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村上 陽一郎 youichirou_murakami

1936年東京生まれ。専攻は科学史・科学哲学・科学社会学。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京大学先端科学技術研究センター長、東洋英和女学院大学学長などを経て、現在、東京大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授、豊田工業大学次世代文明センター長、一般財団法人日本アスペン研究所副理事長。2015年に瑞宝中綬章受章。膨大な数の著書・訳書・編著を誇るが、代表的なものに『科学者とは何か』『文明のなかの科学』『あらためて教養とは』『安全学』、シャルガフ『ヘラクレイトスの火』、ファイヤアーベント『知についての三つの対話』、フラー『知識人として生きる』『伊東俊太郎著作集』『大森荘蔵著作集』などがある。幼少より能楽の訓練を受ける一方、チェロのアマチュア演奏家としても活動中。

エリートと教養 3 <culture>と「文化」

文化という言葉は、だれでも簡単に使います。もっとも、私たち日本語圏での「文化」の使い方には、幾つか違った流儀があるようです。最も日常的には、「文化包丁」とか「文化住宅」のように、「機能が進んでいる」状態を指す方法です。

2019.06.03

エリートと教養 2 大正教養主義と藤村操

前回はエリートの原点とでも言うべき論点を考えてみました。今回は、教養ということになりますが、これは一筋縄ではいかない。そもそも「教養」という熟語は、漢語としては已に『後漢書』に現れると言いますが、文字通り「教え育てる」ことの意でありました。

2019.04.03

エリートと教養 1 <Noblesse oblige>高貴なる者の義務

エリートも教養も、日本社会では揶揄や蔑視のニュアンス抜きで語ることのできない概念と言えます。一人称の文章、つまり「私は、」に導かれる肯定的文章の用言に、「エリート」が入ったり、「教養人」が入ったりすれば、これは、噴飯ものだろうし、二・三人称で同じ形容を試みたとしても、何がなし、棘が含まれているようで、使うのに躊躇いがあり、言った後では、慌てて、貶める意味ではないことの弁解を付け加えたりする習慣ができてしまっているように感じます。

2019.03.07

スーパー書評「漱石で、できている」1
夏目漱石『虞美人草』 大人の世界を知る一歩

最初の試みとして、何を取り上げようか、かなり迷ったのですが、結局漱石の、しかも表題作に落ち着きました。繰り返し、色々な機会に触れてきましたように、私という人間の相当部分は、漱石によって出来上がっていると言えます。

2019.02.25