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[2011年第43週]ソニエリがソニー子会社に、日本ユーザーはアプリ好き、分散無線ネットのデモ

2011.10.31

Updated by Naohisa Iwamoto on October 31, 2011, 12:00 pm JST

201110311200-1.jpg10月も終わりにかかったこの週のトップニュースは、ソニー・エリクソンにまつわる動向である。ソニーとスウェーデンのエリクソンは2011年10月27日に、携帯電話事業会社のソニー・エリクソンをソニーの100%の子会社とすると発表した。

エリクソンが保有するソニー・エリクソンの株式を完全取得し、ソニーの製品群の中にソニー・エリクソンのスマートフォンを迅速に組み込んでいく。買収額は10億5000万ユーロ(日本円で約1115億円)で、2012年1月を目途に実行する。2001年に発足した合弁事業は、10年で発展的に解消することになった(関連記事:ソニー、ソニエリ株を買い取り完全子会社化へソニーとエリクソンの「ハッピーエンディング」 - 「JV解消」への反応)。

日本のユーザーはスマホを突出して活用?

スマートフォンにまつわる調査結果を2本ご紹介しよう。

グーグルは、IPSOS、モバイルマーケティング協会(MMA)と協力して、スマートフォンに関する調査を行い、その結果を公表している。それによると、日本のスマートフォンユーザーは、調査対象の30カ国の中で最も多い平均45個のアプリをインストールしているという。日本のスマートフォンユーザーの45%はスマートフォンで商品を購入したことがあり、この数値は米英独の約2倍にもなるという。スマートフォン利用者は有効にその機能を活用していると言えそうだ。

ただし、この調査では日本のスマートフォン普及率は6%となっており、英米や香港など30%を超える国や地域が多くある中で逆に極めて低い数値を示している。2011年3月〜7月に実施した調査としては、実感として低い普及率の数値であることも追記しておきたい
(関連記事:日本のスマホユーザーは世界で一番「アプリ好き」--グーグルなどの調査)。

というのも、こうした調査結果もあるからだ。MM総研が発表した2011年度上期(2011年4月〜9月)の国内携帯電話端末の出荷状況の調査結果では、総出荷台数は2028万台で、そのうちスマートフォンが1004万台と約5割を占める結果となった。スマートフォンのOS別で見ると、Androidが799万台で全体の79.6%を占めた。アップルのiOSは18.7%と、その存在感に比べて出荷台数シェアは小さい結果となった。スマートフォンのメーカー別シェアを見ると、1位はシャープ(22.7%)だった。

携帯電話の総契約数は1億2300万契約超なので、1000万台の出荷だけでも1割近い普及率になる。それ以前の累積も考えると3月〜7月時点でもグーグル調査の普及率6%は低いと感じさせられる(関連記事:2011年度上期のスマホ出荷は1000万台超、Androidが8割--MM総研)。

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NICTが地域分散無線ネットをデモ

201110311200-2.jpg独立行政法人情報通信研究機構(NICT)は、東京の小金井公園にて開催された平成23年度東京都・小平市・西東京市・武蔵野市・小金井市合同総合防災訓練で「地域分散無線ネットワーク(NerveNet: ナーブネット)」のデモを実施した。NerveNetは、基地局同士が自動的に相互に無線接続することによって構築される無線ネットワーク。既存の携帯網や電話網が使えなくなくなった時に、小型のポータブル基地局とアンテナを迅速に配置して短時間(数時間〜24時間以内)に地域内を結ぶWi-Fiネットワークを構築し、通信網を確保する(関連記事:NICT、分散型地域ネットワーク「NerveNet」のデモを実施)。

Wi-Fiではもう1つトピックがあった。ソフトバンクモバイルは、東京メトロのほとんどの駅の構内で携帯電話やスマートフォンを対象とした公衆無線LANサービス「ソフトバンクWi-Fiスポット」の提供を開始すると発表した。11月1日からサービスを提供する。サービスを提供するのは、東京メトロの地下鉄駅のうち、相互乗り入れ駅である日比谷線北千住駅、有楽町線和光市駅、南北線目黒駅、副都心線渋谷駅の構内を除く各駅。地下を移動する際に通信がしやすくなる可能性に期待したい(関連記事:ソフトバンク、11月1日から東京メトロ駅をWi-Fiスポットに)。

