Image by Unsplash
July 14, 2026
中村 航 wataru_nakamura
1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。
ドイツのロボット開発企業Neura Roboticsが先ごろ、最大12億ユーロ(約2000億円)のシリーズC資金調達を実施した。出資にはAmazon、NVIDIA、Qualcomm、Bosch、Schaefflerのほか、欧州投資銀行(EIB)などが参加。生成AIに続く次世代市場として注目される「Physical AI(フィジカルAI)」分野で、欧州勢の存在感を高める動きとして注目を集めている。
2019年創業のNeura Roboticsは、協働ロボットやヒューマノイドロボットの開発を手がけるスタートアップだ。同社は単なるロボットメーカーではなく、AIとロボティクスを統合した「Physical AI」プラットフォームの構築を目指している。
その中核となるのが「Neuraverse」と呼ばれるエコシステムだ。ロボットが実世界で得た経験や学習データを共有し、複数のロボットが知識を蓄積できる環境の実現を目指している。生成AIがインターネット上の膨大なデータから学習したように、ロボットが現実世界で得た経験を活用して進化する世界を構想していると言える。
今回の資金調達が注目されるのは、その出資者の顔ぶれにある。AmazonやNVIDIAといったテクノロジー企業に加え、BoschやSchaefflerなど欧州を代表する製造業企業も参加した。
背景にあるのは、AI開発の主戦場がデジタル空間から現実世界へ広がりつつあるという認識だ。生成AIは文章や画像、ソフトウェアコードなどを対象としてきたが、フィジカルAIは工場や物流倉庫、建設現場などで実際に作業を行うロボットの知能化を目指す。そこではAIだけでなく、ロボット工学、センサー、制御技術、デジタルツインなど幅広い産業技術が競争力を左右する。
Neura Roboticsの創業者兼CEOであるDavid Reger氏は、欧州がフィジカルAIとロボティクスの基盤技術を保有する重要性を繰り返し訴えている。生成AIでは米国企業や中国企業が先行した一方、製造業や産業機器の分野では欧州に強固な産業基盤が残されているためだ。
この視点は日本にも当てはまる。日本にはファナック、安川電機、キーエンスをはじめ、世界市場で高い競争力を持つ製造業企業が数多く存在する。フィジカルAIを巡る競争は、単なるAI開発競争ではなく、AIと製造業の融合をめぐる競争でもある。
Neura Roboticsへの大型投資は、次世代AIの主導権争いがソフトウェアだけでなく、ロボットや製造現場を含む実世界へと広がり始めたことを象徴する出来事と言えそうだ。
参照
Nvidia, Amazon Back Neura Robotics’ $1.4 Billion Fundraise – WSJ
German start-up Neura raises $1.4bn in humanoid robot push
Germany’s NEURA Robotics raises up to €1.2 billion in Series C round to build Physical AI from Europe | EU-Startups