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Gmailのアドレスを名刺に刷っているようでは危うい(メール環境のプランB)

2020.10.30

Updated by Toshimasa TANABE on October 30, 2020, 15:45 pm JST

Gmailは、誰でも無料で利用できるし、迷惑メールのフィルタの精度も高く、フリーのメールサービスとしては悪くない。ブラウザでもスマホアプリでも、同じように使える。Webメールなので、Gmailをメールのアーカイブにしておけば、PCを新調しても過去のメールに全部アクセスできるし、メールの検索もとても楽だ。ローカルのメーラーがクラッシュしても安心だ。容量については、無料でも15GBであり、メールだけなら普通は十分であるが、月に250円で100GBに増やすことができるし、それ以上の容量も選択できる。

自社ドメインの仕事用メールアドレスに届いたメールは、いったんGmailに転送してから、非公開の別のアドレスにさらに転送して読む、などという使い方をすると、迷惑メールがかなりフィルタできる。ただし、複数のGmailアドレスで迷惑メールの判定基準が違っていたりするが、その辺のロジックなどがブラックボックスなところは多少は気になる。

自社ドメインのメールアドレスを使って、Gmailをメール送受信のエンジンとして使う、ということもできる。これだと、メールサーバーの保守・運用などが不要になるし、Gmailが落ちるといった事態は、自社のメールサーバーにトラブルが発生するよりも遥かに低い確率だろう。

しかし、Gmailドメインのメールアドレスをそのまま仕事のメインアドレスにするのはいただけない。理由は二つある。

まず、仕事で使うメールなら、それなりのドメインを取得すべきではないか、という点である。前述のように、ちょっとした使い方の工夫でメールサーバーを自分で管理する必要などはない。ドメイン維持の費用にしても、月に換算したら数百円程度のものだ。これをケチっているという点で、仕事に対する姿勢にとても「貧乏くさい」ものを感じるのである。

次に、これが一番の問題なのだが、アドレスの仕様とその認知度の低さである。

Gmailのアドレスは、アットマークの左側の英数字によるユーザー名の部分と「@gmail.com」で構成されているが、このユーザー名の仕様に「ピリオドを無視してつないでしまう」という癖があるのだ。

つまり、abc@gmail.com だとすると、a.bc = ab.c = a.b.c = abc なのである。Webでの各種のサービスにおけるメールアドレス・チェックでは、このGmailアカウントのピリオド問題に対応するのは必須だと思われるが、対応していないサービスが大手企業、有名企業であっても実に多い。

その結果、ユーザー登録や買い物の際に「捨てアドレス」として、適当なところにピリオドを入れた架空のGmailアドレスを入力して登録や買い物をしてしまい、それへのレスポンスのメールが、ピリオドの入っていない実アドレスに届く、ということになる。

架空のアドレスを確かめもせずに使ったり、買い物や登録のレスが届かない状態で平気な人がけっこういる、ということにも呆れるが、最近出くわしたこのような事情だと推測される例にも呆れる。

・セブン&アイの通販サイト「オムニ7」
・日本マクドナルドのモバイルオーダー

こんな「立派な会社」でも、Gmailアカウントのピリオドについて知らないのである。全く困ったものである。

メールアドレスのシンタックスチェックのモジュールなど、世の中には優れたものがありそうだが、どうやらいちいちメール入力の画面を作っては、アドレスのチェックはGmailのピリオド問題を知らない人が実装している、ということらしい。

ピリオドを入れた捨てアドレスらしき使い方とその結果で受信するメールは、実害はないともいえるので放置しているが、実際にピリオド問題が困るのは、仕事であるにも関わらず、適当にピリオドを入れたアドレス、うろ覚えのアドレスなどを正しいと思い込んで、あるいは誤って使う人が後を絶たないことである。当然、その仕事のメールはピリオドのない既存ユーザーのところに届いてしまう。過去に経験したものとしては、

・某社の売上日報が毎日送られてくるようになった
・知らないメーリングリストに勝手に入れられてしまった
・海外の大学の日系人の先生あてのメールが来るようになった
・怪しげな画像ファイルが送られてくるようになった

などがある。仕事にGmailアドレスを使ってさえいなければ、発生しなかった事故・漏洩である。

何度も続いたりするような場合は、ピリオドのことを簡単に説明して、注意を促すこともあるが、大抵は黙って削除するだけである。おそらく、送信した、届いてない、などとひと悶着あってから、間違いに気付くのだろう。

もちろん、Gmailで新規登録するときにアカウントにピリオドを入れても、省略してつないだアカウントの有無で判断されるので、既に使用されている場合には、その旨が表示されて登録することはできない。だから、捨てアドレスに使った人は、Gmailに実際にそのアドレスで登録しようとしたことはないと考えられる。

実は、Gmail新規登録の初期画面には「ピリオドが使える」とわざわざ書いてあるのだが、それを無視するということには触れていない。その上で、ピリオド入りのそのアドレスは既に使われている、というメッセージを返すのである。ピリオドなしの既存アドレスが何であるかは、さすがに分からないようになっているものの、ピリオドについて知っていれば容易に推測できてしまうのも困った話ではある。

Gmailのヘルプページにピリオドの扱いについて説明した部分があるが(Gmail アドレスでのピリオドの扱い)、末尾のプルダウンの中には、以下の文言がある。

注: 他のユーザーが誤って、または悪意のあるユーザーが意図的に、あなたのメールアドレスにピリオドを追加したメールアドレスを使用してメール配信の登録を行うことは防ぐことができません。

2004年にGmailが提供開始されてから十数年が経過するが、ピリオドが原因の間違いメールがけっこうな頻度で届く、という状況は改善していない。ドコモ口座や7payの時にも感じたが、IT業界の「サービス設計能力」が低下しているのではないか。サービス提供側にも利用者側にも、Gmailのピリオド問題が延々と続いていることは、日本全体が「情弱」といえる一つの証左ではなかろうか。

 

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田邊 俊雅(たなべ・としまさ)

北海道札幌市出身。システムエンジニア、IT分野の専門雑誌編集、Webメディア編集・運営、読者コミュニティの運営などを経験後、2006年にWebを主な事業ドメインとする「有限会社ハイブリッドメディア・ラボ」を設立。2014年、新規事業として富士山麓で「cafe TRAIL」を開店。2019年の閉店後も、師と仰ぐインド人シェフのアドバイスを受けながら、日本の食材を生かしたインドカレーを研究している。