[2012年第44週]ソフトバンクは増収増益、顧客満足度はKDDI、ドコモはMSとタッグ
2012.11.05
Updated by Naohisa Iwamoto on November 5, 2012, 12:04 pm JST
2012.11.05
Updated by Naohisa Iwamoto on November 5, 2012, 12:04 pm JST
10月末から11月にかけてのこの1週間、キャリアを中心としたニュースが数多く飛び込んできた。ソフトバンクの決算、ドコモとマイクロソフトの協業といった大型のニュースだけでなく、UQコミュニケーションズがTD-LTE互換のWiMAX Release 2.1の採用を検討するといった今後の事業の枠組みをにらんだニュースもあった。
まずソフトバンクの2012年度第2四半期の決算発表のニュースから紹介する。ソフトバンクの上期(2012年4月〜9月)の売上高は1兆5861億円で前期比3%の増収、営業利益は4027億円で前期比11%の増益となった。大手3社のうちNTTドコモとKDDIは上期が減益決算であり、ソフトバンクだけが増益の決算という結果だ。ソフトバンクでは、同社の営業利益率が25%に上り、NTTドコモの21%、KDDIの13%(ソフトバンク調べ)を抜いて営業利益率でトップに立ったことをアピール。さらに、AT&Tやベライゾン・ワイヤレスの資料と比較してもトップで「日米No.1」の営業利益を達成しているとする。2012年度の通浮きでは営業利益が7000億円を上回り、2016年には国内で1兆円の連結営業利益を得るとする見通しも示した(発表資料:2013年3月期 第2四半期 決算説明会 PDF)。
法人向けソリューションでビッグネーム2社がタッグを組む。日本マイクロソフトとNTTドコモは、法人向けタブレット市場の開拓を共同で推進し、協業することに合意した。協業の内容は、Xiと組み合わせたWindows 8端末の共同顧客開拓と営業展開、共同プロモーションによる需要喚起、パートナーソリューションの共同開拓と連携。リーディングカンパニーどうしの提携により、新しいタブレットのマーケットを牽引する目論見である。タブレットとして使えるXi搭載のWindows 8端末については、現在、パナソニックの「Let's note CF-AX2」があるが、今後は富士通、NEC、HP、東芝などから発売予定があるとする(関連記事:日本マイクロソフトとドコモ、法人向けタブレット市場での協業に合意)。
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市場調査の結果を2つ紹介する。1つは、CS(顧客満足度)に関する調査などを手がけるJ.D. パワー アジア・パシフィック(J.D. パワー)が発表した、2012年の日本における携帯電話サービス顧客満足度調査の結果だ。その結果を見ると、この1年間でスマートフォン利用率は15%から30%へと倍増している。特に10〜30代では前年の20%から41%まで拡大。次いで40〜50代では11%から23%、60代でも5%から9%とへとすべての年齢層で利用率が増加している。
一方で、業界全体での顧客満足度は前年から10ポイントと大幅に低下した。通信品質・エリア」と「アフターサービス対応」の領域で低下幅が大きく、具体的には「動作が遅くなったり止まったりする」「電池が持たない」といった不満が多い。また、50代、60代では「使いたい機能が見つけにくい」、60代では基本機能に関しても操作がわかりにくいという不満が多く挙げられた。
携帯電話のキャリア別に見ると、2012年はKDDI(au)が顧客満足度のトップ(578ポイント)を獲得した。前年2位だったKDDIは「各種費用」と「提供サービス」の領域で最も高い評価を得た。2位はNTTドコモ(569ポイント)、3位はソフトバンクモバイル(545ポイント)だった(報道発表資料:2012年日本携帯電話サービス顧客満足度調査)
もう1つは、MMD研究所(モバイルマーケティングデータ研究所)によるタブレット端末の所有率と購入意識調査の結果だ。調査結果によると、タブレット端末の所有者は有効回答の16%、2012年内にタブレット端末の購入予定があるか、検討しているという回答は30.6%に上った。「購入予定がある」「購入を検討している」との回答者を対象に、購入を検討しているタブレット端末を尋ねたところ、「iPad Wi-Fiモデル」が30.9%で1位、次いで2位が「iPad mini Wi-Fiモデル」(27.6%)、3位が「Nexus 7」(15.6%)だった(関連記事:タブレット端末の年内購入予定は3割に上る--MMD研究所調べ)。
