WirelessWire News The Technology and Ecosystem of the IoT.

by Category

節電アプリに見るスマートフォンの位置づけの変化

2011.07.26

Updated by Asako Itagaki on July 26, 2011, 14:00 pm UTC

この夏は東京電力、東北電力の管内では15%、それ以外の地域でも節電要請がされている。電力各社は日別の電気予報、時間帯別の電力消費量データを公開しているが、経済産業省がそのデータを利用して「節電アプリ開発」を広くよびかけたこともあり、節電を支援するAndroid・iPhoneアプリが多数公開されている。また、経済産業省では、アプリ・コンテンツ開発者の応援と節電アプリの普及を目的として、「スマートフォン節電アプリ大賞」を実施している。

従来の官公庁による「インターネットを通した情報提供」といえば、ウェブサイト上への掲載がほとんどで、特にスマートフォンのアプリを使った情報提供は「一部企業の先進的な試み」として語られることが多かった。しかし、今回、経済産業省が自らアプリ開発を呼びかけたということは、官公庁が「国民の最も身近な情報端末」としてスマートフォンを位置づけたということであり、画期的だといえるのではないだろうか。

また、スマートフォンで提供されるアプリやサービスも、電力需給状況の確認だけでなく、節電するためのアクションをうながしたり、現在の自分の電気使用状況を確認できるような、よりパーソナルなものへと変化してきている。いくつかの事例を紹介しよう。

電力需給を知る

3月に東京電力から同社管内での計画停電実施が発表されたときに、1時間ごとの電気使用量とその日の最大電力供給量が公表されるようになった(7月1日からは5分ごとの公開に変更)ため、そのデータを見やすく表示するウィジェットやアプリが多数公開された。以下に紹介する2つ以外にも、「節電」でマーケットやAppstoreを検索すると多数のアプリがヒットする。

■電力の使用状況ウィジェット(AIRFRONT, Inc.)[Android]
201107261400-1.jpg

ウィジェットで電力の使用率を常時表示しており、タップすると過去の使用電力がグラフで表示される。グラフ画像はブログやTwitterなどで共有できる。また、節電に役立つTipsが画面下にティッカーで表示されている。

電力の使用状況ウィジェット(Androidマーケット)

また、関西電力版、東北電力版、九州電力版も公開されている。

===

■東京節電(頓智・)[Android・iPhone]
201107261400-2.jpg

電力不足が見込まれる時には、ピーク予想の1時間前にプッシュ配信で通知する。現在の電力の使用率を表示すると同時に、位置情報を取得して現在いる場所の近辺の計画停電の予定を知らせてくれるので、計画停電が再開されことがあれば便利な機能だ。Twitterとも連動しており、節電の取り組みや、ぼやきなどを共有できる。

節電アプリ「東京節電」をリリースしました(頓智ドット株式会社)

また、NTTドコモでは、7月15日から9月30日まで、「電力アラーム」と「電力予報」をiコンシェル向けに提供する。配信対象エリアは、東京電力、東北電力、関西電力の各管轄エリア(ただし、電力アラームは岩手県、宮城県、福島県を除く)。いずれも対象となる電力会社のWebサイトで公開された電力使用状況に関する情報に基づく。

電力アラームは、電力会社の電力需給状況が厳しくなったときに電力の使用状況を通知する。利用するには、iコンシェルお知らせ機能の「警報/その他気象情報」を「受信する」に設定する。電力予報は、あらかじめ電力会社のトルカをダウンロードしたユーザーに、当日の電力使用率ピークなどの予報を毎朝知らせる。

201107261400-3.jpg

報道発表資料 : 「電力アラーム」および「電力予報」をiコンシェルにて配信開始(NTTドコモ)

===

節電するためのアクションを起こす

現在の電力使用状況やTIPSを参照するだけでなく、「何をすればどのくらい」節電になるのかという情報を提供したり、節電効果を見積もるためのアプリも用意されている。見るだけでなく、自分の行動をシミュレーションしたり、状況に応じて行動のチェックリストが表示される点が新しい。

