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菅野真一氏

機械学習を用いたプロセス自動化成功のカギは「前処理」にあり

2021.06.10

Updated by AI Automation on June 10, 2021, 13:46 pm JST Sponsored by Tupl

自動化。それは多くの業種・業態で効果が期待されるソリューションの1つだろう。パソコン操作などの身近な作業の自動化から、大規模なシステムの運用管理の自動化まで、そのターゲットになる業務も幅広い。IoT(モノのインターネット)の進展により、リアルの世界から多くの情報が収集できるようになり、そうした情報を基にした自動化への期待も高まる。機械学習やディープラーニングに代表されるAI(人工知能)の発達も、自動化を万能なものにしそうだ。

しかし、事はそうは容易に進まない。「大規模なシステムの自動化やAI活用のプロジェクトは、部分的な自動化による煩雑化や、ブラックボックス化により改善、拡張しにくくなり、多くは失敗に終わっている。自動化を成功させるには、自動化をエンツーエンドで実現しながら、人が理解し、人と共に拡張していける仕組みが必要だ」。米Tupl(トゥプル)のアジア太平洋地域責任者 グローバルリーダーシップメンバー及びトゥプル・ジャパン合同会社代表の菅野真一氏は、期待される自動化と、現実との間にギャップがあると指摘する。

Tuplは2014年に設立し、シアトルに本社を構える自動化ソリューションの開発・提供企業だ。Tupl設立前から、ネットワーク業界との関係が深く、創業メンバーは世界初のSON(Self-Organizing Network、無線ネットワークの自動最適化)の開発に携わってきた。LTEなどの無線通信が広く普及する中で、無線基地局の設置・運用を人手で行っていては負荷が高く効率は悪い。SONは、ネットワークの自動設定や自動最適化、自動修復を実現し、基地局の設置・運用の自動化を推進する技術だった。

▼Tuplの自動化への取り組み
Tuplの自動化への取り組み

SON開発で得た知見を基に、Tuplは自動化ソリューションを開発・提供する企業として名乗りを上げた。ネットワーク業界との関係は深く、通信事業者のネットワーク運用の自動化を核に、事業を展開している。「これまでに、米大手通信事業者のT-Mobileをはじめとして、米国や、日本を含むアジア、南米、ヨーロッパなどの主要な通信事業者の運用の改善に貢献している。そして、自動化ソリューションのノウハウの活用は、農業や林業、ヘルスケア、自動車の分野にも拡がっている」(菅野氏)。日本法人は2017年に設立し、現在は菅野氏が日本を含むアジアパシフィックの担当として指揮を採っている。

スループットが下がったという事象に対しても原因や対処法は様々

Tuplが提供する自動化ソリューションとはどのようなものか。これまでTuplが培ってきた通信事業者向けのソリューションから、その目指す姿が垣間見える。

通信事業者のネットワーク運用管理では、端末や基地局、コアネットワーク、ルーター、サーバーなどの大量の装置から、大量の品質に関するデータやアラームが上がり、さらに顧客からクレームが飛び込んでくる。装置が上げるKPIとしては接続率、スループットやハンドオーバーの成功率、遅延、パケットロス、プロビジョニングなどを始めとした非常に多くの種類があり、ユーザー品質に影響している。これらの関係は複雑に絡み合い、従来は人間がマニュアルで対応せざるを得なかった。調査には時間がかかり、例えばスループットが下がったことはわかっても原因はすぐにわからない。

こうした課題は、5G時代に向かい、さらに深刻化している。5G SA(スタンドアロン構成の5G)やモバイルエッジコンピューティング、クラウド化など、新しい技術は続々と登場し、ローカル5G、ネットワークスライシングなどサービスも多様化し、同様に求められるサービスレベルも多様化している。菅野氏は「もはや人手で複数のサービスレベルに応じたネットワークの運用、品質管理の問題の解決を実現するのは困難だ。ネットワーク全体の運用管理を自動化することが、通信事業者にとって必要不可欠になってきた」と語る。

