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AIを麻薬中毒削減に使うイギリス

UK to use AI to prevent drug overdose death

2024.10.28

Updated by Mayumi Tanimoto on October 28, 2024, 17:02 pm JST

AIを活用する分野は国や地域によって優先順位が異なりますが、イギリス政府では、AIや仮想現実を麻薬中毒依存や麻薬による死亡者を減らすために活用しています。イギリス政府は、麻薬中毒の人々を支援する技術を研究しているプロジェクトに1200万ポンドを提供しています。

例えば、PneumoWave ALERTは、オピオイドや処方薬の過剰摂取(オーバードース)による死亡を防ぎ、より安全なオピオイドの使用を支援するシステムです。胸に装着したセンサーは呼吸を24時間監視し、データはモバイルデバイスにリンクされ、さらにクラウドに保存されます。

システムのAIは、どんなデータが検出されると過剰摂取であるかを判断するように訓練されており、検出されるとアラートが送信され、その人の近くにいる解毒剤を持った人や病院の救急サービスが通報を受け、救援や治療が行われます。

既にこのシステムは、実際の中毒患者に対して実証実験が行われており、オーストラリアのシドニーとメルボルンにある麻薬注射施設(SIF)で被験者の観察が行われ、データを収集してシステムの改善を行っています。この施設は、麻薬施用者が政府の監視の下で政府によって提供される違法薬物を「合法」に使用できる場所です。

イギリスや欧州にはこのような施設があり、既に依存症になっている人々がより安全な環境で麻薬を使用することで、感染症や過剰摂取による死亡 防ぐという取り組みです。麻薬の使用を禁止して罰を与えるだけではその人の状況は改善しないので、このような施設で安全な状況で麻薬を使ってもらったり、解毒剤や治療などを提供するということが、麻薬中毒者への対処として盛んになってきています。

このような麻薬中毒者の危険性を検知するシステムをAIで作るというのは、ディストピア的な感じもしますが、オピオイド等の過剰摂取は世界的な問題で、世界中で2700万人以上に影響が及んでおり、2022年から2023年にかけて米国では10万人以上が薬物過剰摂取で死亡しています。中毒者を治療するための医療費や社会不安、労働力の損失を考えた場合、システムによって中毒による死亡や悪化を防ぐというのは、緊急性のある課題なのです。

日本から見ると、非常に驚くべきことかもしれませんが、日本は超少子高齢化で人手不足なことを考えると、政府主導で類似するシステムを応用して健康管理に活かすということは重要になってくるでしょう。限られた医療リソースを有効活用して公的財源の無駄使いを防ぎ、国民の全体的な健康度を向上させることで、労働力を確保するのです。

例えば、高齢化によって日本では糖尿病患者や心疾患の人が増えていくわけですが、運動習慣や食生活の管理に似たようなAIを搭載したシステムを活用していくことなどが考えられるでしょう。また、そのようなシステムは、高齢化や国民の健康維持に悩む他の国でも需要があるはずなので、ビジネスチャンスに繋がります。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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