[2012年第40週]ソフトバンクがイー・アクセス買収、ひかりTVが音楽など配信、CEATEC開催
2012.10.09
Updated by Naohisa Iwamoto on October 9, 2012, 12:00 pm JST
2012.10.09
Updated by Naohisa Iwamoto on October 9, 2012, 12:00 pm JST
2012年第40週の週明けに駆け巡ったのが、ソフトバンクによるイー・アクセスの完全子会社化のニュースだった。iPhone 5のテザリング解禁で、さらなる周波数帯を確保したいソフトバンクにとって、既存の事業者を取り込むのが最短の道筋だったと言えそうだ。
それは2012年10月1日のこと。ソフトバンクとイー・アクセスは、イー・アクセスをソフトバンクの完全子会社とする株式交換契約を締結したと発表した。年内の完全子会社化を目標とする。ソフトバンクモバイル(以下SBM)は従来からMVNOの形でイー・アクセスのネットワークを利用したサービスを提供してきたが、子会社化によりイー・アクセスの1.7GHz帯(BAND 3)のLTEサービスを自社ネットワークに統合する。また、SBMの2.1GHz帯、900MHz帯のネットワークをイー・モバイルでも利用できるようになる(関連記事:ソフトバンク、イー・アクセスを完全子会社化、iPhone 5の1.7GHz帯LTEは2013年春から)。
この発表を受けて、ソフトバンクモバイルは、iPhone 5などの4G/LTE対応スマートフォンをモバイルルーターのように利用できるテザリングオプションの開始を前倒しするとアナウンスしている。当初の2013年1月15日の予定を1カ月前倒しして、2012年12月15日から提供する(報道発表資料:「テザリングオプション」の提供開始日変更について
)。
一方のKDDIは、2012年度の上期の総括と下期方針を公表している。それによると、iPhone 5の発売と4G LTEサービスを開始した9月は、MNP純増総数が9万5000回線に上り、MNP純増1位も12カ月連続となる。9月21日にサービスを開始した「4G LTE」の利用加速もあり、新規契約に占めるMNPの割合が過去最高になった。さらに、ソフトバンクモバイルからのMNP純増は前月比で約3倍となったという(関連記事:KDDI、4G LTE効果で9月のMNP純増が9万5000回線、ソフトバンクからMNP純増は3倍に)。
こうした動きの中、電気通信事業者協会(TCA)による2012年9月の携帯電話・PHSなどの契約数を発表した。数値を公表している事業者で純増数がもっとも多かったのはソフトバンクモバイルの32万200件。KDDIが22万4900件、NTTドコモが15万8600件となった。ソフトバンクモバイルはUQコミュニケーションズから純増トップの座を取り返した。ブロードバンドワイヤレスアクセス(BWA)は、総契約数が400万2900件(前月比7.8%増)と400万件の大台に到達した(関連記事:9月の契約数、BWAが累計契約数400万件を超える)。
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ネットワークに関連した新しいサービスが多く発表されたのもこの週の特色だ。まずは、ひかりTVのアナウンスから紹介していく。ひかりTVは、年内に音楽配信サービスと電子書籍サービスを開始する。電子書籍サービス「ひかりTVブック」は11月中旬からサービス始め、約3万冊からスタートして順次5万冊まで拡大する。iOS・Androidのスマートフォン、タブレット、PC(Windows)、ひかりTV対応チューナーとなる。音楽配信サービス「ひかりTVミュージック」は12月から順次提供の予定。定額制で邦楽・洋楽合わせて数百万曲以上を目標に聞き放題でストリーミング配信する。当初はスマートフォン(iOS、Android)でサービスを開始し、年度内にPC、ひかりTV対応チューナーにも対応する(関連記事:ひかりTVが電子書籍サービスと音楽配信サービスを年内に開始)。
オンラインとオフラインを連携させるO2Oのサービスに関する発表もあった。阪急阪神グループ各社は、NTTグループ各社と博報堂の協力で、モバイル会員向けO2Oサービス「SMART STACIA(スマート スタシア)」の提供を開始した。また、梅田、西宮の主要商業施設で、SMART STACIA会員対象のO2Oマーケティングに関する共同トライアルを実施する。SMART STACIA会員向けサービスとして、阪急阪神沿線のショッピングセンターのお得情報のほか、阪急阪神沿線各店で利用できる電子クーポンや、SMART STACIAポイントサービスを提供する(関連記事:阪急阪神グループ、O2OサービスとO2Oマーケティングに関する共同トライアルを開始)。
