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「特許売却」とは、特許権者が保有する特許を対価をもち譲渡することで、日本の場合、特許庁への移転登録手続きが完了することにより、譲渡が完了し、新権利者が維持年金の支払などの責任を負う。

特許売却をするモティベーションはさまざまであり、経営上の手元資金の確保、特許の維持費用が年数を経るにつれ高額になる、保有していてもみずからの事業にとり価値がない(棚卸)、あるいは、すでに多くのライセンス交渉が締結され、もはやそれらの特許を保持する必要なない場合など多彩なケースがある。

特許売却が行われるのは、過去のR&Dから生まれた特許を保有することになった会社と、新規参入を図るためパテントポートフォリオを充実させたい会社との利害が一致する場合、あるいは、それらの不要となった特許を買い、権利行使を行いロイヤリティを得たい場合などがある。一般に訴訟が絡む場合が多いため、侵害立証の容易で、かつ広範に実施されている特許が優遇される。

2011年はITC業界にとっては、「特許売却」の年とも言える。その背景としては、(1)スマートフォンでの大型訴訟があいついでいること(この4年で倍増)、あるいは(2)米国の特許法改正上院本会議で再可決(参考資料:特許改革法案(リーヒ・スミス米国発明法案)(JETRO)[PDF])により、旧特許法のもとで訴訟をかけたい駆け込み提訴の激増、そして(3)韓国や中国などの企業が積極的に有力特許の買い付けに入っていることなどがあげられる。

また今年の特徴は1000件単位の大型売却が多かったことがあげられる。きっかけとなったのは2009年に経営破綻したカナダのNORTEL社の保有する特許6000件が入札にかけられ、予想をはるかに上回る高値がついたことである(2011年6月27日:参考記事)。

結局45億ドル(3500億円)の高値で6社(Apple, Microsoft, Sony, RIM, EMC, Ericsson)連合が落札。なかでもアップルは、最有力候補と見られていたグーグルに競り勝ち、その半分の特許を獲得した。一件平均0.5億円がついた。

その後、大型特許売却がつづき、モトローラ(Motorola Mobility)は会社ごと、登録特許14,600件と出願中特許7000件つきで約一兆円でグーグルに売却された。事業も含み、特許のみの価格でないが、一件平均0.5億円の価格がついたことになる。さらに、インターデジタル社も会社ごと売りに出て、保有特許8800件には、会社時価総額24億ドル(約1850億円)からすると、一件平均0.2億円の値段がだされている。

この活発な特許売却の流れのなかで、さすがに特許売却にはあまり熱心でなかった日本メーカーでも、今年はこれまで以上の特許売却が多数みられ、業界ではどの社がどこに売却したとの多数の情報が飛び交っていた。しかし、売却は米国特許、欧州特許が中心で、日本特許は蚊帳のそとともいわれる。なぜなら、特許活用のメリットが日本特許では極めて限定されており、米国や欧州での活用の方が利益が大きいからである。

これらの特許売却の動きは2012年も引き続き続くであろうが、筆者は2011年がそのピークではないかと見ている。そして来年には、それらの新たな特許所有者と、特許実施者との間で、今年以上に厳しいライセンス交渉あるいは、訴訟が増加することが予想される。

2012 通信業界のキーワード

文・二又 俊文(シズベルジャパン株式会社相談役)

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