KDDI、スマートフォン全方位戦略

201110311200-3.jpgiPhoneを発売してAndroidからWindowis Phone、iPhoneと全方位外交を始めたKDDI。「Android au」はどこへ?と言う勢いでiPhoneの販売に力を入れているようだ。KDDIは、「iPhone 4S」の販売を、10月28日に全国のすべてのauショップに拡大した。iPhone 4Sの発売からKDDIでは販売店舗を順次拡大させてきたが、28日以降は全国に2615あるすべてのauショップで取り扱いを開始した。筆者の住まいにも、近隣のauショップから「待ち焦がれていたあのスマートフォン」の販売開始のリーフレットがポストインされており、注目の商材を手に入れたことによる商機をつかもうとの狙いが伝わってくる(関連記事:KDDI、iPhone 4Sの販売を10月28日にauショップ全店へ拡大)。

一方で、遅れていたWindows Phone IS12Tの「〜@ezweb.ne.jp」アドレスによるEメール対応もアナウンス。製品の発表当初は10月上旬に対応するとしていたが、10月27日の対応開始になった。このアプリはEメールを、30分ごとにメールサーバーを確認して自動受信する(関連記事:KDDI、Windows Phone IS12Tの「〜@ezweb.ne.jp」Eメール対応を開始)。深い意味はないのだろうが、iPhone発売の後塵を拝するようなタイミングになってしまったのが端末同士の力関係を示しているようにも見える。

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スマートテレビ、ATOK、法人向けセキュリティーなど

201110311200-4.jpgこのほか、第43週のトピックをおさらいしておこう。テレビに関連するニュースが2本あった。ソニーは、同社の液晶テレビ「ブラビア」(BRAVIA)とソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション3」(PS3)が、動画配信サービスの「Hulu」に対応すると発表した。Huluはハリウッド映画や海外のドラマなどの動画コンテンツを、月額1480円の定額で楽しめる動画配信サービス。PS3は10月25日に対応を開始、BRAVIAは翌10月26日に対応した(関連記事:BRAVIAとPS3、動画配信サービス「Hulu」への対応を開始)。

もう1つは、インターネット家電ベンチャーのガラポンの話題。同社が提供するテレビ録画機「ガラポンTV」に録画したコンテンツを、Android端末で視聴するためのアプリの提供を開始したと発表した。アプリの名称も同じく「ガラポンTV」で、Androidマーケットから無償でダウンロードできる。ガラポンTVは、最大7チャンネルのワンセグ番組を、24時間60日間(2TBのハードディスク装着時)にわたり録画できるテレビ録画機である(関連記事:24時間60日テレビ録画機のガラポン、Android端末からアプリで視聴可能に)。

201110311200-5.jpgAndroid端末での日本語入力もパソコンと一緒に。ジャストシステムは、月額300円で日本語入力システム「ATOK」を複数の機器で利用できる「ATOK Passport」を11月8日に提供する。ATOK Passportは、WindowsおよびMacintoshをOSに採用するパソコンと、AndroidをOSに採用するモバイル機器で、合計10台まで利用できる。パソコンとモバイル端末の両方で、統一された操作感のATOKを利用できるようになり、ATOKファンには便利なサービスになりそうだ(関連記事:ジャストシステム、Android、Windows、Macで共通して使える月額300円のATOK)。

最後に法人向けのニュース。ジュニパーネットワークスは、企業ネットワークなどに各種の端末が簡単につながることをコンセプトとした「シンプル・コネクト・ネットワーク」を実現する製品群を発表した。製品群には、イーサネットスイッチ、無線LANコントローラと、企業ネットワークなどでのスマートフォン利用に必要となるモバイルセキュリティー機能が含まれる。その構成要素となる「Junos Pulseモバイル・セキュリティ・スイート」は、モバイル端末に向けてネットワークへのセキュアなアクセス、マルウエア対策、データ盗難対策、リモート管理機能を提供する(関連記事:ジュニパー、スマホ向けのセキュリティー機能を備えるネットワーク製品群)。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。