iPhoneへ対応機種を拡大して利用者増を目指す。KDDIとナビタイムジャパンは、各種のナビゲーションサービスをアップルのiOSに対応させる検討を開始した。10月中旬以降をめどに対応を開始する。iPhoneへの対応を進めるのは、歩行者ナビゲーションサービスの「auナビウォーク」と、同乗者向けカーナビゲーションサービスの「au助手席ナビ」の2つ。いずれもこれまで、Androidスマートフォン向けに提供していた。これらのサービスのiPhoneアプリを提供し、iPhoneでも利用できるようにする(関連記事:KDDIとナビタイム、10月中旬以降にナビアプリをiPhone対応へ)。
楽天グループのフュージョン・コミュニケーションズと丸紅無線通信は、LTEに対応したデータ通信サービス「楽天ブロードバンドLTE」の提供を開始する。ネットワークはNTTドコモのLTE網を利用する。丸紅無線通信は丸紅と日本通信の合弁会社で、NTTドコモのMVNOとしてネットワークサービスを提供する。料金プランは月額980円の「楽天ブロードバンド LTE 980円エントリープラン」と、月額2980円の「楽天ブロードバンド LTE 2980円アクティブプラン」の2種類だ(関連記事:フュージョン・コミュニケーションズ、月額980円から使える「楽天ブロードバンドLTE」の提供を開始)。
海外での事業展開の動きもあった。NTTドコモのグアム、サイパンにおける100%子会社であるドコモパシフィックは、グアムでLTEサービスを開始した。ドコモパシフィックでは、グアムの高トラフィック地域からLTEサービスを開始する。具体的には、タモン、タムニン、デデド、シナハニャおよびアガニャの一部で、今後は順次サービスエリアを拡大する。NTTドコモによれば、ドコモの海外子会社によるLTEサービスの提供は、今回が初めてという(関連記事:ドコモ子会社、グアムでLTEサービスを10月4日に開始)。
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2012年10月2日〜6日、千葉市美浜区の幕張メッセで「CEATEC JAPAN 2012」が開催された。携帯電話事業者としては、NTTドコモとKDDIの2キャリアーが出展して時代の今を映す製品やサービスを展示した。
NTTドコモは、10月11日に予定されている2012冬モデルのラインアップを先行して出展した。注目はサムスン電子の「GALAXY Note II SC-02E」とソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia AX SO-01E」だ。KDDIのメインのステージでは、ケーブルテレビ向けのセットトップボックス「Smart TV Box」のデモが行われた(関連記事:[CEATEC 2012]ドコモはXperia AXやGALAXY Note IIを先行展示、KDDIはSmart TV Boxで3M戦略を具現化)。
NTTドコモ、KDDIの両社の研究開発に関連する展示も興味深かった。NTTドコモはウエアラブル端末の開発に向けた「ハンズフリービデオフォン」や、スマートフォンの新しいUIを展示。KDDIは高齢者などで聴力が弱くなった人に向けて補聴機能を強化した携帯電話や手のひらの模様を使った認証システムを展示した(関連記事:[CEATEC 2012]手ぶらでどこでもテレビ電話、手のひらで認証--新しい研究開発の成果が並ぶ)。
CEATEC JAPAN 2012では、Windows 8タブレットの参考出展や新しい液晶パネルのデモなど、今後のコンシューマ向け製品の指針を示す展示も多くあった。東芝は、「12.5型ウルトラブック」を参考出展。富士通ブースにもWindows 8を搭載したタブレット端末の参考出展があった。また、シャープのブースには、酸化物半導体(IGZO)を採用した液晶パネルや、高精細なスマートフォン向け5チフルHD液晶パネルの展示もあった(関連記事:[CEATEC 2012]Windows 8搭載モバイルマシンやシャープの新液晶など、今後を占う製品や技術が並ぶ)。
また、モバイル機器の電源確保に関するソリューションや、ヘルスケアなどから広がるコンシューマも巻き込んだM2M(参考情報)のソリューションのデモや展示が注目されていた。スマートフォンを始めとして電源確保が重要なモバイル機器が増え、燃料電池のような次世代の電源に加え、置くだけのタイプの充電方式でも新しい提案があった。このほか、ヘルスケアとITCとの連携では数多くの展示があったほか、低価格な機器をスマートフォン連携できるソリューションの展示もあった(関連記事:[CEATEC 2012]モバイル機器の電源確保やヘルスケアなどのM2M関連のソリューションが続々)。
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