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August 18, 2026
中村 航 wataru_nakamura
1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。
最近、ロボット掃除機を買った。部屋の形を覚え、家具を避けながら動く様子には驚かされる。一方で、このマッピングデータはどこまで記録され、どう扱われているのだろうと思うこともある。
自宅であれば、便利さのほうを優先する人も多いだろう。だが、政府機関や軍事施設、大手企業の製造拠点ではそうもいかない。現場の構造や設備、人の動きが外部に渡る可能性があるからだ。カメラやセンサーを備えたロボットが現場を動き回ることは、サイバーセキュリティや国家安全保障の問題にもつながってくる。
米連邦通信委員会(FCC)は2026年7月28日、外国製の高度ロボット機器と、電力インフラに使われる接続型パワーインバーターについて、新たな機器認証を原則として制限すると発表した。Axiosによれば、対象にはヒューマノイドや四足歩行ロボットなどが含まれ、実際には中国製品への影響が大きいとみられている。AP通信も、この措置は中国を主な対象としたものだと報じている。
AIチップや大規模言語モデルをめぐっては、すでに米中間で輸出規制や利用制限が議論されてきた。背景にあるのは、先端AIが軍事や監視、サイバー攻撃に転用される可能性への警戒だ。今回の動きは、その安全保障上の警戒が、現実世界で動くAIの「身体」にまで広がり始めたことを示している。フィジカルAIの時代には、AIモデルだけでなく、それを載せるロボット本体、センサー、通信モジュール、電源装置までが規制や輸出管理の対象になり得る。
FCCが問題視しているのは、ロボットが単なる機械ではなく、ネットワークにつながった移動するセンサーになっている点だ。工場、倉庫、家庭、公共空間で動くロボットは、周囲の映像や音、位置情報、作業環境のデータを扱う。もしそれが外部から不正に操作されたり、情報収集に使われたりすれば、リスクはソフトウェアだけにとどまらない。
一方で、この規制には別の側面もある。Business Insiderは、米国の一部ロボット企業が規制を歓迎する一方で、大学や小規模スタートアップからは懸念も出ていると報じている。中国のUnitreeなどが提供する比較的安価なロボットは、研究開発の実験台として広く使われてきた。安いハードウェアへのアクセスが制限されれば、米国側の研究やスタートアップにも影響が出る可能性がある。
今回の動きが示しているのは、ロボットが社会に入り込むほど、「誰が作ったのか」「どこで作られたのか」「どの国のサプライチェーンに依存しているのか」が問われるようになるということだ。
ロボットは、現実世界に触れるAIである。だからこそ、その身体は技術製品であると同時に、安全保障上のインフラにもなり得る。米国による外国製ロボットへの規制強化は、フィジカルAIが技術競争だけでなく、国家間の信頼やサプライチェーンの問題にもなり始めたことを示している。
(中村 航/翻訳家)
参照
Axios: Trump administration bans Chinese hardware with eye on AI race
AP: US bans foreign-made humanoid robots, targeting China over national security
Business Insider: Trump’s robot ban aims to counter China
The Verge: The US is banning foreign robots