8月20日、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)は、大阪大学と共同で、40Gbpsの無線伝送実験に成功したと発表した。この速度は、従来の記録(27Gbps)を超えて、電波による伝送実験の世界最高速記録となる。
今回の実験では、現在一般に無線通信に利用されているマイクロ波帯の電波を避け、ミリ波帯の電波を利用。NICTがこれまでに開発した「光によるミリ波発生装置」「高速高精度16値光変調器」と、今回新たに開発した「光・ミリ波変換器」、阪大の開発した「デジタル信号処理技術」を利用している。
利用したミリ波帯の電波は、「高速伝送には適しているものの、発生させることが難しい」(NICT報道発表資料より)とされてきた。今回の実験では、光の広帯域性を利用してミリ波高速信号発生を実現し、かつ、光ファイバ通信向けの複雑な信号発生技術を無線技術に適用することで、伝送速度の高速化に必要な「信号の高速性」と「高精度性」を両立した。
40Gbpsの伝送速度では、従来の無線LAN(IEEE802.11n)で転送するのに14分以上かかっている容量32ギガバイトのメモリ転送の所要時間が、わずか6秒程度となる。また、スーパーハイビジョンの非圧縮伝送も可能となる。加えて、利用の少ないミリ波帯をを利用することで、限られた電波資源の有効利用にも大きく貢献するとしている。
実験の結果の詳細については、9月18日から22日にかけてスイス・ジュネーブで開催される光通信国際会議(ECOC2011)で発表される予定。
※修正履歴18:10
・本文の一部で、「40Gbps」を「40bps」と誤記しておりましたので訂正いたしました。(本文修正済み)
【報道発表資料】
・世界最高速、毎秒40ギガビット無線伝送実験に成功
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちらWirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。