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[先週の動き]ケータイメール対応、新端末やサービスの登場--スマートフォンが熱い1週間

2010.08.30

Updated by WirelessWire News編集部 on August 30, 2010, 10:00 am JST

先週の週明け、8月23日は二十四節気では暑さも和らぐ「処暑」。しかし、日本を襲う猛暑はまったく弱まる気配を見せない。この暑さに負けず、続々とニュースが飛び込んできたのが、スマートフォンの話題だ。この1週間は、iPhone/iPadの米アップル勢だけでなく、多くの端末やプラットフォームに関連した話題が続出した。

先週のテレビなどでは、HMVの渋谷店が8月22日をもって閉店したというニュースも多く流れていた。リアルの店舗でパッケージ商品を販売するビジネスから、スマートフォンなどの端末でコンテンツも情報も得る時代への移り変わりを象徴する1週間だったと言えそうだ。

ケータイメール対応で日本仕様に歩み寄るスマートフォン

携帯電話事業者の大手3社がそろい踏みをしたのが、スマートフォンのケータイメール対応のニュースだった。

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7月のワイヤレスジャパンの開催直前にNTTドコモが開発発表をしていた「spモード」は、9月1日に本サービスを始めるとのアナウンスが8月27日に正式にあった(関連記事:NTTドコモ、スマートフォンでiモードメールができる「spモード」を9月1日開始)。spモードはスマートフォン向けISPサービスで、ドコモの一般携帯電話のiモードに相当するもの。インターネット接続やメール、課金代行の各サービスを提供する。この中で、メールサービスではiモードと同じ「〜@docomo.ne.jp」のメールアドレスが利用できるようになる。

spモードの開始発表に先立ち、KDDIもスマートフォンでケータイメールをやり取りできるようにする取り組みについて発表した。8月24日のニュースリリースである(関連記事:KDDI、スマートフォンのIS01で「〜ezweb.ne.jp」のメールやり取りを可能に)。auブランドのスマートフォン「IS01」に、「〜@ezweb.ne.jp」のメールを使えるアプリケーションを提供するというもの。8月24日からオンラインによるソフトウエア更新サービスの「ケータイアップデート」を使って、IS01のアップデートが可能になった。

ソフトバンクモバイルも負けてはいない。Android端末の「HTC Desire」シリーズのOSのアップデートと、ケータイメール対応を8月27日にアナウンスした(関連記事:ソフトバンク、HTC DesireをAndroid 2.2に、S!メールも利用可能に)。HTC Desireシリーズ(X06HTとX06HTII)は、Android 2.1を搭載するスマートフォンで、国内で販売されているAndroid端末では最新バージョンのOSを組み込んでいた。これをさらに進め、高速処理やFlash 10.1などに対応したAndroid 2.2に引き上げるという発表である。実際のアップデートのスケジュールは10月上旬以降と少し先だが、HTC Desireユーザーはいち早くAndroid 2.2の恩恵を受けられることになる。同時に、S!メール(MMS)への対応も実施、「〜@softbank.ne.jp」「〜@x.vodafone.ne.jp」といったメールアドレスでのやり取りが可能になる。

ケータイメールで利用しているアドレスでメールのやり取りができるようになると、スマートフォンへの移行のハードルが下がることになる。1つは、同じキャリアの利用であればアドレスを変えずにスマートフォンに機種変更できること。もう1つは、迷惑メール防止の対策としてケータイメールだけの受信を許可している人ともスマートフォンでメールのやり取りができるようになること。スマートフォンは使ってみたいけれど、メールアドレスが変わると困るという潜在顧客に対して、アピールになることは間違いない。

海外から来襲してきて、国内のサービスや利用状況に完全には溶け込めないスマートフォンだが、各社ともに宣言していたケータイメールへの対応により、日本ローカライズが進む。今後、おサイフケータイなどのサービス対応がスマートフォンで進むと、一般の携帯電話の存在意義が急速に薄れていく可能性がある。地殻変動はまさに起こり始めていると言える。

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海外では新端末のニュース、アプリのマーケットにも動き

201008301000-2.jpgスマートフォンとは少し毛色が違うが、米Amazon.comの電子書籍リーダー「Kindle」の最新版が出荷されたというニュースがあった(関連記事:Amazon.com、新Kindleを2日前倒しで出荷、注文は過去最速ペース)。当初、8月27日に出荷を計画していたが、好調な受注に対応するように2日前倒しの8月25日に出荷を開始した。なんと、Amazon.comの全商品のうちで最も売れているのが新Kindleというアナウンスも同時にあった。数値は明らかにしていないが、Amazon.comの豊富な品揃えの中で、電子書籍リーダーがトップセールスを記録するということ自体、大きな流れが起こっていることを象徴している。

端末では、米デルが米国市場向けとしては始めてAndroid端末を販売するというニュースもあった(関連記事:デル、米国市場向けの初のAndroid端末「Aero」を販売)。パソコンの巨人、デルがスマートフォン市場にどう手を打ってくるのか。日本への進出なども含めて今後の展開を見守りたい。

