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個人情報やプライバシーに関心があればあるほど、こう問いかけられると、ハッとするのではないでしょうか。しかし今回のインタビュー解説を通じて、そんな問いを改めて突きつけられたというのが、率直な印象です。

当初は、このところ日本を含めて世界的に関心が高まる「分かりやすい同意」について、その現状と今後を明らかにすることを目的としていました。実際、佐藤氏(日本ヒューレット・パッカードCPO)による解説では、ご自身も策定に関わった、経済産業省「オンラインサービスにおける消費者のプライバシーに配慮した情報提供・説明のためのガイドライン」を取り上げています。

しかしながら、この解説を読み解いていけばいくほど、「これはゴールではなくスタートである」ということが、分かってきます。というのは、あくまでこのガイドラインは、「現状における消費者と事業者の解釈の相違」の是正をターゲットにしており、その是正がなされた後に訪れるであろう新たなパラダイムにおいて、言及していないからです。

この点について、崎村氏(野村総合研究所上席研究員)はインタビューの中で、「データの取得というのはどういうことなのか、もう一度考えるべきだ」と提言されています。確かに2011年の世界経済会議(通称ダボス会議)のレポートでも、データの取得方法について、

1)本人からの自発的な提供
2)観測による取得
3)推測による取得
4)第三者からの取得

が示されており、すでにプロファイリングを前提としたデータ利活用の局面では、3)や4)が検討の対象となりうるにも関わらず、現時点では1)を前提とした議論しか進められていないのが実情です。

もちろん、ガイドライン策定をはじめとした、「分かりやすい同意」の推進が無意味である、などということではありません。むしろそれは「今日の課題」を解決するために、不可欠といえます。

しかしながら、データを利活用したビジネスは、すでにプロファイリングを前提とした局面に進みつつあります。そしてプロファイリングの精度向上には、より多くのデータを統合することが期待されます。この時、プライバシーへの影響はどの程度なのか、プロファイリング結果とデータサブジェクトの関係はどのように整理されるのか......こうした観点から、改めて「同意」を考える必要があります。

2014年6月に政府IT総合戦略本部から発表された「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱(PDF)」では、このような問題意識を先取りする形で、

1 新たな紛争処理体制の在り方
2 いわゆるプロファイリング
3 プライバシー影響評価(PIA)
4 いわゆる名簿屋

が「継続的な検討課題」として挙げられました。

2015年年初の通常国会で審議が予定されている個人情報保護法の改正では、上記の検討を網羅することは間に合わないと予想されます。しかしながら、法制度の検討のみならず、むしろ事業者が諸費者からの信頼性を自ら高めるという営みの中で、「誰から、何に対して、どのような局面で、どういった形で」同意を取得することが、消費者と事業者のリスクを低減するのか、既存のパラダイムを超えた検討が必要です。

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特集:プライバシーとパーソナルデータ

情報通信技術の発展により、生活のあらゆる場面で我々の行動を記録した「パーソナルデータ」をさまざまな事業者が自動的に取得し、蓄積する時代となっています。利用者のプライバシーの確保と、パーソナルデータの特性を生かした「利用者にメリットがある」「公益に資する」有用なアプリケーション・サービスの提供を両立するためのヒントを探ります。(本特集はWirelessWire News編集部と一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の共同企画です)