July 16, 2026
中村 航 wataru_nakamura
1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。
フランスのロボティクススタートアップ、Genesis AIは先ごろ、新たな汎用ロボット「Eno」を発表した。Enoは、頭も脚もなく、車輪で移動し、伸縮するボディと人間に近い手を備えた独特の外観が特徴のロボットだ。Figure AIやTesla Optimusに代表される人型ロボットが注目を集める中、あえて人間らしい外見を追求しない設計が話題となっている。
Genesis AIは2025年に設立された企業で、元Google CEOのエリック・シュミット氏らの支援を受けて約1億500万ドル(約170億円)を調達した。設立からわずか1年余りながら、フィジカルAI分野の有力スタートアップとして注目を集めている。
同社が目指しているのは、人間そっくりのロボットを作ることではない。工場や物流施設などの現場で実際に役立つ能力を実装することだ。平坦な床を移動するなら脚より車輪の方が効率的であり、重要なのは見た目ではなく作業能力だという考え方である。
Genesis AIの取り組みは、フィジカルAI業界で起きている変化を理解する上でも興味深い。これまで脚光を浴びてきたのはFigure AIやTesla、Neura Roboticsのようにロボット本体を開発する企業だった。しかし2025〜2026年にかけては、ロボットの「身体」だけでなく、その「頭脳」を開発する企業にも資金が集まり始めている。
代表例がPhysical IntelligenceやSkild AIだ。両社は特定のロボットを開発するのではなく、さまざまなロボットや機械で利用できる汎用AIモデルの構築を目指している。
その中でGenesis AIは少し異なる立ち位置にある。ロボット本体に加え、AI基盤モデル「GENE」やシミュレーション環境まで自社で開発しており、身体と頭脳の両方を手掛ける「フルスタック型」の戦略を採用している。スマートフォン業界で例えるなら、OSとハードウェアの両方を自社で開発するAppleに近い発想だ。
フィジカルAI業界ではこれまで「どんなロボットを作るか」が競争の中心だった。しかし現在は、「どのような知能を現実世界で動かすか」へと関心が移りつつある。Genesis AIのEnoは単なる風変わりなロボットではなく、その変化を象徴する存在として注目されている。
参照
Meet Eno
French startup bets on non-humanoid design in crowded AI robot race | Reuters
This AI robot startup thinks humanoids are overrated
Khosla-backed robotics startup Genesis AI has gone full stack, demo shows | TechCrunch