■au「節電アプリ」[Android(auの一部機種向け)]
201107261400-4.jpg

auが展開する節電総合サービス「KDDI 節電ひろば」で、スマートフォン向けのアプリが提供されている。アプリのトップでは電力需給状況と合わせて、節電に役立つTIPS「節電なう」が表示される。また、現在の家電の利用を控えることで節約できる電気料金の目安を計算する「節電電卓」と、節電した内容を電気料金に換算して記録する「節電家計簿」を提供する。

また、ポータルサイト「節電ひろば」では、上記に加えて電力に関する基礎知識、ライフスタイル別の節電対策、節電グッズの紹介などを行う。こちらはPCからも利用できる。

節電ひろば アプリ紹介
KDDI節電ひろば

===

■節電アクション(経済産業省)[Android・iPhone]
201107261400-5.jpg

経済産業省「公式」の節電アプリ。天気、気温、今の使用率を表示する他、毎日きまった時刻に「電気予報」を受信する。

また、電力需給があらかじめ設定した%を超えると、アラームを受信する。その際に自分がとる「節電アクション」をあらかじめ登録しておくことで、チェックリスト的に使用できる。「必要な時にめりはりをつけて節電する」ことが意識できる点がユニークだ。

節電アクション(Android マーケット)
節電アクション 【経済産業省】 家庭向け節電サイト

===

家電機器と連動するアプリ

スマートフォンを利用して外出先から家電をリモートで操作したり、家庭内に設置したスマートタップと連動して、リアルタイムの消費電力を可視化するアプリも登場した。

■iRemocon[iPhone]
201107261400-6.jpg

スマートフォンと接続して、複数の家電をまとめて操作できる高機能学習型リモコン。外出先から操作できるだけでなく、マクロ機能で複数の機器を連動させた操作を1アクションで行ったり、タイマー機能でリモコン操作を予約することもできる。

iRemocon

===

■ELP Lite[iPhone]
201107261400-7.jpg

本来は「ELP」として年末発売を予定していが、夏の節電要請の高まりをうけ、急遽100セット限定で「ELP Lite」として販売を決めた。コンセントと家電製品の間に、消費電力を計測するモジュールを接続し、計測データをレシーバ経由でウェブサイトに送信することで、リアルタイムに消費電力を記録する。電力消費状況はスマートフォンのアプリやウェブサイトから確認でき、機器毎の消費電力や全体に対する割合、他の利用者との比較などができる。

ELP Lite(Studio Sassor)

===

■ドコモ省エネ応援サービス(試験サービス)
201107261400-8.jpg

ELP Liteと同様に、スマートタップと中継器を使用して消費電力データを記録するサービスが、8月1日から10月末までの3ヶ月間、1000名に試験提供される(関連記事:ケータイで家の消費電力を確認!--NTTドコモが1000世帯で試験サービス)。データはブロードバンドルーターを介して 「エネルギーマネジメントのためのクラウド型システム」に送信され、ウェブサイトを通してPCやスマートフォンから消費電力を確認できる。節電目標に対する達成度や、省エネ診断レポートも提供する。

「ドコモ省エネ応援サービス」の試験提供を開始 (報道発表資料)

また、ソニーコンピューターサイエンス研究所と大和ハウスは、ゲーム内でスマートフォン上のゲームから家電を操作できる共同プロジェクトの公開実験を行った。(関連記事:「擬人化された家電をスマートフォンのゲームで操作」ソニーCSLと大和ハウスの公開実験の狙い)。スマートフォンで家電を操作するだけでなく、ゲームを通して節電のための気づきを得られる新しい試みだ。

政府からの節電要請については、「『原発を動かさないと電力が足りなくなる』という原子力発電推進派のプロパガンダだ」という声がある。だが、日常生活の中での電気の使い方を見直して、「無理なく」省ける無駄を省くための節電そのものは、悪いことではない。

また節電には、「電気代が安くなる」という誰にとっても分かりやすいメリットがある。「節電アプリ」は、スマートフォンが「コミュニケーションツール」という枠を超えて、個人の道具として生活の中に浸透していく一つのきっかけと言えるかもしれない。

通信と電力

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。