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5Gは世の中が変わっていく起爆剤に――楽天・三木谷社長

2019.08.02

Updated by Naohisa Iwamoto on August 2, 2019, 13:30 pm UTC

「楽天市場を2人で始めた1997年、インターネットにアクセスするスピードは早くても28.8kbpsぐらいだった。これが5Gでは10Gbps~20Gbpsの通信速度になり、楽天を始めたころから見ると100万倍の通信速度が実現する。交通に例えれば人力車が新幹線やジェット機になるような変化であり、情報通信は20数年でまったく違うものへと進化していく」。楽天が開催したプライベートイベント「楽天オプティミズム2019」のビジネスカンファレンスのオープニングキーノートで、同社代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、5Gによる変化の一端をこのように説明した。

オプティミズムとは楽天主義のこと。「楽天オプティミズム2019では、インターネットの振り返りとこれからの5Gの展望を紹介する。商売をする人に5Gによって広がるビジネスの意味を感じ取ってもらえたらと思う。楽天主義で、明るく将来を見据えて進んでいこう」(三木谷氏)。

楽天グループが進めているモバイルサービスについては、「楽天モバイルが2019年10月から徐々に4Gでサービスインしていく。これまではMVNO(仮想移動体通信事業者)で自分たちの技術を反映できなかった。今後はモバイルネットワークの民主化を進め、安価で高速なサービスを提供する」と三木谷氏。技術的には、これまでの通信事業者のネットワークがハードウエア機器をベースに構成されていたのに対して、完全仮想化によるソフトウエアで構成する。これにより「費用を下げて、サービスの柔軟性を高め、そして新サービスの提供を一気にできるようにする。ハードウエアデバイスの革命がiPhoneだったならば、ネットワーク自身の革命は楽天が起こす」(三木谷氏)。

5Gが4Gまでのネットワークと異なる点として、超高速・大容量通信、多接続の性能とならび低遅延が挙げられることを説明。「5Gになるとネットワークの遅延が少なくなる。それだけでなく、端末の近くにサーバーがあるモバイルエッジコンピューティングにより遅延はさらに少なくなり、コンピューティングはエッジサーバーに任せられる。日本では4000以上のエッジサーバーを設置する計画で、これは自分から数kmの範囲に大規模なコンピューターがあると思ってもらえばいい。計算はエッジサーバーで処理すればよくなり、ハンドセットは何もしなくていい世界がくる」(三木谷氏)。こうしたネットワーク構成とコンピューティングの変化により世の中が変わるとの見立てである。

三木谷氏は「10年以内には自動運転が実用化されるだろうし、ホームコンピューティングもヘルスマネジメントも5Gで大きく進化していく。5Gは世の中が変わる起爆剤になる」と語る。

次いで行われた「5GがもたらすNetwork社会の変革」と題したパネルディスカッションでは、楽天 副社長で楽天モバイル 最高技術責任者(CTO)のタレック・アミン氏が「5Gでは、モバイルエッジコンピューティングが極めて重要だ。1Gbpsの通信速度はLTEでも実現可能だが、レイテンシの改善は5Gにならないと実現できない。LTEなどの4Gまでの技術から5Gへは進歩ではなくて、革新、別の技術だ。楽天の5Gは仮想化、クラウドといった新しいアーキテクチャを採用することで、社会や産業、消費者の体験が来年から変わっていく」と説明した。

ビジネスカンファレンスと同時に開催した体験型イベントの「フューチャー・ワールド」では、楽天グループが提供する多様なサービス体験をまとめて味わえる場を設けた。楽天が導入する5Gのネットワーク機器の展示や、5G時代のAIやIoTといったソリューションの紹介、バーチャルなサッカーパスの体験デモなどが並ぶ。ショッピングやグルメ、トラベルなど楽天グループが提供するサービスを、キャッシュレスで体験できるコーナーも用意した。楽天グループがこれまでに提供してきた多様なサービスと、2020年以降に提供を予定する5Gという新しいネットワークインフラを併せて、「楽天」の名の下でシームレスな体験を提供しようという意図は強く感じられた。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。