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酒 人形 仮想 イメージ

先行者利益、あるいは高値売り抜けという以外の価値はないのか?

2022.06.27

Updated by Toshimasa TANABE on June 27, 2022, 13:58 pm JST

「メタバース」というワードをまた見かけるようになってきた。その昔、セカンドライフってのがあってな、なんて話があまり出てこないのが不思議だが、そのセカンドライフで何が起きたかというと「土地の買い占め」(場所取り)と土地や独自通貨の「値上がり待ち」であった。リアルワールドを濃厚に感じさせるカネの話ばかりになってしまったのだ。

カネに換算しないと意味や価値がよく分からない、企業も個人も儲かってなんぼ、ということもあるだろうが、新しいネット上の仮想的な世界(土地的なものはいくらでも供給されうる)であっても、リアルワールド(土地は有限)の価値観に染まってしまうことによってその魅力が急速に色褪せた、といえないこともない。

仮想通貨(暗号資産)にしても、同じようなことが発生した。結局、既存の価値観にマッピングしやすいFXのような投資対象になり、リアルな通貨との間での為替的な値上がり待ち(我慢大会)になってしまい、売り抜けた人はまだしも、まだ上がるかもと思っていたら暴落して痛い目に遭ったというケースもあった。売り抜けた人にしても、既存の通貨が増えただけであって、それなら相手はドルでもユーロでも、株でも投資信託でも何でも良かったはずなのである。

リアル社会に目を転じてみると、例えばクルマの世界では、ポルシェ911の空冷エンジン最終期あたりの中古車価格が暴騰しているという。RR(リヤエンジン・リヤドライブ)で空冷の昔の雰囲気を残した911が好きだから、あるいは一度は乗ってみたいから、などという純粋な動機では、普通の人にはもう手が届かなくなってきており、まだ上がるかもしれないから投資として何台か買っておくなどというなんとも貧乏くさい話が増えてきそうだ。

ウイスキーも高騰しているものの一つだが、メーカーも転売価格をコントロールできないので、生産量の少ない限定品はNFTのみで販売し、指定のマーケットプレイスで流通させて現物と交換できるようにする、などという例も出てきた。個人的には、NFTの使い方としてなかなかスマートだなとは思った。

クルマにしても酒にしても、希少価値が価格を釣り上げているのではあるが、その味わいが分かるユーザーが体験してこそ、であって、転売で儲けようなどという輩の手に渡るのは、造り手にとってもユーザーにとっても、不幸な状態ではなかろうか。

そういうわけで、リアルワールドの価値観、カネの感覚から解き放たれた世界は果たして、という観点で、最近のメタバース界隈の話を見ていきたいと思うのである。この手の仕掛けが何度目の正直なのかはよく分からないのだが。

というようなことを考えていたら、メタバースなどについて「そこに五感で受け止められる価値はあるのか?」という問いかけの記事をModern Timesで見付けた。クルマやウイスキーを出すまでもなく、五感こそが楽しさ、愉しさの基本にあると思うのである。

■ヴァーチャル世界が拡大する時代に、共感覚的な体験は作れるか
https://www.moderntimes.tv/articles/20220620-01et

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田邊 俊雅(たなべ・としまさ)

北海道札幌市出身。システムエンジニア、IT分野の専門雑誌編集、Webメディア編集・運営、読者コミュニティの運営などを経験後、2006年にWebを主な事業ドメインとする「有限会社ハイブリッドメディア・ラボ」を設立。2014年、新規事業として富士山麓で「cafe TRAIL」を開店。2019年の閉店後も、師と仰ぐインド人シェフのアドバイスを受けながら、日本の食材を生かしたインドカレーを研究している。