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ドイツはBrexitで同盟を失う

Germany will lose an ally after the Brexit

2019.08.20

Updated by Mayumi Tanimoto on August 20, 2019, 07:18 am JST

Brexitの先行きが相変わらず不透明ですが、メイ元首相のリーダーシップの欠如により悪化した状況をボリスがなんとかしてくれることに期待しましょう。

今のところ、合意なき離脱になるのか、何らかの調整が行われるのかは分かりませんが、イギリスが EU を離脱した場合に最大の犠牲者となるのは、実は大国であるドイツです。

イギリスとドイツというのは、第二次世界大戦に見るように敵対関係にもありますが、イギリス王室がドイツ系であることからもわかるように、歴史的、文化的には実は近い関係であり、北部欧州的な考え方を共有する似たもの国家であります。

ドイツはイギリスよりは保守的で、規制を好む保護主義国家でもありますが、一方でイギリスの自由闊達さと商売人センスに助けられてきているところもあります。イギリスの柔軟さがドイツの硬さを和らげているのです。

イギリスは欧州で最もビジネスセンスがある国ですから、イギリスが EU にいることで 欧州最大の国家であり輸出国であるドイツはかなり助けられてきた側面があります。

また、ドイツとイギリスは南部の欧州諸国と異なり、政府による莫大な支出を抑制する傾向があります。これは、両国が清貧なプロテスタント気質を持っている、ということもあるでしょう。

一方でフランスやイタリア、スペイン、ポルトガル、 といった南部の国々というのは享楽的な側面があり政府はお金を使うことを好み、後先を考えないところがあります。計画が 得意ではなく、組織運営もビジネスも非合理的でカオスです。 最終的になんとかなれば良いという感覚です。南部諸国では、銀行口座からお金が消えることもあります。

こういう気質の違いは、これらの国で電車やバスを体験するとよくわかることです。

イギリスやドイツの電車やバスも遅延しますが、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャに比べたら恐ろしく正確な運行と読んで差し支えありません。イタリアは高速道路の標識が間違っていて、バスは一日中来ません。

ドイツとイギリスでは、他人の車にバンパーをぶつけて無理やり縦列駐車をしようとすると怒られますけども、イタリアとフランスではよくあることです。

ドイツが EU 加盟国の中でまともなビジネスセンスを持ったイギリスを失うということは、フランスやイタリアのわがままとカオス、ギリシャの無責任さにドイツが一人で立ち向かっていかなければならない、ということです。

ドイツが直面する問題というのは、自動車輸出の減少だけではないわけです。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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