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実は謎多き梅雨前線

2023.05.25

Updated by WirelessWire News編集部 on May 25, 2023, 17:06 pm JST

梅雨前線はふたつの高気圧の間にできる

雨の日が続きがちな梅雨。梅雨はご存じの通り、梅雨前線によってもたらされる。前線とは性質の違う空気の塊どうしの境目であり、前線のある場所には雲が発生しやすい。梅雨前線は停滞前線と呼ばれる種類のもので、前線を挟んだ二つの空気の塊の勢力がほぼ同じときに発生し、その場に長期間停滞しやすいという性質がある。

天気図では、停滞前線は一本の線の南側に暖気の境目を示す半円が並び、北側に寒気の境目を示すとがった三角形のような形のマークが並ぶ形で表示される。線の両側に半円と三角形のような形を並べることで、前線を挟んだ空気の勢力が拮抗していることを示しているのだ。余談だが、停滞前線とよく似た見た目の閉塞前線のマークは、一本線の片側に半円と三角形のような形が交互に並んでいる。こう表示することで暖気に寒気が追い付いたことを示している。

梅雨前線は、日本の南にある太平洋高気圧と、北にあるオホーツク海高気圧との間にできる。太平洋高気圧はとても大きく、高温多湿な空気でできている高気圧だ。その一方で、オホーツク海高気圧はわりと小ぶりな、冷たく湿った空気でできている高気圧である。

梅雨前線が停滞し始めるとぐずついた天気の日が増えるようになり、気象庁が「〇〇地方が梅雨入りしたとみられる」と発表する。いわゆる梅雨入り宣言である。梅雨入りの時期の平年値は、沖縄で5月10日ごろ、東北北部で6月15日ごろである。梅雨入りすると、ジメジメ、しとしととした雨が降り、それまでの汗ばむような陽気から一転、ひんやりと肌寒い日が増える。いわゆる「梅雨寒」である。この梅雨寒は、オホーツク海から吹き出す北東の涼しい風によるもので、前線付近には静かな雨を降らせる乱層雲が発生している。

そして季節が進むと、どんよりした天気が続くというよりは、蒸し暑い晴れの日もありながら、降るときは降るというメリハリのきいた天候になっていく。梅雨の後半では土砂降りの雨が長時間降り続くことが多い。このような梅雨後半の土砂降りの雨は、積乱雲によってもたらされる。梅雨前線の南のほうから暖かく湿った風が前線に流れ込むことで積乱雲が発生するのだ。積乱雲からの雨なので、ときには雷が鳴ることもある。天気にまつわる言い伝えで「雷が鳴ると梅雨が明ける」というものがあるが、この雷は梅雨前線にできる積乱雲から発生するもののことを指す。

梅雨前線は、南にある太平洋高気圧の勢力が強まるにつれて北上する。そして、梅雨前線が抜けた地域から「梅雨明け」し、太平洋高気圧の勢力下におさまる。高温多湿な夏の到来である。

以上が学校でも習う梅雨の知識である。しかし、実際はそこまで単純なものではないのだ。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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