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PIXAR ライト 研究 イメージ

PIXARによる最高のSTEAM教育 「PIXARのひみつ」展

2019.04.25

Updated by Ryo Shimizu on April 25, 2019, 08:51 am JST

六本木ヒルズで開催されている、「PIXARのひみつ展」に行って来た。
PIXAR作品は大好きだし、CGの先駆者として尊敬しているから、という気軽な理由で見に行ったのだが、良い意味で予想を大きく裏切られた。

というのも、「PIXARのひみつ展」というタイトルの現題は「The Science behind PIXAR」であり、これはどちらかというと「ピクサーの裏に潜む科学展」とでも呼んだ方が良いものだ。結果的に、世界最高レベルのSTEAM教材がそこにあった。

冒頭のビデオで登場するのは、エドウィン・キャットムル。PIXARの創業者であり、コンピュータグラフィックスのパイオニア。スプライン補間アルゴリズムやサブディビジョンサーフェスを発明したバリバリのコンピュータ科学者が、「ピクサーの映画を支えるのはクリエイティビティとサイエンスである」と力説する。

もうこれだけで凄い。

三次元座標の概念を直感的に学ぶことのできるインタラクティブな展示に始まって・・・

ライティングやレンダリングの仕組みを学べる展示や・・・

リグを操作して表情を変化させたりという展示もある。

とにかく、徹底的に科学。これぞSTEAM教育のお手本とばかりに作り込まれていて、科学(S)、技術(T)、工学(E)、アート(A)、数学(M)の全ての要素が盛り込まれている。

それ以上に、子供たちが夢中になってワークステーションを操作している姿が印象的だった。

「プログラミング教育」は、STEAM教育のごく一端に過ぎない。本当に大事なことは、文系理系という分類も超えて、STEAM全てを統合して活用できる人間を育てることだ。この場合、アート(A)には、いわゆる美術だけでなく文芸や歌唱、演奏といった要素も含まれる。

過去から現在に渡って、科学技術とアートは表裏一体の関係にある。
たとえば一見全く無関係に思える文芸と科学技術も、タイプライター以前と以後では違うし、ワードプロセッサの以前と以後、インターネット以前と以後では作り方が変わっている。これらは互いに影響を及ぼし合っている。

STEAMは読みやすいように並べられたアクロニムだが、本来はS→M→T→E→Aであるべきだ。つまり、科学→数学→技術→工学→芸術である。

科学とは、自然を観察・認識しようとする試みであり、数学とは、自然現象を観察した結果を人間が理解するための試みである。その結果、新しい技術が生まれ、技術を誰でも使えるように成形(オーガナイズ)したものが工学で、工学的成果を使って新しい芸術が生まれる。

フィルム・カメラの出現がシュルレアリスムを生んだように、こうした活動と芸術は無縁であるどころか切っても切り離せない。

科学はまた芸術におけるインスピレーションの原泉でもある。

つまり、AI時代の出発点は科学であり、ゴールは芸術であると言える。そのなかで、子供たちは科学と数学を学び、技術と工学を身につけ、芸術的成果を求められるように進化していくだろう。

単純な仕事が自動機械に置き換えられた先にあるものは、人間が人間である理由、すなわち科学的探求の結果得られた知見を芸術的表現へと昇華する活動に他ならないからだ。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。

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