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チャレンジャーバンクが大手銀行の存在を脅かすイギリス

UK's challenger bank

2022.07.11

Updated by Mayumi Tanimoto on July 11, 2022, 07:00 am JST

フィンテック系のスタートアップの活動が欧州で最も活発なのはイギリスですが、当局の規制緩和もあってネット発の「チャレンジャーバンク」は日本よりもはるかに普及しています。

イギリス政府は今年の初めに発表した市場分析で、既存の銀行のシェアがチャレンジャーバンクに奪われており、金融業のビジネスモデル自体が大きな変化を遂げていると公式に発表しました。これまでは、ここまではっきりとは公言していなかったので、イギリスでは話題になりました。チャレンジャーバンクは、銀行というよりもプリペイドカードの一種のような扱いだったので、これは大きな変化です。

イギリスで特に伸びが大きいのが、主要プレーヤーであるStarling Bank、Monzo、Revolut、Tideです。Starling Bankの顧客は270万人に及び、預金金額は3億2200万ポンドに達しています。

Tideは、中小企業経営者や個人事業主をターゲットとしたチャレンジャーバンクで、ビジネス口座の管理が会計ソフトなどとの連携でかなり便利になっています。口座開設も迅速で、振り込みもほぼリアルタイムです。日本の銀行サービスに慣れていると、その軽快さとスピード感に驚かされます。2021年は週に10万人の口座開設があり、2020年に比べ30%の増加です。

Revolutは、東アジアにも進出していますので、日本でも「知る人ぞ知る」という銀行ですが、イギリス本社では、子ども用口座とカードの発行、割引サービスなどにも力を入れています。イギリスは移民が多く、EUとイギリスを往復する人も多いので、為替取引の便利さが人気です。

どの銀行も、創業者や幹部、社員に外国人が多いのも特徴です。これは日本とはちょっと違います。かなり多国籍な環境で運営されているので、EU各国への進出も迅速です。

また、このようなチャレンジャーバンクの口座でも、ApplePayやGooglePayに対応しており、ロンドンだとキャッシュカードでそのままバスや電車に乗ることができるため、交通系カードの役割も果たしています。屋台やタバコ屋でも支払い対応が当たり前なので、現金を使うことは数カ月に一度という人が少なくありません。

ただし、イギリスではかなり普及しているチャレンジャーバンクではありますが、メインバンクになるにま道のりが遠いようです。イギリスの消費者の72%はオンラインバンキングを使用しており、アメリカの62%に比べデジタルに抵抗がありません。物理的な支店に足を運んで入金すると答えた人は21%しかおらず、アメリカの30%に比べて支店に頼る人が少ないのです。

しかし、そういう状況であっても、51%はチャレンジャーバンクをメインバンクにすることに不安を感じています。チャレンジャーバンクへの預金の平均は£350(1ポンド165円換算で約5万7千円)と少なく、日常の少額決済のための予備アカウントとして使う顧客が大半です。

意外なのは、チャレンジャーバンクの顧客は19歳から35歳までの若い人も多いのにも関わらず、 若い人であっても現金を口座に入れるのはかなり注意深い、ということです。フィンテックが活性化してチャレンジャーバンクがこれだけあるイギリスでも、やはり消費者としては、規制が緩い銀行に大きな金額を置くことは不安なわけです。

チャレンジャーバンクで口座を開設するのに必要な日数は2日から3日ですが、大手銀行だと5日から3週間かかります。チャレンジャーバンクの場合は送金はリアルタイムで、カスタマーサービスも電話だけではなくチャットやTwitterでも対応してもらえます。スピード感と利便性は非常に高いわけですが、やはり信用性がまだまだ低いという点は大きな課題です。

一方で、消費者の信用を勝ち取ることができれば大手銀行に対して様々な利点があり、市場シェアを伸ばしていく可能性がかなり高い、という点は重要でしょう。これは、他の分野のビジネスであっても示唆に富む事実です。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。