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ライセンス提供に生き残りの期待をかけるWebOS - 行く手にははやくも暗雲(編集担当メモ)

2011.08.22

Updated by WirelessWire News編集部 on August 22, 2011, 16:18 pm JST

ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard:HP)が米国時間18日に発表した大規模な戦略転換については、発表後からこの週末にかけて、さまざまなニュースや分析記事が英語圏の媒体を賑わせていたが、なかでも一部から期待を寄せられていたWebOSについては、端末製造の中止に関する突然の発表を残念がる意見や、今後の同OSの行方を心配する声も多数見受けられる。ここでは、そうしたもののなかから目に付いたものをいくつか紹介する。

まずHPが今回の決定に至った背景については、経営トップの交代--旧パーム(Palm)の買収/WebOSの獲得を決めたマーク・ハード(Mark Hurd)氏が辞任し、その後をSAP出身でもっぱら法人向けソフトウェアの世界に詳しい現CEOのレオ・アポテカー(Leo Apotheker)氏が継いだことを挙げるものが多い。また、今回の発表については、HP社内でもごく一部にしか事前に知らされていなかったとされるが、TNWでは「他社へのライセンス提供契約をひとつも決めないうちに、ハードウェアから手を引くことを明らかにしてしまったこと」を「戦術的な失敗」として指摘している。

HPではいまのところ、WebOS関連事業について「端末の取り扱いを中止」ならびに「今後についてはあらゆる戦略上の選択肢を検討」と述べている。そのため具体的には2つの方向性 -- 「OSなどソフトウェアの開発のみを続け、他の端末メーカーにこれをライセンス提供していく」といういうものと、「魅力的な特許ポートフォリオを持つWebOS事業を、丸ごと売却する」というもの--が選択肢として残されている。

TNWでは、HP社内から得た情報をもとに、今回の発表の受け止められ方などを詳しく伝えているが、それによるとHP社内の見方は「他の端末メーカーへのOSライセンス提供」でほぼ100%固まっているという。この記事によると、実はHP社内でも「TouchPad」や「Pre」といった既存の製品がうまくいかないことは織り込み済みで、とくに2年前(Palm買収前)から開発がスタートしていたTouchPadについては、はやくこれに見切りをつけて、自社もしくは他社製のもっと新しいハードウェアに搭載されてこそWebOSの真価が発揮されると期待しているという。

実際に、WebOSの開発チームではこのための準備も進められており、その一環として行われた「iPad 2」への移植では、ネイティブ・モード、ウェブアプリ・モード(Mobile Safari経由で動作)のいずれでも、TouchPad上での動作に比べて2倍以上高速に動いていたという。

また、7インチ画面を持つ新型タブレット端末「TouchPad Go」はすでに製造段階まで進んでいたほか、TouchPadの次のバージョンの開発も始まっていたという。なお、こちらについては、より軽量な金属製筐体に高細密ディスプレイの搭載も検討されていた可能性も指摘されている。

TNWの記事によれば、HPにはWebOSをいまなお高く評価する社員が多くいるとし、なかには唯一のライバルはアップル(のiOS)だけで、これまでの成功が足かせとなり得るアップルよりもむしろ自分たちのほうがよりよい設計を行えると考えているものもいるという。

なお、WebOSの他社へのライセンス提供については、6月にBloombergが可能性を報じていた。また、先週はじめに明らかになったグーグル(Google)によるモトローラ(Motorola)の買収の動きを受けて、Android以外の選択肢を求めるサムスン(Samsung)やHTCなどの端末メーカー各社が、マイクロソフト(Microsoft)の「Windows Phone OS」とともにWebOSの採用を検討する可能性も指摘されていた。

いっぽうで、HPがWebOS自体の開発からも手を引き、関連特許の売却でパーム(Palm)の取得に要した12億ドルの資金を回収できるというシナリオについては、AllThingsDが19日付の記事のなかで詳しく論じている。この記事では、Palmが保有していた特許の価値について「アップルのそれと比肩する」とする専門家のコメントを引用、さらにアップルとの特許をめぐる確執があった際になされた「自分たちを守りきるだけの法的手段を持っているという自信がある」という同社の発言や、Palm Treに組み込まれたiTunesの同期機能をめぐる争いでも結局アップルがパームを訴えることはなかった点などを傍証としてあげている。

ただし、AllThingsDと同系列のWSJが22日に掲載した記事のなかには、WebOSのライセンス提供や、同事業部門の売却に水を差しかねない会社の存在も記されている。アカシア・リサーチ(Acacia Research)というこの特許専門企業は、2005年にPalmがソフトウェア部門のパームソース(PlamSource)を切り離して日本のACCESSに売却した際に、パームと提携関係を結んでいたという。アカシア・リサーチでは自社が管理する特許に関し、実際にモトローラやノキア(Nokia)、リサーチ・イン・モーション(Research in Motion:RIM)などと訴訟の末ライセンス契約を結んでおり、現在もアップルやLG、AT&Tなどに対して訴訟を起こしているという。

アカシア・リサーチのポール・ライアン(Paul Ryan)CEOは、WSJに対し、「パームが保有していた特許については、ソフトウェア関連のものは基本的に自分たちがコントロールしており、HPがコントロールしているのはハードウェア関連もの」という認識を示しているという。

【参照情報】
An inside look at HP killing webOS hardware: Here's how it really went down - TNW
HP tested webOS on an iPad. It ran over twice as fast as the TouchPad - TNW
HP Will Keep Supporting 'Not Dead' WebOS - Bloomberg
Worth More Dead Than Alive: Could HP Turn a Profit on Palm's Patents? - AllThingsD
Cellphone Patent Disputes Piling Up - WSJ.com
A Simple Explanation for Why HP Abandoned Palm and Is Getting Out of the PC Business - Daring Fireball
HP、PC事業切り離しとWebOS部門閉鎖を発表 -「ビッグデータ」分野に重点シフト
HP「TouchPad」が売れ行き不振 - 小売大手のベストバイから在庫の引き取り要求も
HP、WebOSのライセンス提供に向け、サムスンなどと交渉(Bloomberg報道)

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