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NICT、分散型地域ネットワーク「NerveNet」のデモを実施

2011.10.29

Updated by Asako Itagaki on October 29, 2011, 18:56 pm JST

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10月29日、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)は、東京都小金井市の小金井公園にて開催された平成23年度東京都・小平市・西東京市・武蔵野市・小金井市合同総合防災訓練(以下防災訓練と呼称)において、「地域分散無線ネットワーク(NerveNet: ナーブネット)」のデモンストレーションを行った。

NerveNetは、基地局同士が自動的に相互に無線接続することによって構築される無線ネットワーク。既存の携帯網や電話網が利用出来なくなった時に、小型のポータブル基地局とアンテナを迅速に配置することにより、短時間(数時間~24時間以内)に地域内を結ぶWi-Fiネットワークを構築し、通信網を確保する。今回のデモの目的は、NerveNetの実証機を防災訓練の参加者に操作してもらうことで、操作性の検証を行うことである。

▼デモンストレーション用のネットワーク構成。公園内に設置した基地局を無線で接続し、避難所に置いた端末から情報登録・検索などを行う。(報道発表資料より)
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基地局を電波が相互に届くように設置すると、コントロールユニットが自動的に経路設定を行い、相互に通信が可能になる。一つのネットワークに100台までの基地局の収容が可能で、10km四方程度をカバーできる。

▼設置された基地局。指向性の平面アンテナを利用して、見通しで200~300m離れた基地局と通信している。
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▼今回使用している発電機と基地局は、3リットルの燃料で7~8時間の稼働が可能。
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▼基地局の中身はスイッチングハブと無線ユニットが4台に、コントロールユニットが搭載されている。無線ユニットのうち3台は基地局間の通信に使われており、1台は無線LANのアクセスポイントとして、自局配下の端末を収容する。
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避難所に設置された端末はAndroidベースのタッチパネル端末。個人が所持している免許証、Felica、おサイフケータイなどのICカードを登録し、氏名や住所(郵便番号)、メッセージなどの個人情報をひもづけることで、避難所を移動しても、移動先で「カードをかざす」だけで所在情報をアップデートできる。氏名を入力して検索することで、どこに避難しているかを探すこともできる。

▼初回登録時に氏名などを入力すると、その後別の避難所に移動したときはカードをかざすだけで移動したことが記録される。
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▼登録した情報は端末間で自動同期されるので、どの避難所の端末からでも「どこに誰がいるのか」を検索できる。
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▼今回のデモシステムでは、登録した情報をインターネット経由でも検索できるようになっている。インターネットとの接続が回復した段階で、外部からの安否確認にも利用できる仕組みだ。
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また、今回のデモでは、避難所に置いた共用端末からの情報登録・検索を想定していたが、ネットワークは通常のWi-Fiネットワークなので、スマートフォンなどの個人が所有するモバイルデバイスを接続することも可能だ。基地局に接続したときにNerveNetアクセス用のアプリを基地局からダウンロードするような仕掛けをほどこすことで、被災者自身が持つスマートフォンから所在情報を登録したり、情報を入手することができるようになる。

災害発生時には、通信事業者の基地局などの設備やバックボーンネットワークの被災、停電などにより、通信網が寸断される。東日本大震災の時には、携帯電話の基地局が地震や津波で被災し、生き残った基地局も長時間の停電により稼働不能になったことで、地域内の通信がとだえてしまい、家族やコミュニティ内の安否確認や、炊き出し、物資の配給などの生活情報が伝達できなくなったことが大きな問題となった。NerveNetのような仕組みは、災害直後に必要な「被災地内での情報伝達」に大きな役割を果たすことが期待される。

【報道発表資料】
平成23年度東京都・小平市・西東京市・武蔵野市・小金井市合同総合防災訓練において地域分散無線ネットワークを用いたデモを実施(独立行政法人 情報通信研究機構)

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。