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キャリア関連のニュースで、チェックしておきたいのがUQコミュニケーションズの新規格検討のニュース。UQコミュニケーションズは、業界団体のWiMAX Forumが発表したばかりの新規格「WiMAX Release2.1」をUQ WiMAXの次世代サービス規格として採用する方向で検討に入ると発表した。WiMAX Release2.1は、既存のWiMAX規格との親和性を確保しながら高速化を図るだけでなく、TD-LTEとの互換性を確保することでWiMAXだけでなくTD-LTEも含めたエコシステムの構築をも目指す。既存のWiMAXエリアとWiMAX Release2.1による新しいエリアをシームレスに利用できる次世代WiMAXサービス「WiMAX 2+」(ワイマックスツープラス)の提供の検討にも着手する(関連記事:UQ、TD-LTEとの互換性を確保した「WiMAX Release2.1」の導入へ)。
サービスエリアが広がり便利に。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの携帯電話事業者3社は、名古屋市営地下鉄でのサービスエリアを10月31日に拡大した。すでに一部区間でサービス提供していた東山線のエリアを全区間に拡大するほか、新しく名城線の「市役所駅〜金山駅〜新瑞橋駅」と、桜通線の「中村区役所駅〜御器所駅」の区間でもサービスの提供を開始した(報道発表資料:名古屋市営地下鉄における携帯電話サービスエリア拡大について NTTドコモ発表)。
M2M(参考情報)ビジネスを行う法人向けに、利用しやすい料金体系の新プランが登場した。NTTコミュニケーションズが、モバイル通信サービスの「OCNモバイル」にM2M向けの定額料金プラン「M2M 100k d 3G」を追加した。これはM2M向けの定額料金プランであり、月額840円の定額で送受信最大100kbpsのデータ通信が利用できる。利用するネットワークはNTTドコモの3G(FOMA)で、全国の広いエリアでの利用が可能だ(関連記事:NTTコム、M2M向けに月額840円の定額プランを開始)。
KDDIからサービスや製品など新しい施策が相次ぎ発表された。1つは、KDDIと広告事業などを手がけるmedibaとが共同で、スマートフォン利用者に向けた推奨型広告の提供を開始すること。年齢層や性別などに基づく「統計パターン推奨型広告」と、過去の広告閲覧状況に基づく「閲覧パターン推奨型広告」の2種類。スマートフォンの利用状況などから、適した広告を推奨する形で提供する。広告配信は2012年12月上旬に開始する予定。プライバシーに配慮した仕組みを整えているという(関連記事:KDDI、スマートフォンに向けた推奨型形広告の提供を12月開始)。
2つめは、800MHz帯を利用した下り最大75MbpsのauのLTEサービス「4G LTE」に対応したデータ通信端末2モデルの発表。モバイルWi-Fiルーター「Wi-Fi WALKER LTE」は、バッテリーに3000mAhの大容量タイプを搭載し、4G LTE利用時で9時間超の利用が可能。USBスティック型「USB STICK LTE」は、接続ソフトのインストールなどが不要でパソコンのUSB端子に挿すだけですぐにインターネットにアクセスできる。いずれもグローバルパスポートCDMA、UMTS、GPRSに対応し、海外での利用にも対応する(報道発表資料:800MHz帯の高品質LTEに対応したデータ通信端末の発売について)。
3つめは、「au Wi-Fi SPOT」を快適に利用できるようにするための品質向上施策を実施するとの発表。11月2日に発売した「4G LTE」対応のAndroid搭載スマートフォンに新しく短時間でau Wi-Fi SPOTに接続できる認証方式を採用して実現した。4G LTEに対応したAndroid搭載スマートフォンでは、Wi-Fi接続時の認証にEAP(Extensible Authentication Protocol)認証を導入。これによりau Wi-Fi SPOTのエリアに移動した場合に、LTEまたは3GのネットワークからWi-Fiへの切り替え時間を大幅に短縮できたという(関連記事:KDDI、4G LTEスマートフォンで「au Wi-Fi SPOT」への切り替えを高速化)。
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