボットプログラミング学習研究推進指定校」にも認定され、ドローンを用いた学校図書の航空輸送などの実験も行っている。

▼仙北市立西明寺小学校 教論 伊藤昭光氏
仙台市立西明寺小学校 教論 伊藤昭光氏

また平成32年度から実施される文科省の新指導要領の内容を先取りし、「予測不能な激変する未来を生き抜く力を育成する」「ふるさとを愛する気持ちを大切する」という2つを教育の柱に据え、これを達成する手段としてプログラミング教育を位置づけている。

そこでは、「ドローンを使って仙北市民の笑顔を増やすにはどうしたらよいか?」という課題を小学生に投げかけた。子供たちは、地域住民にアンケートを行い、それを通じて「人と人のつながりを深めることが笑顔を増やす」という点を理解し、人と人をつなぐドローンの活用法を検討し始めた。

「蜂の巣を駆除する」「不審者や熊を見つける」「屋根の雪下ろしをする」「登下校を見守る」「降雨時に傘代わりにする」といった地域に密着したユニークなアイデアが、子供たちから出された。

▼子供たちのドローン活用法のアイデア一例。ドローンによって、不審者や熊を見つける。
子供たちのドローン活用法のアイデア一例。ドローンによって、不審者や熊を見つける。

次に子供たちは、自分たちのアイデアを実現するために、ドローンのプログラミングを学んだ。手のひらサイズの小型ドローンを、障害物を乗り越えながら、定位置に自動着陸させる運転プログラムなどをつくり、全員で試行錯誤しながら飛行トライアルを実施した。

「このような授業を年間30時間ほど行い、将来を生き抜ける分析力や論理的な思考を対話を通じて高めようとしている。この学習により、地元のラジコンクラブや企業ともつながった。子供たちが考案した焼きそばをドローンが配送し、企業が“ドローンソース焼きそば”として販売した。我々は今後も最先端技術を取り入れたプログラミング教育を行い、仙北市から情報を発信したい」と語った。

社会構造の変化に対応し、あるべき教育像を転換しよう

小酒井正和氏(玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科 准教授)は、同大のAIBot研究センターにて研究員エヴァンジェリストを務めている。AIBotは、AIとRobotを融合させた同大の造語で、脳科学をベースに記号創発ロボティクスや知覚的シンボルシステムの研究などを推進している。

▼玉川大学 工学部 マネジメントサイエンス学科 准教授 兼 AIBot研究センター 研究員エヴァンジェリスト 小酒井正和氏
玉川大学 工学部 マネジメントサイエンス学科 准教授 兼 AIBot研究センター 研究員エヴァンジェリスト 小酒井正和氏

ここで小酒井氏は、AI/ロボティクスに関連するビジネスモデルの研究や、STREAM教育(STEMの発展形。Robotics、Artを追加)を実施している。また、ICTを駆使して新しい学びを提案する教育者チーム「iTeachers」の初期メンバーとしても活躍中だ。

そんな同氏が、これからの教育×ICTのあるべき姿として考えているポイントは、「知識基盤社会を支える産業構造が変化している」ということ。

▼知識基盤社会を支える産業構造が変化している現在における、教育×ICTのあるべき姿。
知識基盤社会を支える産業構造が変化している現在における、教育×ICTのあるべき姿。

「大企業・子会社という関係は崩れ、その上位レイヤーで、さまざまな企業が関係性を作れなければ、利益を得られない構造になってきた。社会は多様化し、従来のような“あうんの呼吸”も通じない。これからはコミュニケーション能力が求められ、コンセンサスをしっかり取る必要がある」(小酒井氏)。

ITの進歩も止まることはない。ビッグデータやAIを利用したデータサイエンスは、日常のビジネスで当たり前に使われるようになってきた。ワークスタイルも変容している。会社や役所にいかず、在宅で仕事をできる事例も出てきた。

小酒井氏は「このような社会では、キャリア教育が重要になる。しかし、教師が変化に対応できてないという問題がある。実際に“あるべき教育像”が変わっている。大学では、ファシリテーターやデータサイエンティストが求められている」と強調する。

学校では昔の教育を受けた先生が授業を行っているが、いまの新しい社会ニーズに即した教育をするためには、先生がやってこなかった教育を行う必要がある。また、地方と首都圏では、大学生の能力にも格差が出ており、デジタルデバイドの懸念もあるという。

「教員のあるべき姿が変わり、学生を育てる姿も変わる。子供の頃から新技術に触れ、創造的な思考を育てる教育が必要だ。この仙北市には創造的な資源が数多く存在している。あとは○○だけ。私は、この○○が情熱や将来のイメージだと思っている」と語った。

教える側が変化しなければならない

続いて三者によるトークセッションが催された。テーマは「2020年、小学校プログラミング教育の必須化に向けて」。

▼三者によるトークセッション「2020年、小学校プログラミング教育の必須化に向けて」。写真左から、小酒井氏、伊藤氏。
三者によるトークセッション「2020年、小学校プログラミング教育の必須化に向けて」。写真左から、小酒井氏、伊藤氏。

まずモデレーターの駒形氏が「雇用の未来」を話題とした。進展するAIによって、雇用の半分以上が機械に奪われるという懸念も囁かれている。この危機的な状況について、どう考えればよいのだろう?

伊藤氏は「自分で何が問題なのか、どうしたらよいのかという自己解決能力を小中学校から育てなければいけない。そのためにプログラミング教育が必要だと思う」と返答。

一方、小酒井氏は「合理化できる部分は合理化を進めるべき。それで職業が奪われるのであれば仕方ないが、怖いことではない。本来その時代に向けた仕事が新しく生まれなければいけない。雇用がなければ作ればよいという点を、大人が子供からコンセンサスを取ることが大事。雇われるだけでなく、自分で起業する考え方も伸ばしてあげたい。そのひとつがプログラム教育だと思う」と説明した。

文科省ではプログラミング教育を「コンピュータを使って、何か作れるという気づきを与える、物事の手順を踏んで考える思考を身につけること」と定義している。駒形氏は、この点について、あらためて各氏に問いかけた。

「そのとおりだと思う。本校ではプログラム的思考のために、分析力を育む一例としてフローチャートやステップチャートを利用している」(伊藤氏)。

「優れたプログラミング教育の実践は、何かをしたいというビジョンがあり、そのイメージを大切にすること。そのために子供のころからPDCAを回す習慣をつけることも大切。プログラミング教育では、問題解決以上に問題発見が重要だ。発見ができるようになると世の中も変わっていく」(小酒井氏)。

いま小学校のプログラミング教育では、MITが開発した簡易言語「Scratch」が注目を浴びている。

伊藤氏は「我々もScratchを取り入れた教育を行っている。しかし子供たちのほうが飲み込みが早く、先生がついていけないことも多々ある」と教員側の問題点を指摘した。

小酒井氏も「確かに子供のほうが創造性が豊かで頭も柔らかい。しかし、何かをやる手段を持っていなかった。押し付けがましい勉強はダメだが、自分で何かをつくり、世の中に役立つ接点を学ぶ“文脈学習”を進めることが重要だ。20年前にScratchを開発したMITは、総合的に物事を学ぶリベラルアーツを重視している。この差を日本が縮めることも課題だ」と語った。

最後に駒形氏は「教育の問題は難しい。しかし、目前で技術が進展していく中で、考えていかざるをえないことだ。雇用の未来が懸念されるが、AIやロボットでは実現できないクリエティブな仕事もある。高度なスキルを身につけるためにもプログラミング的思考が求められる。まず教育側として自らチャレンジし、仙北市のみなさんと成長していきたい」とセッションをまとめた。

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