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「オフロード(offload)」とは、負荷(Load)を下ろす(off)という意味で、特定回線から別の経路に通信データを迂回させ、通信網の負荷を軽減させることを意味する。通信業界では、現在、従来型携帯電話の10〜20倍と言われる大量のデータ通信を要するスマートフォンの普及が爆発的に進んでおり、携帯ネットワーク(3G回線)のパンク回避のため、オフロードの取り組みが活発に行われるようになっている。

KDDIの試算(2011/06/23日経産業新聞)によれば、2015年には2010年比で約18倍のデータ量が生じ、現在のインフラ(3G回線)だけでは2013年には収容可能な通信量をオーバーフローしてしまうと予測している。また、近年デジタルフォトフレームに代表されるM2M(Machine to Machine)が活況を呈しており、今後、車両や家庭用の電化製品、エネルギーメーター等、あらゆる機器がネットワーク接続され、更なる通信量の増大を加速させることが予測される。

オフロードには、主にWi-Fi(無線LAN)経由による光ファイバー等の固定網へ通信を逃がす手法と、より高い周波数利用効率を実現する次世代通信システム(LTEやWiMAX等の3.9GやLTE-Advanced等の4G)を活用する手法があるが、現在活発に展開されているのは、前者のWi-Fiによる手法である。

携帯キャリア各社は駅や空港、ホテル、飲食店などに無線LANの基地局を整備し、自社のスマートフォン利用者に無償で提供している。更に、ソフトバンクは家庭用無線LANルーター(FON)の無償配布を行い、ユーザー宅の固定網活用を図っている。また、アクセスポイントを経由せず、直接デバイス同士を接続させるWi-Fi Directは、M2M通信におけるオフロードとして今後注目すべき技術と言えるだろう。

利用者の観点でも、オフロードは大きなメリットがある。海外ではAT&Tがスマートフォン利用者等の増加によるデータトラフィック増大をまかないきれず、ユーザー側にその負担を求め、2010年6月に「使い放題」のメニューを廃止した。つまりは、へビーユーザーの利用を制限、抑制した形だ。これに対し、Wi-Fiによるオフロードは、携帯キャリア各社による新たな移動体の基地局設置等といった大規模な設備投資を回避し、AT&Tのようなユーザーへの価格転嫁や利用抑制といったことを避けることができる。

一方、先に述べたように次世代通信システムを活用したオフロードは、NTTドコモのXi(クロッシー)やKDDI傘下のUQコミュニケーションズが提供するWiMAX(ワイマックス)といった3.9G対応のスマートフォンを拡充するなどして、3G回線からの負荷分散を狙っている。更に、来たるべきビッグデータ時代に向けて、より高速且つ高い周波数利用効率を実現できる4G(第4世代通信システム)の普及が待たれる。

しかし、ノキア シーメンス ネットワークス(2011/11/22 Wireless Wire News)によると、4GであるLTE-Advancedを2.1GHz帯と850MHz帯で導入すると現在の24倍の通信量を収容できるという計算になるが、通信量は2015年には現在の20倍、2020年には1,000倍に膨れ上がると予測されており、LTE-Advancedの活用のみでは、2015年の20倍には耐えられても、10年後の1,000倍にはまったく対応できない。

このように、将来的に4Gが実現したとしても、固定網も含めた複数回線へのオフロードの重要性は変わらない。むしろ、その重要性は増してくる。つまり、ビックデータ時代到来に向けたオフロードが、通信事業者にとって、移動体通信と固定通信を融合した総合通信サービスの実現というパラダイムシフトのきっかけとなるであろう。

2012 通信業界のキーワード

文・大橋 克弘(デロイトトーマツコンサルティング シニアコンサルタント)

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