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ノキア不振の影で... - フィンランド経済に「復調の兆し」(編集担当メモ)

2012.04.20

Updated by WirelessWire News編集部 on April 20, 2012, 13:43 pm JST

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(cc) Image by thomas park

フィンランドといえば、かつてはノキアの「企業城下町」といった印象があった国。だが、そのフィンランドの経済にはすでに復活の兆しが見えている、という話をBusinessweek(BW)が採り上げている。

Finland Imagines Life Without Nokia - Businessweek

かつてのピーク時(2000年)には、フィンランドのGDP全体の約4%を占めていたノキアの売上。そのノキアの株価が、iPhone登場から間もない2007年10月下旬に比べて9割近くも減少(註1)したいま、「地元経済はどれほどたいへんな状況に置かれているのだろう・・・」といった関心から、このBW記事を読み進めていって、ちょっと驚く記述に出くわした。ノキアの大規模な人員削減にもかかわらず、「失業率は2010年の8.5%から、昨年(2011年)には7.9%まで低下」したというのである。

この経済回復(少なくとも、その兆し)をもたらした要因は、一言でいうと「産業ポートフォリオの多角化」ということになろう。世界中で大人気のスマートフォン・ゲームアプリ「Angry Birds」の開発元、ロビオ(Rovio)を筆頭とするゲーム業界ーーすでに評価額が10億ドルを超えたロビオを含む上位100社の雇用数は、2020年に現在の約4倍の6500人以上に達する見込み、グーグル(Google)やIBMの誘致に成功したデータセンター事業 ーーかつて製材工場として使われていた施設を転用、豊富な水力を利用した電力事情(「過去30年間にたった1度しかダウンタイムがなかった」という記述もみられるーー、またIT分野以外では、汚れた水を飲料水に変えるコンパウンドを開発したキメラ(Kemira)という化学薬品メーカー ーー化学製品の輸出額に占める割合は、2000年の10%から現在では約20%に増加とあるーー、さらに流氷のなかを進んでいける「砕氷船」メーカーや、船体内部に公園(樹木・植物付き)まで再現した豪華客船を建造した造船業界などの例も挙がっている。

人口540万人(2012 推定 - wikipedia)ほど、GDPにしても2665億ドル($266.553 billion:名目GDP)とアップルの年間売上の2.5倍弱しかない、比較的小さな国の話とはいえ、まった大したものだと感心。長く大国(露、独、スウェーデンなど)に挟まれながら微妙な舵取りでその都度苦難を切り抜けてきた国、といった歴史的な背景・国民性なども関係あるのかどうか・・・と想像を膨らませている次第。

それはさておき。
上述のBW記事は次のような一節で締めくくられている。

The Nordic nation will bounce back, says ETLA's Ali-Yrkkö. "Finland's future growth will be like small streams merging into a river."

(このノルディックの国はこれから復活していく、とヘルシンキの調査会社ETLAで働く経済学者のJyrki Ali-Yrkkö氏は言う。「フィンランドの今後の経済は、いくつもの小さな流れが合わさって1つの川ができるような形で成長していくだろう」

(註1)
27.31ユーロから2.91ユーロ (NOA3.DE)/NYSEでのADRは
39.57ドルから3.82ドル

(註2)
アップル 2011年会計年度(2011年9月〆)
$108 billion
サムスン 2011年(会計年度2011年3月〆)
$146 billion

Foxconn Buys Into Sharp - WSJ

【参照情報】
Finland Imagines Life Without Nokia - Businessweek
ノキア、1−3月期決算 - スマートフォン出荷台数半減、中国市場でも大苦戦
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