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大手メーカーの巨大展示から役割を変えつつあるCES

2011.01.24

Updated by Yuko Nonoshita on January 24, 2011, 20:00 pm JST

タブレットのAndroid(Google)の話題に沸いた今年のCES2011。昨年よりも10.5%上回る約14万人の来場者数があり、会場内の混雑ぶりはかなりのものであった。とはいえ、以前に比べると新製品発表の場としての注目度や重要度は薄れている印象がある。

実際、米大手キャリアのベライゾンからのiPhone 4 発売などは展示会終了後に発表があるなど、特にモバイル向けの先端技術や新製品発表は、2月にスペイン・バルセロナで開催される「Mobile World Congress (モバイルワールドコングレス)」へと舞台を移す傾向にある。

そうした流れにある中で、速報では紹介しきれなかった会場での情報をいくつか追加でご紹介しよう。

インターネットとTVの融合が本格化

会場内ではソニー以外にもあちこちでGoogle TVが見かけられ、インターネットとTVの融合が再び始まろうとしているのがよくわかった。単純にTVをコンピュータ代わりにインターネットにつなぐのではなく、アプリをダウンロードしたり、映画やテレビ番組といった既存のテレビが提供してきたコンテンツまでも取り込もうとしている。それらはスマートTVという名前で、衛星やケーブルとの接続をも可能にしている。

特に後者の傾向については、Apple TVが注目を集めているが、ヤフーが展開するYahoo CONNECTED TVでは、同社がユーザー向けに行っている5万件の映画およびテレビ番組のオンデマンドサービスを、テレビメーカーと共同戦線でスタートする。共同するメーカーには、ソニーや東芝、サムスン、LGらが名前を連ねている。米国では、テレビ業界とインターネットとのコンテンツを巡る駆け引きが加速する模様で、来年にはもう一歩進んだサービスが見られるかもしれない。

▼NBCなど全米ネットワークのテレビ局も一部の番組をスマートTVに提供している。
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【関連情報】
Yahoo CONNECTED TV
Yahoo!R Demonstrates the Future of Television With Leading TV Networks and Advertisers at CES (プレスリリース)

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パイオニアが自転車向けモバイルアシスタントサービスを展開

CESではデジタルヘルス分野の出展もあり、専門家向けのカンファレンスなども行われている。傾向としてはセンシング技術を応用したサービスが、技術の進化とデバイスの価格低下から広がりつつあるように見える。ソフトウェア開発で一歩進んだこの分野について、パイオニアが米国企業とタッグを組み、自転車向けのモバイルヘルスアシスタントサービスで日本市場に進出するという話があった。

展示はクァルコムのブース内に設けられた提携会社用のパイオニアのコーナーで行われていた。自転車に取り付けたデバイスを通じて、サイクリング中のログや体調管理、仲間とのネットワークコミュニケーションを提供するPAM(Parsonal Activites Monitor)という、簡単にいえば自転車版「au Smart Sports」といえるもの。カナダのANT Wireless社が提供する、低電力無線通信の「ANT+」というスポーツ用の無線センサープロトコルを採用し、3G回線を使ったリアルタイムのデータ共有が可能で、デモ端末にクァルコムのチップを採用。ソフトウェアは米Yellow Digital Health Labが開発している。

日本国内キャリアとの交渉も進み、夏のサービスインが予定されているという。データ料金は格安に設定することで、端末も2万円以下に抑えることを目標としている。また、うまくいけばその他のスポーツジャンルに向けた展開も行う予定だ。

▼自転車にマウントされたデモ端末。
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▼サービスの全体像。
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▼端末には、心拍数や移動速度などがグラフィカルに表示され、様々なサービスを切り替えて見られる。
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【関連情報】
Yellow Digital Will Demo Working Prototype of 3G Wireless Based eWellness Service at 2011 Consumer Electronics Show (redOrbit)

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屋外でも見やすいディスプレイの製品化が進む

タブレットや電子書籍リーダーの登場で、今後注目を集めそうなのが「屋外でも見やすい」パッシプディスプレイの技術である。その一つ、Pixel Qi社は近日中にSUN BOOKというノートブックを発売予定で、一般非公開のミーティングブースでデモ製品展示を行った。カラーの色調は薄いものの、屋内から屋外への移動でも画面の見やすさが変わらず表示され、省電力性も評価されていることから、今後は電子書籍デバイス市場への進出が予定されている。

▼近日中に発売予定の「SUN BOOK」のデモンストレーション機。
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▼ARMアーキテクチャに対応したリファレンスデザインも展示されていた。
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【関連情報】
Pixel Qi

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Operaがeリーダーにも進出

CES会場ではタブレット向けのOpera for tabletsの展示で注目を集めていたオペラだが、実は電子書籍リーダーの開発も進めていたようだ。Opera for e-readersは会場でのデモもなく詳細も不明ではあったが、製品を紹介するパンフレットがすでに制作されており、そこではエイサー(Acer)社の電子書籍リーダーでに搭載された写真が掲載されている。エイサー社のデバイスはアマゾンのキンドルと同じ、イー・インクタイプのモノクロディスプレイを採用しているが、表示とダウンロードの早さによるユーザーへの快適さの提供を謳っている。

▼会場で入手したOpera eリーダーのパンフレット。
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【関連情報】
Opera E-readers

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最後にCES会場全体の印象として、大手メーカーによる巨大な展示スペースは縮小し、小さな規模や共同出展という形式が増えている。DELLのようにメーカー名では小さなブースだけで、そこではデモ機の展示もないというケースもあった。展示物についても、巨大ブースが必要な大型テレビやシアターシステムといったジャンルの製品そのものが減っているようで、細々とした製品で展示ブースを埋めているようなところもあった。

俳優を使った派手なパフォーマンスやデモといった、ラスベガスの展示会らしい演出も少なくなるなど、CESらしさが薄れる中で、今後はどのように存在意義を高めていくのかが気になるところだ。

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。