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コロナが変化させた欧州のプライバシー概念

Corona changed Europe’s privacy

2020.04.21

Updated by Mayumi Tanimoto on April 21, 2020, 07:00 am JST

イギリスは、相変わらず都市鎖解除の日程がはっきりしておらず、不安を抱いている人が少なくありません。封鎖生活もほぼ1カ月になり、慣れてきた人も多いようですがストレス満載の人も多いので、私の家の近所では怒鳴り合う声が聞こえることもあります。 

最近、イギリスを始め欧州で目立っているのは、携帯電話などを通じて人々の動きや感染者の行動を管理すべきだという声です。

実際には、キャリア側や政府側は人々の動きを携帯からほぼ大まかには把握しているわけでありますが、 台湾、韓国、中国のように公共交通機関の使用や入店の際の本人確認などには使われていません。

ところがここ最近は、テレビやネットでコントロールが比較的うまくいっている国の事例が多少紹介されるようになったので、あのような方式を採ってはどうか、といっている人が少なくないのです。

プライバシーの尊重と個人情報の保護を重要視してきた欧州において、これは大変大きな社会的変革です。つい最近までは、GDPRを重視するべきだという声が大きかったのに激烈な変化です。

イギリスやフランスは、全携帯電話ユーザーに政府からテキストメッセージが送られてくるということがありましたが、これに対して文句をいうユーザーはほとんどいませんでしたこれが以前であれば、政府が携帯電話番号をなぜ知っているんだ、なぜ送る権利があるんだと反対運動が起きていたはずです。

これは、欧州の国々が第二次世界大戦中にファシズムの恐怖を経験してきたからです。当時は、政府によって個人情報が把握され、それが悪用されることで虐殺や人権弾圧に利用されてしまいました。

個人の自由を守ることは、欧州的な価値観の中心でありましたが、それが今大きく変わろうとしています。 

現在は混乱しているのでどうなるのかは分かりませんが、コロナ後の世界では、GDPRの内容が大きく変化する可能性があるといえるでしょう。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。