WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

島薗 進(しまぞの・すすむ)

【島薗進氏による私塾】新たなケアの文化とスピリチュアリティ 第1回グリーフケアの集いはどのように育まれてきたか?

2022.02.10

Updated by Susumu Shimazono on February 10, 2022, 08:24 am JST

グリーフケア研究所所長・島薗進氏のオンライン私塾が新たなシリーズとして登場します。新シリーズのタイトルは「新たなケアの文化とスピリチュアリティ」です。2022年も島薗塾をよろしくお願いいたします。

そして、今回ご紹介する第1回のサブテーマは、「グリーフケアの集いはどのように育まれてきたか?」とし、ちいさな風の会世話人 元立教女学院短期大学学長である若林 一美氏をお迎えしてお送りいたします。

今回の講義に向けて、メインスピーカーの島薗氏からは次のようなコメントをいただいています。

「新型コロナウイルス感染症によってケアの関係を維持し育むことが容易でなくなった。人々が孤立しやすくなる傾向が増した。オンラインで新たな関係を育てることができた人も少なくないが、集いや出会いがオンラインにかわった状況への適応に苦労する人も多い。だが、人々が孤立しやすくなる傾向は、実は新型コロナウイルス感染症の流行以前から続いてきたものだ。中長期的な傾向として、人と人とのつながりが安定して続きにくくなり、他者のケアを求めたり、ケアし合う関係を育てたりするのが難しくなってきている。だが、そのなかから新たなケアの形を求め、つくりあげていくような例も見られる。新たなケアの文化が広がる気配も見られる。グリーフケアはそうした動きのなかでも目立つものの一つである。子ども食堂も別の形だ。島薗進私塾では「死にゆく人と愛の関係を再構築する技術」に続いて、「新たなケアの文化とスピリチュアリティ」という題を掲げて、上記のような新しい動きについてともに考えていきたい。

第1回はグリーフケアの集いはどのように育まれてきたか?というテーマでお送りする。

最初にお話を伺うのは1980年代から、独自にグリーフケアの集いを営まれて来られた若林一美先生である。日本ではグリーフケアの集いが多数開かれているが、若林先生が始められた「ちいさな風の会」はグリーフケアの集いということを意識して始められたものとして、たぶんもっとも早いものだ。1970年代に柏木哲夫先生らによってホスピス運動が導入され、80年代には仏教のビハーラ運動も広がる兆しを見せ、アルフォンス・デーケン先生のイニシアティブで「生と死を考える会」が始まった。新たなケアの文化のなかで、スピリチュアリティと死は大きなテーマとなる。なぜ、そうなのか、それは、その後、どのように広められてきたのか、今後、どのように展開していくのか。若林先生のお話に耳を傾けながら、ともに考えていきたい」。

また、ゲストの若林一美氏よりも以下のコメントをいただいております。

「1988年に設立された「ちいさな風の会」という子を亡くした親の会に世話人として関わり、遺族の方たちと歳月を共有するなかで、「人は人との関わり、交わり」のなかで癒されていくと感じています。死別や喪失を体験した方たちのお話をうかがうなかで、私は「悲しみはやさしさ」という実感をもつようになりました。

死亡原因にかかわりなく、遺族にとって、心の平安、魂の救済を求め、自らを赦すこと自体が、容易ではありません。子どもをなくした親たちから発せられる「長く生きることのできない『いのち』しか授けてあげられなかった自分の罪」「仏前に座り『ごめんなさい』と謝れても自分を許してとは言えない」など、悲しみは一様ではなく、その苦しみや痛みから逃れることを望むことそのものが、また新たな苦しみとなっていることもあるように思います。

「話せば楽になること」もあるかもしれません。しかし、悲しみは、時間の経過とともに、軽くなっていくこともある一方、むしろ、表層の部分の悲しみが少しずつ薄れていくにしたがい、奥深くの層にあったものが浮上してくるようにも思えるのです。

人は、悲しみなくして生きることはできませんが、子どもの死といった不条理な体験を抱きながら生きる道のりは、その死の現実と向き合う日々となります。

遺族同士の交流から生まれた、「生きることを受け入れる」力の発見、人と人が心を寄せ合い、共感しあうなかで生じる、新しい「いのち」へのまなざしなど──悲しみは比べられるものではなく、その人の人生そのものだと思うのですが、遺族の方たちが紡いできた言葉を中心に、お話しさせていただきます」。

聞き手は「死にゆく人と愛の関係を再構築する技術」に続き、医療・科学ライターの小島あゆみ氏が担当。医療現場を取材するなかで培った知見を基にグリーフケアを学ぶお手伝いをします。
初めて参加される方にとっても有意義な内容にしていきますので、奮ってご参加ください。

また、お申込みいただいた方が当日お時間に都合がつかなくなった場合には、動画アーカイブでオンデマンド視聴を提供します。

プログラム

18:30 島薗氏によるトーク
19:10 若林氏によるトーク
20:00 休憩
20:10 ダイアログ/質疑応答
※プログラムの内容・順番・時間などは予告なく変更となる可能性がありますのでご了承ください。

開催スケジュール等

●日 程:2022年3月3日(木曜)18:30~
●会 場:Zoomを利用したオンラインイベントです。
お申込みはこちら http://ptix.at/gAaGvL
お申込みいただいた方には、前日までに参加URLをメールにてお送りします。
●参加料:¥1500(税込)
※チケットの購入期限は当日3月3日の17:30までとさせていただきます。
●主 催:WirelessWireNews編集部(スタイル株式会社)

メインスピーカー プロフィール

島薗 進(しまぞの・すすむ)島薗 進(しまぞの・すすむ)
1948年東京都生まれ。東京大学文学部宗教学科卒業。同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学名誉教授。上智大学グリーフケア研究所所長。おもな研究領域は、近代日本宗教史、宗教理論、死生学。『宗教学の名著30』(筑摩書房)、『宗教ってなんだろう?』(平凡社)、『ともに悲嘆を生きる』(朝日選書)、『日本仏教の社会倫理』(岩波書店)など著書多数。

ゲストスピーカー

若林 一美(わかばやし・かずみ)若林 一美(わかばやし・かずみ)
ちいさな風の会世話人 元立教女学院短期大学学長。立教大学大学院 教育学専攻修士課程修了。ミネソタ大学「死の教育と研究センター」に研究員として留学。IWG(死と遺族に関する国際会議)会員。Illness, Crisis and Loss 編集委員。「<いのちのメッセージ>-生きる場の教育学-」(ナカニシヤ出版)「死別の悲しみを超えて」(岩波現代文庫)「亡き子へー悲しみを超えて綴るいのちへの証言」(岩波書店)「自死遺族として生きる」(青弓社)「自殺した子どもの親たち」(青弓社)「デス・スタディ」(日本看護協会出版会「シシリー・ソンダース 近代的ホスピスの創始者」(翻訳)(日本看護協会出版会)他。

「自死遺族として生きる」

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

島薗 進(しまぞの・すすむ)

1948年東京都生まれ。東京大学文学部宗教学科卒業。同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学名誉教授。上智大学グリーフケア研究所所長。おもな研究領域は、近代日本宗教史、宗教理論、死生学。『宗教学の名著30』(筑摩書房)、『宗教ってなんだろう?』(平凡社)、『ともに悲嘆を生きる』(朝日選書)、『日本仏教の社会倫理』(岩波書店)など著書多数。