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日本のIT企業はポケモンから学ぶべきだ

Japanese Tech companies should learn l from Pokémon

2019.08.19

Updated by Mayumi Tanimoto on August 19, 2019, 09:08 am JST

子供を持つと、今まで気が付かなかった商品やサービスにはっとさせられることがあるのですが、最近、子供経由で実感したのがポケモンの世界的な人気です。

ポケモン人気は薄々は知っていて、自分もPokémon GOを少しやっていたりしたのですが、海外での人気は日本人の予想を遥かに超えています。

日本では、今年の夏に劇場版ポケットモンスター「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」が公開され私も子供と見に行きましたが、日本での先行公開は欧州や北米でもよく知られており、劇場公開を心待ちにしているファンが大勢います。ネットの掲示板での熱気は凄まじいものです。

欧州の駅の売店や書店には、日本の漫画やキャラ物というのは日本ほど多くはないのですが、日本の漫画の人気がそれほどないイギリスですら、田舎の売店にもポケモンのおまけ付きの雑誌やシールブックが所狭しと並んでいます。マーベルやディスニーのキャラだとここまでではないのです。

Youtubeではポケモン関連のゲーム中継が大人気です。子供がやっているものもありますが、かなり大きなお友だちのものも少なくありません。ライブ配信を見ておりますと、まさに全世界からプレーヤーやオブザーバーが集まっています。我が家の子供もポケモンをよく知らなかった頃から熱心に見ています。

日本アニメはまだまだニッチなコンテンツで、イギリスでも大陸欧州でも、かつて日本企業が格安でコンテンツを提供していた80年代に比べ、地デジやケーブルでの放送時間はそれほどではありませんが、ポケモンだけは別格で、子供が見る時間に吹替版が放送されています。

新宿でポケモンのアーケードゲームをプレイしていましたが、そこで見た光景は驚くべきものでした。日本人の子供だけではなく、日本語のわからない中国人やマレーシア人の子供も一緒になって熱心にプレイしており、身振り手振りで日本人の子供や他の国の子供とああだこうだとやっているのです。3歳ぐらいの子供から幼稚園児、中学生まで一緒です。皆、他のマシンには全く見向きもしていません。神奈川県央の郊外のゲームセンターやモールにも行きましたが、やはり同じ光景です。ポケモンだけ異様な人気です。

イギリスで子供の誕生会に行きますと、親達がポケモンで会場を飾り付けたり、ポケモンのケーキを焼いたりしています。ポケモンの誕生会飾りセットは結構高く、1回分が3千円くらいと他のキャラの倍以上ですが、それでもどんどん売れています。

欧州の親は、子供が接触するコンテンツにかなりうるさいですから、暴力的なものや教育上芳しくないものは避けます。ポケモンは、そういったうるさい親からも好ましいという評価を受けているということです。

子供達や若い子は、ポケモンを日本語で見て理解できたり、現地では手に入らないポケモングッズを持っている日本人に羨望の眼差しを向けます。我が家の子供は、日本に時々行って(現地にはない)ポケモングッズを買ってきたり、アーケードゲームをプレイしているので、同級の幼稚園児の中でやたらと注目されています。

街中には、Pokémon GOを熱心にやっている中年や熟年の人々がいます。ゲームやテクノロジーに対してかなり抵抗がある人も多いはずなのに、これは明らかに驚くべきことです。

しかし一方で、家電売り場には日本の製品はほとんど見当たらず、中年以上の人がかろうじてパナソニックやソニーを知っているというのが現状です。

日本車もかつてほどの人気はなく、低価格な小型車を求める人々は、KIAなどの韓国車や東欧のメーカーの車に乗っています。家庭のテレビや電子レンジは韓国メーカーが圧倒的に多く、ガジェット類は中国製だらけです。

日本のSIerやIT企業というのはほとんど知られていません。

ポケモンはこんなに人気なのに、日本のIT業界や家電や車がこんなに元気がないのはなぜなのでしょうか。

ゲーム業界は、早くから海外市場を重要視していて、顧客重視の視点でサービスを開発してきました。アメリカや韓国のコンテンツ産業の様に政府の後押しがあったわけではありません。子供は正直なので、無理やりプロモされたコンテンツやサービスには見向きもしません。ポケモンに魅了されるのは単に面白いと考えるからです。

IT業界を始めとする日本企業は、日本国内の市場にばかり注力し、既得権の中で稼ぐことを前提としてきました。顧客を重視せず、需要を徹底的に学んでこなかったわけです。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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