August 25, 2026
中村 航 wataru_nakamura
1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。
家庭用ロボットに何をしてほしいかと聞かれたら、多くの人はまず家事を思い浮かべるだろう。料理、掃除、片づけ、買い物の手伝い。だが、そうした万能ロボットへの道は、もっと地味な作業から始まるのかもしれない。洗濯物をたたむことだ。
Business Insiderは2026年8月9日、Figure AI、Sunday Robotics、Weave Roboticsなどの家庭用ロボット企業が、洗濯物たたみに注目していると報じた。洗濯物たたみは人間にとっては退屈な作業を繰り返す家事だが、ロボットにとってはかなり難しい作業だからだ。
服やタオルは、金属部品や箱のように形が決まっていない。持ち上げれば垂れ、押せばしわになり、つかむ場所を少し間違えるだけで形が変わる。Figure AIも、視覚、言語、動作を結びつけるAIモデル「Helix」に、洗濯物たたみを学習させた事例を紹介している。同社によれば、布やタオルは固定された形状を持たず、しわや絡まりも起きるため、ロボットにとって難度の高い作業だという。
一方で、洗濯物の取り扱いは家庭用ロボットの入口としては都合がいい。落としても割れない。失敗しても人に危害を加えにくい。しかも、ほとんどの家庭にある作業で、多くの人が面倒だと感じている。つまり、十分に難しく、しかし失敗のリスクは比較的小さい。フィジカルAIを家庭に入れる最初のタスクとして、ちょうどよい実験場になっている。
Weave Roboticsは、すでに洗濯物たたみに特化した据え置き型ロボットの「Isaac 0」をカリフォルニアで出荷している。同社によれば、Isaac 0はこれまでに2000時間以上稼働し、毎週450kgを超える洗濯物をたたんでいるという。さらに同社は、2026年秋に家庭用ロボット「Isaac 1」の出荷を始める予定だ。Isaac 1は二足歩行型ではなく、車輪ベースの家庭向けロボットである。
Sunday Roboticsの「Memo」も、靴下をたたむ、食器を扱う、エスプレッソを淹れるといった家庭内作業を学習している。同社は専用の「Skill Capture Glove」を使い、人間の動作データを集める仕組みも掲げている。
家庭は、工場より簡単な現場ではない。工場や倉庫は、作業環境をある程度整えられる。だが家庭は散らかっており、家具の配置も、服の種類も、家族の動きもそれぞれ違う。ロボットにとっては、家庭こそ予測不能な環境である。
日本にも、かつて洗濯物たたみロボット「Laundroid(ランドロイド)」があった。大きな期待を集めたが、高コストや信頼性の課題を乗り越えられず、発売には至らなかった。今回の新しい波は、AIモデル、低価格化したハードウェア、実世界データの収集によって、その難題に再び挑もうとしている。
洗濯物をたたむロボットは、見た目には地味かもしれない。だが、柔らかい物体を扱い、家庭ごとの違いに適応し、失敗から学ぶという意味では、フィジカルAIの本質的な課題が詰まっている。
(中村 航/翻訳家)
参照:
Business Insider: Silicon Valley Is Training Robots to Do Your Laundry
Weave Robotics
Figure AI: Helix Learns to Fold Laundry
Sunday Robotics
TechRadar: Weave Robotics Isaac 1