Tuplは、こうした現状を自動化ソリューションで変えてきた。「Tuplは、エンドツーエンドの自動化プラットフォーム『TuplOS』を提供している。日々連続的に発生する膨大なデータを整理・加工して、機械学習をベースにしたAIエンジンにより特徴量を抽出し、運用で発生している問題の原因を特定。最終的にはトラブルを回避するためのアクションまで自動化できる。さらに、AIがブラックボックスにならないように、エンジニアが状況を確認できる分析機能や様々な運用ツールも備える」(菅野氏)。

▼TuplOSのアーキテクチャと実現する自動化ソリューションの広がり
TuplOSのアーキテクチャと実現する自動化ソリューションの広がり

例えば、「無線通信ネットワークでスループットが低下した」という現象であっても、その原因や対処方法は様々だ。無線の送信電力が低下しているのか、トラフィックが高いのか、セル間のトラフィックが不均衡になっているのかなど、原因は多岐にわたる。正しく原因を追求し、それぞれに適した対応をする必要があるが、現在は様々なデータやツールにアクセスしなければならないなど、解決に時間がかかる場合が多い。また、何を持って解決にするのかも、これだけサービスが多様化すると要件が違ってくる。TuplOSを使うと、多様な機器からのデータ、様々なネットワーク指標、顧客からのクレームなどを横断的にAIが分析し、原因を自動的に特定した上で、APIを通じてネットワーク機器に対処のためのアクションの指示をリアルタイムに出すことができる。

TuplOSが提供するこうした自動化プラットフォームの機能は、多様なアプリケーションでの活用が可能だ。「カスタマーケア、予測的なプロアクティブケア、ネットワーク管理センターの自動化などの運用管理のアプリケーション、無線やコアネットワーク、ネットワーク仮想化のNFV、ローカル5Gといったネットワークドメインの自動化アプリケーションなどを、早期に展開できる」と菅野氏が語るように、通信事業者のネットワーク運用を総合的に自動化できる力がある。

大量データの常時取得と多数のKPIの適切な設定が変化への追従を可能に

ユーザーの中からは、限られたデータや、問題が発生した箇所のみのデータから運用の自動化や将来予測を実現したいという要望をもらうことも多い。しかし、それでは人が行う作業時間を短縮することはできるが、機械学習を十分に活用して価値を最大化する仕組みを取り入れることは難しい。連続的に発生する様々なデータを継続的に処理し、またそれらをスナップショットではなく時間枠で整理していくことで、「今何が起こっているのか」「どんな変化が起こったのか」そして「その原因は何か」、が適切かつリアルタイムに見えてくる。

特にデータの前処理の部分、取得するデータの相関を把握し、KPI化を実施して、それらから特徴量を適切に設定することがとても大切だ。「通信の世界だけを見ても膨大なパラメーターがある。ネットワークエンジニアはさまざまなKPIと結果の関係を経験則として知っているが、データサイエンティストが機械学習に掛けられるようなデータに前処理することが難しい。TuplOSは、ネットワークの専門家がデータサイエンティストの知見がなくてもきちんと機械学習にかけられ、あるいは人の対応をさらに統計学的に見て正しく改善する様なツールを多く搭載している。その業務領域のエキスパートを、AI、自動化ソリューションがサポートして自動化を成功に導き、継続的に使用してもらうポイントになると考えている。また、当社のメンバーは、ネットワークとデータ、AI双方の知識を要する専門家が多く在籍し、両方の知見を持ち合わせ、様々な視点で顧客をサポートする」(菅野氏)。

