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カナダ人にさえ厳しかったイギリスの移民法

UK's immigration law used to be tight even for Canadians

2020.02.26

Updated by Mayumi Tanimoto on February 26, 2020, 12:00 pm JST

イギリスがEU離脱したために移民法が改正され、イギリスで就労したい外国人は、EU国籍であっても、非EUの人と同じ審査を受けることになりました。

実は、今回のイギリスの移民法改正以前は、日本人やアメリカ人、カナダ人が就労許可を取得するのはかなり厳しかったのです。

カナダはイギリスと文化的に近く、元々植民地ですからそんなに就労許可取得が厳しいのかと驚かれる方がいるかも知れませんが、EU国籍者を優先してきたために、文化的にイギリスと類似性があるカナダでさえ就労するのは簡単な話ではありませんでした。

例えば、政府の年収下限に達しなかった小規模カフェのオーナーが国外退去になってしまった、という例もあるほどです。私の知人の環境政策の研究者は、ビザの更新が難しくなってしまったために帰国しています。

先進国出身の人であっても、ビザ審査が新興国出身者と同じように行われていましたので、テック業界からはかなり不満の声が上がっていたのも事実です。

これに対して、EU出身の人の場合は全く審査がありませんので、例えば母国で中学卒業資格しかなく無職だった人がイギリスに来て自由に働くことができました。それなのに、博士号がある日本人やアメリカ人の審査は大変厳しかったのです。

これについては、イギリスにおいて外国人の取り扱いに関して一級市民と二級市民を作り出しているだけではないか、という非難もありました。

このため、高度な技能を持つ移民を必要とするテック業界や金融業界、製薬業界などは、Brexitに賛成な人も少なくありませんでした。

そういった立場の代表的な一人が、掃除機で有名なダイソンのジェームズ・ダイソン氏です。ハイスペックな掃除機や家電を開発できる技術者が国内やEU圏内にいるとは限らないので、イギリスの移民法が大変不便であると述べていました。

特に電気工学や物理などは、近年イギリスだけではなくEU圏内でも学生が敬遠することが多いので、良い人を探すのが大変です。しかし、東アジアやアメリカから人を連れて来るのは大変だったのです。

これまでは、非EU出身者の雇用可能なビザは、各企業に割当数が決まっており、駐在員のビザの数も含めてのカウントだったので、ちょっと良い人がいるとはいっても、すぐに来てもらうことができませんでした。ある程度の報酬を払っても、枠がなければダメなのです。

こういう状況が結構あったので、イギリス政府はEU離脱後に即移民法を改正したのでしょう。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。