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先行指標が含む「空回り」のリスク。遅れてやってくる指標の利点を見落とすな

2024.08.20

Updated by WirelessWire News編集部 on August 20, 2024, 13:02 pm JST

サービスを提供しはじめて間もない事業ほど「先を見据えられる」と先行指標に飛びつきがちだ。しかし、そこには「空回り」のリスクがある。過去を照らし出す遅行指標を活用しよう。

先行指標か、遅行指標か

データ分析の現場ではさまざまな指標が使われていますが、その指標が事象に対して先んじた数値なのか、それとも後から結果を説明している指標なのか、という違いを知っておくことは重要です。前者は先行指標、後者は遅行指標と呼ばれます。

先行指標と遅行指標にはどのようなものがあるのでしょうか?

例えば、SaaSのような月額課金サービスを提供している人がいるとします。将来のユーザー数を割り出したい場合に用いる指標はいくつもありますが、なかでも有用そうなのが、獲得しているリード(見込み客)の数と、顧客の離脱数です。このとき、前者が先行指標、後者は遅行指標です。

先行指標は将来の事象を推測できる指標です。現在の活動から、将来に影響を与える要因を数値にしています。たとえば、リード数は将来ユーザーになる可能性のある顧客のことであり予測に利用することができます。リード数に課金率を掛けることで獲得顧客数を見積もることができます。

遅行指標は過去の成果を測定した指標であり、既に起きたことを示す数値です。遅行指標は結果であり、サービスの成功や失敗を評価するのに役立ちます。例えば顧客の離脱率は、サービスから離れてしまった顧客の割合です。これはサービスの成果を示す指標であり結果そのものです。例えその後にサービスを改善したとしても、既に離脱した顧客の数は変わりません。

先行指標の課題

では、先行指標と遅行指標のどちらが有用な指標でしょうか? 直感的には先行指標の方が役に立ちそうです。サービスから既に離脱した顧客の数が分かっても、その顧客へアクションを取ることは簡単ではありません。しかし、リード顧客に対してはいくつかアプローチの方法がありそうです。

では指針を定めるときは、先行指標ばかりを頼りにしても良いのでしょうか。なんとなくお気付きかもしれませんが、実は先行指標にはいくつか弱点があります。

先行指標の弱点の一つは、先行指標を決めるのは簡単ではない、ということです。遅行指標はいわば結果なので直感的に決めることができますが、先行指標はそこからカスタマージャーニーを遡ったりサービス上の行動を深堀りしたりするなどの調査が必要になります。ビジネスはさまざまな要因が同時に影響し合うため、有用な先行指標を特定することは簡単ではありません。特にサービスを立ち上げた初期はデータが不足しているため、どの指標が先行指標足り得るかを特定することは困難です。

2点目の問題は、先行指標には不確実性があることです。先ほど述べたように遅行指標は結果であり数値として不確実性はありません。離脱率は離脱という結果の値であり、ここに曖昧さや予測などの介入はありません。一方で先行指標は、現時点の状態から将来の値を推測することになるので正確な予測が原理的にできないのです。

現在の見込み顧客数が分かっていたとして、ある程度の将来の獲得顧客数は予測できますが、実際にその値になるかどうかは誰にも分かりません。もしかしたら自分たちが知らないところで問題が起きて、推測値よりも大きく下がるかもしれません。そうでなくても、さまざまな要因によって上下にブレが発生することは容易に想像できるでしょう。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の前半部分です。
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