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村上 陽一郎 youichirou_murakami

1936年東京生まれ。専攻は科学史・科学哲学・科学社会学。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京大学先端科学技術研究センター長、東洋英和女学院大学学長などを経て、現在、東京大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授、豊田工業大学次世代文明センター長、一般財団法人日本アスペン研究所副理事長。2015年に瑞宝中綬章受章。膨大な数の著書・訳書・編著を誇るが、代表的なものに『科学者とは何か』『文明のなかの科学』『あらためて教養とは』『安全学』、シャルガフ『ヘラクレイトスの火』、ファイヤアーベント『知についての三つの対話』、フラー『知識人として生きる』『伊東俊太郎著作集』『大森荘蔵著作集』などがある。幼少より能楽の訓練を受ける一方、チェロのアマチュア演奏家としても活動中。

科学の外にある「生」と「死」――生と死の間で(7)

「物」と「もの」 科学というのは、基本的に唯物論です。その知的系譜は、歴史的に見れば、デカルトの所論に行き着くと私は考えています。急いで付け加えますが、勿論デカルトが「唯物論者」だというわけではありません。デカルトの所論 […]

2026.06.22

母体保護法が抱える問題――生と死の間で(6)

胎児は「人間」ではない 前項で生者と死者との関係に関して、幾つかの論点を指摘しました。本稿では、「ヒト」の定義に絡む生と死を考えてみたいと思います。と言っても、生物学的な「ヒト」の定義は「ホモ・サピエンス」という種の定義 […]

2026.06.08

生者と死者の交わり、仏教とキリスト教――生と死の間で(5)

彼の世と此の世とを繋いで 人並より少し長く生きてきた人間(令和八年の日本人男性の平均寿命は八十一歳強となっている、ちなみに女性は八十七歳強で、この数字は世界一とされています)が、その生涯のなかで死と遭遇した事例を、いくつ […]

2026.05.25

魂の行方、神の記帳にその名を留めて--生と死の間で(4)

三つの死、涙に暮れることなく 九十年近く生きていると、色々な死に出会ってきました。これまでにも書いてきたことと重なるところもありますが、その中の幾つかを振り返ってみることにします。 生まれて初めて出会った死は、第二項で触 […]

2026.05.11

キリスト教信仰との出会い--生と死の間で(3)

私立小学校に通って、キリスト教に馴染む これまでの記述のように、私は、小学低学年のとき、そして高校三年から浪人生活を経て大学生になる頃の二回、死の淵を見るような経験をしました。しかし、そこでも書きましたように、一つには若 […]

2026.04.20

父の死、十代で覚悟した自らの死--生と死の間で(2)

公職追放、卵でいのちを繫ぐ 敗戦は先ず何を齎したか。海軍軍医大佐だった父親は、当初厚生省(現厚生労働省)の公衆衛生局勤務に配置換えになりました。つまり差し当たっての職業は確保されたのです。しかし、それは束の間でした。敗戦 […]

2026.04.06

小学校四年、九歳の敗戦体験--生と死の間で(1)

「重陽の節句」に生まれて 生まれたのは、当時両親が借りていた東京、上原の借家、つまり自宅だったとのことです。「院内誕生」などということがおよそ考えられない時代です。昭和十一(一九三六)年まだ夏の厳しい暑さが残る九月七日、 […]

2026.03.23

スーパー書評「教義の基本を為す聖典」
 『創世記』関根正雄訳 岩波文庫

世界宗教と言われるユダヤ教、イスラム教、キリスト教が支配する地域において、信じる、信じないに関わらず、文化的伝統として誰もが前提としているこの物語を知ることは、それらの地域に生まれた文化遺産を理解する上で、決定的に重要なポイントとなる。その点で、宗教を離れても、文化の基盤となるエピソードが、様々に散りばめられている本書に接しておくことは、無駄ではない。

2025.08.18

スーパー書評「私学と平等への想い」
『学問のすすめ』福沢諭吉(岩波文庫)

書物『学問のすすめ』は、冒頭の最も著名な「初編」に始まり、第十七編「人望論」までを合本とし、さらに現在の岩波文庫本は、広く読者を獲得したこの自著に対して、後年福澤が書いた短い文章(『福澤全集』に収録)を「付録」として加え、小泉信三の「解題」、さらに校訂者としての昆野和七の「後記」を載せている。

2025.08.13

スーパー書評「クーンが提示したパラダイムという基礎概念」
『科学革命の構造』(中山茂訳、みすず書房、青木薫訳『科学革命の構造【新版】イアン・ハッキング序説』みすず書房)

今では、政治家や文筆業の方々まで、日常的に使われる表現となった「パラダイム」<paradigm=英語>という語を、かくも流行らせた原点がこの書にあります。もともとは、古代ギリシャ語ですが、<para>つまり「一緒に」、「並んで」、<digm>「見せる」という熟語で、最も簡潔には「範例」という訳語が使われます。「模範」という漢語が運ぶ「優れた」、「立派な」というニュアンスはなく、「一つのグループに属するものを示す実例」といった感じの語です。

2025.07.12

スーパー書評「デカルトのJe pense, donc je suisに込められたもの」
『方法序説』落合太郎訳 岩波文庫(旧版)、谷川多佳子訳(同新版、ワイド版)/『方法叙説』小泉義之訳、講談社学術文庫

この書は、孰れ明らかにするように、内容からすれば、デカルトが自分の哲学体系を作り上げるに当たっての出発点を説くもの、また書物の体裁から言っても、実はこの書は光学、気象学、幾何学などに関する詳細な文章が大部分を占め、通常「方法序説」と言われる部分は、此の大著(原著では約500ページ)の初めの極短い部分だけを指すものです。

2025.06.30

スーパー書評「藤沢周平が描く人間の暗部」
デビュー当時の鬱屈はなぜか

藤沢は、昭和24年に湯田川中学(現在の鶴岡市)で、国語と社会の教師としての経歴を始めます。生徒たちからも慕われ(この時の同窓生たちは長く藤沢を囲む会を続けたこともよく知られています)、既にこの段階で、同人誌に参加していますが、間もなく、肺結核が発見され、勤めを辞めて、東京の西郊の医療機関でかなり大きな手術を経験し、その後暫くは術後の療養のための五年ほどの時間を、上京してくれた母親とともに、然るべき施設で過ごします。

2025.06.17