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IRIがテルアビブ証券取引所に上場 その背景を藤原所長に直撃

IRIがテルアビブ証券取引所に上場 その背景を藤原所長に直撃

2018.10.31

Updated by Hitoshi Arai on October 31, 2018, 15:25 pm UTC

8月6日、インターネット総合研究所(以降 IRI)のテルアビブ証券取引所(TASE)への上場が確定し、10月8日にテルアビブ証券取引所でのIRI上場セレモニーが開催された。

IRIがテルアビブ証券取引所に上場 その背景を藤原所長に直撃

中東イスラエルの証券取引所に日本企業が上場するのは初めて。40代後半以上の方であれば記憶されているかもしれないが、IRIは1999年の東証マザーズ上場第一号企業である。当時、インターネットの黎明期であったこともあり、株価の急上昇も含めて大変な話題となった。

筆者は、当時インターネットの国際会議INET2000事務局長として、IRIの藤原社長や慶應大学の村井教授率いるWIDEチームを始めとする日本のインターネット・コミュニティのすぐ近くでIRIのマザーズ上場第一号の熱狂を自分の目で見た一人である。

その経験からすると、「藤原さんがまた第一号を手に入れた」というのが第一印象だが、一般的には「なぜ東証や米国のNASDAQではなく、わざわざテルアビブ市場に上場したんだろう?」というのが素直な疑問ではないだろうか?

短時間ではあるが、藤原所長にインタビューする機会を得たので、ご本人にその「なぜ」を聞いた。

IRIがテルアビブ証券取引所に上場 その背景を藤原所長に直撃

なぜ東証やNASDAQではなくテルアビブ証券取引所を選んだのか?

藤原所長)これにはいくつか理由がありますが、東証への上場は既に子会社含めて3回経験しているので、やはり「新しいことをしたい」という思いがありました。つまり、既に開かれた扉のところに入っていくのではなく、自分たちで開かれていない扉を開きに行きたい、それをやりたかったのが一つの理由です。

私はイスラエルと日本の関係強化に大きな可能性を感じているので、イスラエルにおける日本企業のプレゼンスを示し、イスラエル企業との資本・業務提携の可能性を拓いていきたいと考えています。上場したイスラエル法人であるInternet Research Institute Ltd.の現在の役員構成は、日本人2名とイスラエル人(エルハナン・ハレル氏 *)1名の3名ですが、上場後3ヶ月以内にイスラエル人役員を3名にするというルールがあります。

そこで、テクニオン(イスラエル工科大学)のドクター含めて2名のイスラエル人を追加します。既に、IRIはテクニオンにサイバーセキュリティ研究センターを作っていますが、それに加えて、今回の上場、役員の強化という一連のステップにより、IRIがイスラエル社会の「インナーサークル」に入ることを狙いました。

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NASDAQも無論目指してはいますが、例えばシリコンバレーのインナーサークルに入ることができるか、というとこれは難しい。日本人や日本企業でこれができている人は誰もいないはずです。ただ、中東のシリコンバレーであるイスラエルであれば可能だと考えたわけです。

また、これも教えてもらったのですが、市場間の協定があり、TASEからNASDAQに行くのは直接NASDAQを目指すよりやりやすいようです。マザーズと東証一部のような関係といえばわかりやすいでしょうか。事実、Mellanoxのようにイスラエル企業でNASDAQに上場している企業は沢山あります。

具体的なIRIのビジネスは何か?

藤原所長)日本企業とイスラエル企業をつなぐ役割にビジネスチャンスがあると見ています。「0→1」が得意なイスラエル企業と「1→10」が得意な日本企業は相互補完ができるベストマッチングであり、日本・イスラエル連合で日本市場を開拓し、それを欧米や中国に持って行くということを考えています。そのビジネスを拡げることでIRIの企業価値を上げてゆく、という点にテルアビブ市場からも理解を得ました。

日本企業が上場するということは、テルアビブ市場側にもメリットがあります。すなわち、日本の投資家がテルアビブ市場に上場している企業の株を買う機会が増える、ということです。これは、日本のマネーがテルアビブ市場に入ってくることを意味します。従来の日本企業によるイスラエル企業への投資は、未上場企業のM&Aが中心であり、証券取引所での投資とは異なっています。ざっくりですが、その国の証券取引所の取引額はGDPにほぼ比例しています。

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つまり、米国が世界一で中国が二番目、日本は三番手です。イスラエルのGDPは順調に伸びており、市場での取引額も伸びるだろうと想定されます。取引額が増えるということは、投資した株価も上昇するということになります。日本の投資家もイスラエルに投資したほうが良いかもしれませんね。現在は、藍澤(アイザワ)証券だけがシステムがつながっているので、そこに口座を開設すれば日本からイスラエルの株を買うことが可能です。今後は、より多くの証券会社がシステムをつなぐようになるのではないでしょうか。

私は「大きな視点」を持つことが重要だと考えています。イスラエルは経済発展のイノベーション・エンジンであり、それをうまく活用してきたのが米国だと考えます。GoogleにしてもFacebookにしてもそうですよね。日本はまだユダヤ人の能力を活用することができていません。

私はイスラエルの強いところ、AIを含むITとバイオに注目しており、既にIRIとして「BetaO2 TECHNOLOGIES」というバイオ企業に投資をしました。ここは人工膵臓を開発しており、非常に難しい病気である膵臓がんの治療の可能性を広げます。スティーブ・ジョブスも救えたかもしれない。

また、子会社でファンドも作っており、ビックデータ分析関連、検査の自動化などの8社に投資をしています。最近、「日本創生戦略」という本を出しましたが、第5章でイスラエルについて書きました。日本の産業界にはある種の危機感を抱いており、ディジタルトランスフォーメーションを実現するには、いろいろな面でイスラエルのやり方などを取り入れる必要があると考えています。

例えば、サイバーセキュリティ。この分野は、当然、視野に入っていますが、個別の技術、企業のセキュリティというよりも、もう少し大きな視点でナショナルセキュリティへの貢献を考えています。

IRIがテルアビブ証券取引所に上場 その背景を藤原所長に直撃

今回のIRI上場をきっかけとして、日本とイスラエルの連携がどのように発展するか、楽しみである。

エルハナン・ハレル氏 : ハレル・ハーツ・インベストメント・ハウス 代表取締役

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新井 均(あらい・ひとし)

NTT武蔵野電気通信研究所にて液晶デバイス関連の研究開発業務に従事後、外資系メーカー、新規参入通信事業者のマネジメントを歴任し、2007年ネクシム・コミュニケーションズ株式会社代表取締役に就任。2014年にネクシムの株式譲渡後、海外(主にイスラエル)企業の日本市場進出を支援するコンサル業務を開始。MITスローンスクール卒業。日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。E-mail: hitoshi.arai@alum.mit.edu