capture image: Otto – Self-Driving Trucks(Otto)
長距離トラックを自動運転車に - 注目を集める米ベンチャーの思惑
2016.05.18
Updated by WirelessWire News編集部 on May 18, 2016, 17:34 pm JST
capture image: Otto – Self-Driving Trucks(Otto)
2016.05.18
Updated by WirelessWire News編集部 on May 18, 2016, 17:34 pm JST
今年はじめに設立されたオットー(Otto)という自動運転車関連のベンチャー企業のことが、米国時間17日に複数の媒体でいっせいに採り上げられている。
https://youtu.be/bK76W1kH4jA
グーグル(Google)で自動運転車技術や「Google Maps」の開発に携わった技術者らが共同創業者であることや、アップル(Apple)、テスラ(Tesla Motor)、旧ノキアのHERE、GMが買収したクルーズ・オートメーション(Cruise Automation)などの出身者がすでに40名も集まっているといったことがどの記事にも書かれてある。また同社が、従来型の長距離用大型トラックに後付けする自動走行用のキット--レーダー、ライダー(LiDAR)、カメラセンサー、それにデータを処理するコンピューターなどーーを開発しようとしていることも触れられている。ボルボ(Volvo)やダイムラー(Daimler)といった欧州のトラックメーカーがすでに公道実験まで進んでいることや、クルーズ・オートメーションがアウディ車への搭載を前提に同様の後付けキットを開発していたことを知っている読者には、オットーの試みはとくに意外ではないかもしれない。
それでも、同社がMediumで公開したブログ記事や、共同創業者リオール・ロン(Lior Ron)という人物にインタビューしたBackchannelの記事には、長距離トラックのキットを開発することにした同社の狙いなど興味深い点がいくつか記されている。以下に、各記事のなかで目についた点を抜き書きしてみる。
1)約430万台の潜在市場
現在米国を走行している大型トラック(トレーラー)の数は推定430万台で、貨物輸送量全体の70%をトラックが処理している。大型トラックの価格は1台10万ドル〜30万ドル。また約半数のトラックドライバーが年間200日以上も移動先で睡眠をとっているという。
なお、NYTimes記事には「全米で300万人以上のトラックドライバーがいるが、そのうち運輸会社に雇用されているのは約15人に1人」という米国トラック協会のデータや、走行距離で全体の5.6%に過ぎないトラックがハイウェイでの交通事故の9.5%を占めているとする米運輸省のデータなども紹介されている。
2)人手不足解消と「24時間稼働し続けるトラック」の実現
米国では現在、ひとりのトラック・ドライバーが1日に運転できる時間が11時間に制限されている。これは運転時間が10時間を超えると事故の確率が大きく増加するというデータに基づくもの。オットーでは「レベル4」の自動運転技術を開発し、ハイウェイ走行中はドライバーが睡眠をとれるようにすることで、トラックの稼働率を常時フル稼働(「24/7」)に持って行くのが目標のひとつ。
なお、上記の時間制限が義務づけられた2013年からの2年間で長距離トラックドライバーの数は約5万人減少し、2020年にはこの人手不足が約15万人まで拡大するとの予想も出されているという。元来がきつい仕事である上に条件も年々厳しくなっているので、なり手の確保も簡単にはいかない、という状況が伝わってくる。
昨年末に出ていたWSJ記事には、アマゾン(Amazon)をはじめとする小売事業者がウェブでの注文に無料配送・翌日配送で対応するようになった影響で、長距離トラック(の輸送)に対するニーズが増加し、通常は1マイルあたり2ドル程度のトラック料金がクリスマス商戦中には同6ドルまで跳ね上がったとする一節や、2人ひと組で運転を交代しながら走り続けられるドライバーのチームに対する需要が高まった結果、数年前には10〜15%程度だった割増し料金が現在では通常の2〜3倍になっているとの一節もある。
3)地域社会への影響も
オットーの話を取り上げたNYTimes記事のなかには、長距離トラックが完全に自動化されると、ドライバーがハイウェイ沿いにある飲食店やガソリンスタンドなどにお金を落とさなくなるため、地方の町が経済的な打撃を被るといった懸念を指摘する声も紹介されている。
NYTimesによると、オットーの共同創業者のうち、アンソニー・レバンドウスキィ(Anthony Levandowski)という人物は、グーグルが自動運転車の開発プロジェクト立ち上げ時に買収した510 Systemsというベンチャーの創業者で、UCバークレー在学中の2004年には自動走行オートバイを開発して米国防総省のコンテストに参加。いっぽう、リオール・ロン氏はイスラエル陸軍諜報部の出身でグーグル在籍時には「Google StreetView」の開発に携わった経歴の持ち主だという。
(レバンドウスキィ氏の2013年UCバークレーの講演)
【参照情報】
・Introducing Otto, the startup rethinking commercial trucking - Otto(Medium)
・The Man Who Built Google’s First Self-Driving Car Is Now a Trucker - Backchannel(Medium)
・Autonomous-Driving Venture Targets Heavy Trucks - WSJ
・Want to Buy a Self-Driving Car? Trucks May Come First - NYTimes
・Google veterans head off on their own to work on self-driving trucks - The Verge
・Trucker Teams Drive to the Rescue of Online Shipping - WSJ
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