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コロナ後にGDPRは生き残るか?

Would GDPR exist after Corona?

2020.04.21

Updated by Mayumi Tanimoto on April 21, 2020, 15:11 pm JST

コロナ騒ぎが描き出したことには、欧州における個人情報保護の価値観の大きな変化の他に、欧州全体の体制の大変化があります。

今回のコロナ騒動において欧州では、欧州連合(EU)に対する懐疑心が急激に強まっています。 日本では報道されていませんが、多くの死者が出たイタリアでは、3月の後半からネットには反EUに関するメッセージが溢れ返っていました。

これまで欧州の情報通信やその他の分野で大きな力を持ってきたEUが、今回に関しては無力に近かったからです。 

例えば、イタリアやフランスからドイツに移送されて治療を受けた患者がいましたが、これには別にEUの枠組みは必要なく、二国間の関係で調整されました。

苦境にあるイタリアに対して、EUが医師や個人用防護具(PPE)を提供したわけではありません。

携帯電話ユーザーのトラッキングも、EUがやっているわけではなく、各国のキャリアと政府が国内の取り組みとして行なっているに過ぎません。感染トラッキングのアプリも、各国の大学や研究機関が急遽開発して提供しています。感染拡大防止の為に各国は国境も閉鎖しました。

つまり、真の危機において、欧州全体での取り組みであるとかイニシアチブは特に必要がなかった、という事に気が付いてしまった人が多いわけです。EUのような官僚機構ではなく、むしろ携帯電話キャリアや各大学、FacebookGoogleといった民間企業の方が遥かに効率が良く役に立つわけです。

さらに、WHOに対する不信感が国際機関不要論に拍車をかけています。

GDPRが代表的な存在ですが、EU加盟国はIT関連のガバナンスをEU中心に構築しようとしてきたわけですが、それが近いうちに崩壊する可能性がかなり高くなったといえるでしょう。長々とした会議や誰も読まない文章、理想だけが先走りしたプライバシー規制などは、人類の発展と延命にはまったく無駄だったわけです。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。