▼米Tuplのアジア太平洋地域責任者でトゥプル・ジャパン合同会社代表を務める菅野真一氏
菅野真一氏

これは裏を返すと、AIを活用して最適化や自動化を進めようとしても、データを適切に前処理する知見がなければ、プロジェクトは失敗に終わる可能性が高いということ。菅野氏は、「通信事業者をはじめとして、多くの企業が自動化やAI活用のプロジェクトに取り組んでいるが、上手く行かないことが多い。現場のエンジニアとデータサイエンティストが別々に動き、適切なデータの前処理ができないことが1つの原因だ。このほかにも、部分最適化した自動化ツールが多く出来上がり、複数のソリューションが存在し、結局煩雑になり、使われなくなっていくケースも多い。Tuplの自動化ソリューションは単一フレームワークで、データ取得からアクションまでを継続的に行い、且つエンジニアの方とともに運用、成長できる仕組みになっている。」と力説する。

また、Tuplの強みとして、例えば8000万加入者のCDRや位置情報をストリーミングで処理し、品質の一つの指標としての利用を実現できる大量データ処理の能力がある。「ここまで大量なデータを他のパラメータと関係づけてリアルタイム処理できるのはTuplだけと認識している。膨大なデータを取得した上で、必要な部分の情報を抽出してKPI計算した結果だけを保持するような仕組みを採用している。そのため、システムが膨大になることはなく、ミニマムなシステムで最大限の価値を提供している」と菅野氏は語る。また、既にユーザーが構築済みのソリューションとの関係についても、API連携することで単一プラットフォームとして動作させるられるため、これまでの資産の有効活用が可能だ。

▼取得するデータの相関を把握し、KPI化を実施して、それらから特徴量を適切に設定するデータの前処理の部分に強みを持つTuplOS
取得するデータの相関を把握し、KPI化を実施して、それらから特徴量を適切に設定するデータの前処理の部分に強みを持つTuplOS

「データを整理して機械学習させる」ことの拡がり

Tuplは、通信事業者との関係が深かったことがあり、自動化ソリューションの顧客も通信事業者が中心的な存在だ。しかし、膨大なデータがあり、これを適切に整理して機械学習にかけることで、最適な状況を探して業務を自動化するというソリューションそのものは、業種や業態に関わらず有効性が高い。

菅野氏は「Tuplには現在、3つの部門がある。通信関連を中心にしたTupl部門のほか、農業や林業をターゲットにしたTupl AGRO部門、プラットフォーム事業を提供しヘルスケアや教育、自動運転などへの適用を進めるTuplOS部門だ。いずれもデータを活用するプラットフォームを提供し、顧客がツールを使ってアプリケーションを開発する仕組みもある」と語る。Tuplが描く自動化の恩恵は、通信業界にとどまるものではない。

▼Tuplの自動化ソリューションが適応する範囲は拡大していく
Tuplの自動化ソリューションが適応する範囲は拡大していく

例えば林業では、森林の管理に大きな負担がかかっているという。「衛星写真を使って、反射する色合いなどをTuplのソリューションによって機械学習にかけることで、農業の土壌の状態や作物が適切に育つ状況にあるか、森林が適切に日光を浴びて成長できる隙間を持っているか、成長具合は適切か、電線などに引っかかる可能性がないかといったことを自動的に判断できるようになり、森林管理の負荷を軽減できる」(菅野氏)。

ネットワーク業界の課題解決から始まったTuplの自動化ソリューションは、通信事業者の現場の課題を解決する実績を経て、多様な用途に拡大しつつある。膨大なデータを前にして、何をKPIに設定すればよいか、どのようにデータを処理すれば機械学習で成果が得られるかという、経験からしか得られない知見を強みにしたTuplの挑戦が国内でも始まった。

【関連情報】
AIによる運用自動化ソリューションを提供する Tupl(英語版サイト)
メールでのお問い合わせはこちらまで sales-japan@tupl.com

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特集:AIによる運用の自動化が拓く世界

複雑化、多様化そして高度化する世界。こうした世界を適切に管理し、価値ある情報を読み取っていくには、人間の能力による対応では限界があります。AI(人工知能)、機械学習による自動化ソリューションを適切に使うことで、多くのインプットから適切な情報を読み取ることが可能になるのです。本特集では、AIによる自動化ソリューションを提供するTupl(トゥプル)が、様々な世界で自動化がもたらす価値についてお伝えします。(提供:Tupl