前回はスリム化と戦略的同盟により効率の良い運営を行うイギリス陸軍についてご紹介しましたが、これらの実装で最重要視されているのがAIとDXです。イギリス陸軍は、AIが「防衛近代化に不可欠」と判断し、包括的なデジタルトランスフォーメーション（DT）プログラムであるTHEIAプログラムを通してAIを実装すると発表しています。

THEIAプログラムは、ギリシャの視覚と洞察の女神にちなんで名付けられたもので、主な目標として以下を掲げています。

（1）敵に対して競争力を持つ
（2）パートナーとの統合を向上させる
（3）最大限の効率性で作戦を実施することを可能にする

THEIAプログラムで中心となるのが陸軍のデータを十分に活用する防衛クラウドコンピューティング・プラットフォームです。イギリスの国防大臣は、2012年以来の約30,000人の人員不足を技術で補うと考えており、AIを可能にするクラウドコンピューティング・ソリューションが主要な成果物となると述べています。

非常に面白いのがこのDXプロジェクトの全体像が、「人間がどの様に情報を認知するか？」というピラミッドモデルに沿って設計されていることです。ピラミッドの頂点に来るのが「人間の脳による認知」であり、その下に陸軍のクラウドに集約された情報が来ます。

そしてこのクラウドに処理したデータを入力するのが、陸軍の活動の様々なエントリポイントやデバイスとなっており、DXのグランドデザインを

• どこから情報が入力され
• 何で処理され
• どこに格納され
• それらがどの様に要員に認知されるか？

という「認知レイヤー」で考えられています。この構図は以下の図で表現されています。

Army Digitalisation: the THEIA programme

通常、DXのプロジェクトはバリューチェーンや、もっと下の段階の業務プロセスの相関図などで超上流のグランドデザインが描かれますが、この様なコンセプトは斬新でしょう。