一方で、スマートフォン向けのアプリケーションを提供するマーケットプレイスにも動きがあった。1つはNECビッグローブがAndroidアプリのマーケットに本腰を入れると発表したこと(関連記事:NECビッグローブ、Androidアプリマーケットに本格参入、海外で国内の4倍の売上を見込む)。すでにトライアルで提供している「andronavi」を正式に提供し、国内だけでなく海外市場への展開も進める。インターネット接続サービスから始まったプロバイダが、プロバイダ抜きでインターネットにつながってしまうスマートフォン隆盛の時代にどう生き残るかを賭けた、1つの戦略なのだ。

いまだ米国では最大規模の勢力を誇るスマートフォンのプラットフォームがBlackBerryだ。こちらでは、提供元のカナダ・リサーチ・イン・モーション(RIM)がアプリマーケットを立ち上げた(関連記事:RIM、有料アプリのダウンロードが可能なBlackBerry向けアプリマーケットを開始)。固有IDによる購入状況の管理や有料アプリの購入対応など、他のプラットフォームのマーケットプレイスに追いつくところまできたようだ。国内でもNTTドコモが販売している端末のうち、「BlackBerry Bold」「BlackBerry Bold 9700」で利用できる。

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やっぱりiPhoneを使いたい!

201008301000-3.jpgスマートフォンのニュースが続々という記事を書いていて、「iPhone」という文字をこれだけ打たずに書き進めることができたのは奇跡のようだ。それだけ、他のプラットフォームや事業者の話題が豊富だったということで、iPhoneだけに頼る状況から少しずつ変化が生じているように見える。

とはいえ、国内のスマートフォンの王道はiPhoneに違いない。iPhone 4をNTTドコモのネットワークで使いたいユーザーに向けた日本通信のSIM製品が、ついに8月26日に出荷を開始した(関連記事:日本通信のiPhone 4向けマイクロSIMは8月26日から出荷開始。コンセプトは「思い切り快適にiPhone 4を使いたい」)。当初のアナウンスから料金体系はかなり変わった。

SIMフリー版iPhone 4向けマイクロSIM「talking b-micro SIM プラチナサービス」(以下プラチナサービス)は月額6260円で、1050円分の無料通話付き。データ通信専用のマイクロSIMカード「b-microSIM U300」は1カ月のパッケージで2980円である。端末としてSIMロックフリーのiPhone 4が別途必要になる。プラチナサービスでは、U300で行っているような300kbpsまでの一律の帯域制限は行わず、アプリケーションごとに最適化するという。テザリングも可能であり、iPhoneを快適に使える回線として選択肢に大きく名乗りを挙げた。

コンテンツ配信でも動きがあった。携帯端末向けの動画配信サービスを手掛けるブロードメディアは、同社の「CDN mobile movie」サービスをiPhone/iPadに向けて機能拡充すると発表した(関連記事:iPhoneやiPad向けの動画配信サービス、ブロードメディアが9月提供)。1つの動画素材を元に複数のプラットフォームや端末に向けた動画配信サービスが実現できるサービスで、iPhoneやiPadも端末に加わることで利用範囲が広がりそうだ。

ビジネスには一般のケータイもまだまだイケる!

ネット上では、「スマートフォンでなければケータイにあらず」といったニュアンスで、古来の携帯電話(いわゆるガラケー)を揶揄する文章などを目にすることも多い。確かにスマートフォンは1つのプラットフォームとして優れたインタフェースやエコシステムを持つ。しかしだからと言って、すぐさますべてがスマートフォンで満たされる訳ではない。一般の携帯電話にも理はある。

201008301000-4.jpgNTTドコモは、法人向けの携帯電話端末に「ビジネスケータイ」の愛称を付けて、新たに販売する(関連記事:愛称はビジネスケータイ。ドコモ、セキュリティ重視の法人向け端末「F-10B」を発売)。紛失時の遠隔管理などのセキュリティ対策や、仕事で使いやすいように通話メモ専用ボタンを用意するなど、ビジネス利用を強く意識したもの。防水・防塵にも対応し、さまざまなシーンで使いこなせる。濡れた手で持ったり、ぶつけたり落としたりといったこともある業務利用では、タフな端末が必要だ。セキュリティ面での対応も重要になる。今のスマートフォンには、まだそこまでのバリエーションはない。

広く使われている一般の携帯電話をビジネス端末として使えるようにするソリューションも富士フイルムから発表になった(関連記事:富士フイルム、社内Webシステムに携帯から閲覧・入力できるイントラアクセスサービスを提供)。社内のWebシステムを、レイアウトなどを極力変えずに携帯電話で表示・利用できるようにするSaaS型のソリューションである。スマートフォンのWebブラウザでパソコン向けの社内Webシステムを利用する方法もあるだろうが、こうしたソリューションで既存の(ないしは社員が所有している)一般の携帯電話を活用する方法にも十分な効果があるだろう。

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