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September 29, 2026
中村 航 wataru_nakamura
1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。
スーパーやドラッグストアの棚に商品が並ぶ前、配送センターでは、さまざまな商品を、店舗ごとの注文に合わせて選び、一つのパレットへ積み直す作業が行われている。商品も数量も毎日変わるため、見た目ほど単純な仕事ではない。米国のMaven Roboticsは、この作業を入口に、物流業務全体の自動化を目指している。
Mavenは2026年9月10日、ステルス状態を抜け、1億ドル(約150億円)のシリーズA資金調達を発表した。出資にはRoboStrategy、LocalGlobe、Vine Ventures、XTX Venturesなどが参加している。
TechCrunchによれば、2024年の創業当初、同社には完成したロボットがなく、CEOのHamza Derbas氏の言葉では「ロボットの絵とチーム」しかなかったという。それでも同社は大手消費財メーカーの工場や倉庫を訪れ、人の働き方と業務の流れを観察した。同氏は、自分たちが解こうとしているのは一台のロボットの問題ではなく、倉庫管理システムからトラックへの積み込みまで、仕事を端から端まで自動化することだと説明している。
Mavenが最初に選んだ作業は「混載パレタイジング」と呼ばれる。種類や大きさ、重さの異なる箱を、その日の注文に応じて組み合わせ、一つのパレットへ積み直す。ロボットには必要な箱を見分け、倒れにくいように配置しながら、注文の変化にも対応することが求められる。
同社のロボットは、車輪で移動する台座と2本のアームを備える。一方、Mavenのシステムは箱をつかんで積む能力だけを提供するものではない。倉庫管理システムから注文情報を受け取り、必要な箱を積み上げ、出荷へつなげるまでが一つの仕組みとして設計されている。ロボットは、その業務を動かすための一部分だ。
Mavenの説明では、現在は顧客施設に導入された最大8台のロボットが1日16時間働き、稼働率は99%以上だという。稼働率は高いものの、実運用の規模はまだ小さい。同社は今回の調達資金を使い、第3世代のロボットを250台製造する計画だ。少数の現場で成立した仕組みを、多数のロボットや顧客施設へ広げられるかが次の課題になる。
同社は混載パレタイジングや搬送用ボックスの取り扱いから始め、将来はより複雑な荷役や組み立てへ対象を広げようとしている。最初から何でもできるロボットを作るのではなく、一つの仕事を確実に完了させ、その仕組みを別の仕事へ展開する考え方だ。
完成したロボットもない段階でMavenが顧客を獲得できた背景には、特定の動作をこなす機械ではなく、現場を観察し、仕事全体を自動化する仕組みを提案したことがある。この発想は、産業用ロボットや物流設備、業務システム、現場改善の知見を持つ日本企業にもヒントになる。フィジカルAIの事業機会は、新しいロボットを開発することだけでなく、それを既存の業務へ組み込み、一連の仕事を完結させる仕組みをつくるところにもある。(中村 航/翻訳家)
参照
TechCrunch;Maven Robotics wants to steal your robot deployment deal
Maven Robotics;Maven Robotics Raises $100M Series A for the World’s First General-Purpose Robotics System for Industrial Work
SiliconANGLE;Maven Robotics launches with $100M to scale its industrial robots