September 1, 2026
中村 航 wataru_nakamura
1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。
ロボットが踊り、走り、荷物を運ぶ動画は、もはや珍しくなくなった。次に問われるのは、それを安定して作り、売り、現場で使える製品にできるかだ。中国・杭州のUnitree Roboticsの上場に向けた動きは、フィジカルAIが量産と商用展開の段階へ移り始めたことを象徴するニュースとして注目されている。
Unitreeは、四足歩行ロボットとヒューマノイドロボットを手がける中国のロボット企業だ。もともとは低価格で購入できる四足歩行ロボット、いわゆる「ロボット犬」で存在感を高めてきた。近年はヒューマノイドにも力を入れており、公式サイトでは人型ロボット「G1」を1万3500ドル(約220万円)から販売している。比較的手の届きやすい価格を打ち出し、ヒューマノイドをより広い層が導入を検討できる製品へ近づけてきたことが、同社の特徴だ。
Unitreeは2026年8月19日、上海証券取引所のハイテク企業向け市場「科創板」、いわゆるSTAR Marketに上場した。約4045万株の新株を1株150.80元で発行し、当初目標の42億200万元を上回る約61億元を調達した。IPO価格に基づく時価総額は約610億元に達した。Unitreeは、中国本土に上場した初の主要ヒューマノイドロボットメーカーとなった。
重要なのは、この上場の意味が一社の資金調達にとどまらないことだ。China Dailyは専門家の見方として、UnitreeのIPOが、中国のフィジカルAI産業の評価基準を変える可能性があると伝えている。これまでのように、目を引く試作機や技術デモで期待を集める企業と、実際に製品を量産できる企業との違いが、よりはっきりしてくるというわけだ。
実際、Unitreeが調達した資金の使い道も、その方向を示している。資金は、ロボット本体やAIモデルの研究開発、新製品開発、製造拠点の建設に充てられる見込みだ。計画されている製造拠点の生産能力は、年間7万5000台のヒューマノイドロボットと11万5000台の四足歩行ロボットに及ぶという。フィジカルAIは、ソフトウェアだけでは完結しない。AIを載せる身体を作り続けるには、部品、制御技術、製造設備まで含めた産業基盤が必要になる。
ただし、ヒューマノイド市場はまだ初期段階にある。実際にどこまで商業利用が広がるかは見通しにくく、期待先行の面もある。それでもUnitreeの上場は、フィジカルAIが「見せる技術」から「作って売る産業」へ移ろうとしていることを示している。
(中村 航/翻訳家)
参照
Chinese humanoid robot maker Unitree prices IPO at $9 billion valuation
Chinese humanoid robot maker surges 600% in trading debut
China Daily: Unitree set to launch IPO in Shanghai
Xinhua: Unitree Robotics clears STAR Market listing review
South China Morning Post: China’s Unitree Robotics rides humanoid tide as it targets US$610m IPO
Unitree Robotics: G1