WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

都市型のローカル5G研究施設を開設、ノキアが六本木ヒルズに

2022.05.17

Updated by Naohisa Iwamoto on May 17, 2022, 12:30 pm JST

フィンランドのノキアが、国内のローカル5G普及に向けてこれまでよりもさらに踏み込んだ施策に乗り出した。ローカル5Gの実践的な研究施設を六本木に開設し、ユーザー企業やパートナー企業、通信事業者などに対して、研究施設をサービスとして提供する「Lab as a Service(LaaS)」の形で国内のローカル5G普及を下支えする

研究施設のノキアローカル5Gラボは、ノキア日本法人のノキアソリューションズ&ネットワークスの本社がある六本木ヒルズのオフィス内に設けられた。これまで先端技術センター(ATC)として利用していたスペースをアップグレードし、エンドツーエンドのローカル5Gシステムを検証するために必要なローカル5G実験試験局免許を取得し、ラボとして提供するものだ。

都市部の企業から好アクセスな六本木ヒルズでローカル5G実証

2022年5月12日に、ノキアローカル5Gラボのオープニングセレモニーと記者説明会が開かれた。記者説明会でノキアソリューションズ&ネットワークス 執行役員 マーケティング・コミュニケーション統轄の小美濃貴行氏は「ローカル5Gの都市型ラボをオープンした。このラボはローカル5Gを実環境下でテストできる。認証テストや開発テストなどのデバイステスト、PoC(概念実証)やソリューション検証などのE2E(エンドツーエンド)ソリューションテストを実施するほか、パートナーとともに開発したユースケースやデモを展示するショーケースとしての機能も持つ」と説明する。

▼Lab as a Service(LaaS)としてラボを提供する

LaaSを六本木ヒルズという都市部のオフィスビルに設けることで、試験環境の整備ということに加えて都市部の企業などから迅速にアクセスができるといった物理的なメリットも提供できる。サービスの形態としては、(1)ラボ内の基地局やアプリケーションなど常住するノキアの専門技術者とともに実施する「ノキア・オンサイト型」のほか、(2)ラボの環境をフライトケースに入れてユーザーサイトでローカル5Gのテスト実施する「パートナー・オンサイト型」も想定する。

小美濃氏は、「ローカル5Gラボを通じて、パートナー企業との関係を深めていきたい。エネルギー、輸送、公共、製造・サプライチェーンなど、各業界で価値創造をしていく」と語る。

▼ラボに設置された機器

そのパートナーとしては5月12日時点に18社が名を連ねる。コネクシオ、伊藤忠テクノソリューションズ、ダイワボウ情報システム、日立国際電気、キンドリルジャパン、京セラ、日本マイクロソフト、ネットワンシステムズ、ネットワンパートナーズ、日鉄ソリューションズ、日本システムウエア(NSW)、オムロン、PTCジャパン、シャープ、スパイレント・コミュニケーションズ・ジャパン、TeamViewerジャパン、東芝インフラシステムズ、ベライゾンジャパンである。そのうちNSW、TeamViewer、東芝インフラシステムズ、京セラの4社が新たに参画したパートナーである。

フィンランドと日本のICTの協力強化に貢献

セレモニーに来賓として参列した駐フィンランド日本国大使の藤村和広氏は、「日本はソサイエティ5.0を推進し、データ主導の社会を目指す。日本とフィンランドの間では、協力の強化を推進していて、特に科学技術分野での協力をこれからも推進していく中で、ノキアローカル5Gラボのオープニングはそれに沿ったものとして重要な役割を担う」と挨拶した。

同じく来賓のフィンランド共和国・開発協力・外国貿易大臣のヴィッレ・スキンナリ氏は「貿易大臣の立場から、公平でオープンな貿易を目指している。そこにはデジタル的な信頼が必要であり、日本とフィンランドには同じ価値観、同じ目的がある。ICTの強いエコシステムがある両国の協調に対して、ノキアローカル5Gラボが布石になる。東京の方々にはサポートを感謝する」と述べた。

ノキアからは、CEOのペッカ・ルンドマルク氏が挨拶に立ち、「すでに世界で450社がノキアのプライベートネットワークを使っている。プライベートネットワークは安全で信頼があり、Wi-Fiやオペレーター主導のマーケットとは異なる。今後プライベートネットワークは1500万に上るという推定もあり、まだカバレッジは0.0002%に過ぎない。ポテンシャルはたくさんあり、今からローカル5Gを構築する企業も他社と比べてびっくりするような生産性向上を得られる千載一遇のチャンスを手にしていると考えられる」とローカル5Gのマーケットの将来展望を明るく見込む。

▼オープニングセレモニーのフォトセッションには、来賓、ノキア、ノキアソリューションズ&ネットワークスの各氏と、パートナー企業の代表者が並んだ

ノキアソリューションズ&ネットワークスで執行役員 エンタープライズビジネス統轄を務めるドニー・ヤンセンス氏は、「ノキアはイノベーションの最前線で産業のデジタル化を支えていて、六本木にイノベーションラボを開設した。日本のパートナーと協同して、ローカル5Gを検証する場として有効に活用してもらいたい」と、ノキアローカル5Gラボを通じて国内のローカル5Gマーケットの活性化をパートナーとともに推進することをアピールした。

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。