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[2012年第17〜18週]3キャリアーの決算出揃う、地下鉄区間など鉄道のエリア化が進む

2012.05.07

Updated by Naohisa Iwamoto on May 7, 2012, 17:00 pm JST

大型連休の直前に、携帯電話事業者3社の2012年3月期決算が発表された。3社とも足並みを揃えて増収増益の決算で、スマートフォンシフトの効果が大きく表れていることがわかる。連休前には鉄道の地下駅や地下区間でのエリア化進展のニュースも多く飛び込んできた。

3社ともの増収増益の決算

まず、NTTドコモの決算から。営業収益は前年度比0.4%増の4兆2400億円、営業利益は前年度比3.5%増の8745億円と、8期ぶりの増収増益を達成した。パケット収入は前年度比8.8%増の1兆8439億円、スマートフォン販売数は当初目標の600万台を大きく超える882万台(対前年3.5倍)と、スマートフォンシフトがますます顕著になっている。Xi加入者数は230万と目標を上回った(報道発表資料:NTTドコモ 2011年度決算および2012年度の取組み、関連記事:MNP対策として「0円端末」にも言及、ドコモが2012年度の取り組みを説明

KDDIは営業収益が3兆5721億円と前年度比4.0%の増加、営業利益が4776億円と前年度比1.2%の増加で、増収増益の決算になった。MNP純増を6カ月連続で続けていることや、前期比10%を超えるデータARPUの大幅な伸びなどの指標を示し、auモメンタムの復活を強調。スマートフォンは期初に目標としていた400万台に対して、563万台の実績へと大幅な伸びを見せた(報道発表資料:KDDI 2012年3月期決算)。

ソフトバンクの決算は、7期連続の営業利益過去最高益を記録するなど絶好調ぶりを示している。営業収益は前年度比6.6%増の3兆2024億円、営業利益は前年度比7.3%増の6752億円と大幅な増収増益を記録した。iPhone、iPadの好調により純増契約数は354万と、NTTドコモの212万、KDDIの211万を大きく上回ること、基地局の増加や900MHz帯のサービス開始などで弱点とされていたエリアの改善を図っていることなどを示した(報道発表資料:ソフトバンク 2012年3月期決算発表会)。

▼表1 2012年3月期の携帯電話3社の決算概要
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▼表2 2012年3月期のARPU推移
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「EMOBILE」400万契約、地下鉄などのエリア化が進む

大型連休前の通信事業者のニュースをまとめて紹介する。イー・アクセスは、「EMOBILE通信サービス」の契約数が400万を突破したことを記念して、キャンペーンを実施すると。イー・アクセスは電気通信事業者協会(TCA)に、2011年12月末以降の毎月の契約数を報告していないため推移が明らかになっていないが、3月末時点で400万契約を超えていたという(関連記事:「EMOBILE通信サービス」が400万契約を突破、記念キャンペーンを実施)。

NTTドコモはXi普及を目的としたキャンペーンの対象を拡大した。Xi(クロッシィ)を2契約目のデータ通信専用端末として割引利用できる「Xi(クロッシィ)2割」(2は上付き文字)で、これまでは1契約目がXiである必要があったが、5月1日からFOMAユーザーでも利用できるようになった。合わせて、名称も「プラスXi(クロッシィ)割」キャンペーンに改めた(関連記事:ドコモ、「Xi(クロッシィ)2割」キャンペーンの対象をFOMAユーザーにも拡大)。
地下鉄や地下駅などでのサービス提供が進んでいる。

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社は、大阪市営地下鉄における携帯電話サービスを開始した。大阪市営地下鉄 中央線の「本町駅〜堺筋本町駅」区間での携帯電話サービスを4月25日始発から開始。トンネル内の電車でも通信が可能になる。

UQコミュニケーションズが、地下鉄や地下駅などのエリア化を着々と進めている。まず、JR北海道の札幌〜新千歳空港を結ぶ空港アクセス路線でWiMAXのエリアを整備したニュースから。札幌駅と新千歳空港駅の屋内基地局設備を設定し、4月23日からサービスの提供を始めた(関連記事:進む鉄道のエリア化--大阪市営地下鉄で携帯電話、札幌〜新千歳空港でWiMAX)。

交通機関への取り組み|UQ WiMAX
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次いで、福岡市地下鉄では全線のエリア整備を完了させたことをアナウンスしている。福岡市交通局の福岡市地下鉄では、七隈線橋本駅のエリア整備が終わったことで、地上駅2駅を含む全35駅でエリア整備が完了した。また、京浜急行電鉄でも空港線大鳥居駅でサービスを開始、今後2012年6月末までに羽田空港国際線ターミナル駅、羽田空港国内線タ―ミナル駅、天空橋駅、上大岡駅の地下駅や駅ビル内にエリアを広げる。併せて、UQコミュニケーションズはWiMAX屋外基地局が2万局を達成したこともアナウンスしている。2012年4月25日に達成した(関連記事:UQ WiMAX、福岡市地下鉄エリア化を完了、京浜急行の地下駅へも拡充)。

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手軽に3D映像、データ配信の効率化

このほかのトピックを紹介しておこう。富士通研究所は、一般的なスマートフォンや携帯電話でも3D映像を撮影できるようにする技術を開発した。スマートフォンや携帯電話のカメラに小型で安価なアタッチメントを取り付けて撮影し、クラウドで3D映像に変換処理を行う。開発した技術のポイントは、2つ。1つは小型で安価なアタッチメントで3D映像の元になるデータを取り込めるようにした映像処理技術。もう1つは、負荷の高い処理をクラウドで行う手法の採用である(関連記事:富士通研、一般のスマホでも3D映像を撮影できるクラウド利用の技術

クアルコムは、都内で開かれた「2012 Japan-China TDD Forum / GTI Ad Hoc Seminar」で、LTEネットワーク上でデータを同時配信できる技術のデモを行った。「eMBMS」(evolved Multimedia Broadcast Multicast Service)と呼ぶもので、LTEの帯域の一部を同時配信に割り当てることで、効率良くコンテンツやデータの配信が可能になる。夜間にスマートフォンなどのアップデートファイルを配信したり、スポーツの試合やコンサートなどで1カ所に人が集まっているときにその映像を同時配信したりするようなときに、特に効果があるという。2013年には商用サービスを開始できるところまで技術開発は進んでいるとのことで、モバキャスのような放送用の周波数帯を使わずに一斉配信サービスを実現することが可能になる。

▼クアルコムの「eMBMS」の紹介デモ。ビデオなどのマルチメディアサービスを利用するユーザーが増えると、ユニキャストでは破綻することを示している。eMBMSのマルチキャストで帯域の20%を割り当てている状況で、同じコンテンツを同じ数のユーザーが視聴するとユニキャストでは約200%の帯域が必要になるという。
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昨年の第17〜18週のできごと

・買収、提携--業界の構図が着々と塗り替えられる
・やっと発売、白いiPhone 4と国内向けiPad 2
・グローバル端末や次世代データ通信用端末も発表
・CDMA 1Xサービス終了、サービスの変遷も見える
・スマートフォンを様々な側面で利用する試み

[2011年第17〜18週]ノキア シーメンスのモトローラ買収が完了、白のiPhone 4とiPad 2が国内でも発売

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。