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景気が悪いと長屋社屋が儲かる

2013.02.25

Updated by Mayumi Tanimoto on February 25, 2013, 22:23 pm JST

不況です。イギリスでも相変わらず首切り、倒産、破産、予算カットというネタがぐるんぐるん回っております。エンドレスループです。

しかし、そんなに景気が悪くても、盛り上げっている業界というのがあります。それは、長屋社屋を提供する商売であります。長屋社屋って英語だとシェアードオフィスってやつです。日本語にすると一気に貧乏臭くなりますね。でもね、意味は同じですから。

最近ノマドになりたいという頭が足りなそうな大学生と話して知ったんですけど、日本の「ノマド用語」だとコーワーキングスペースとか言うんですね。(なんとなくプチ共産風味ですね。さすが偽装資本主義国家ですね)昭和生まれのワタクシからすると、長屋社屋といえ、このヤロウであります。

イギリスはドケチばかりで一年中金のことを考えている人が多いのですが、景気が悪いのでどこの会社もかなり大胆なコスト削減をやっています。その一つは、事務所を買ったり借りたりしないで従業員やらコンサルタントを雇って商売すること、もしくは、元々あった事務所をすっきりなくして、従業員には家で仕事させること、であります。

これ、中小企業の話ではなくって、金がある石油会社や情報通信系会社や金融のお話であります。中小企業はとっくにやってますが、大企業でもこういう経費をバッサバッサ切ります。人が増えたりプロジェクトが立ち上がっても、新たなオフィスを借りずに、シェアードオフィスの施設を使って済ましてしまうわけです。もしくは、雇うけど家で仕事してくれ、お前の席はないんだ、と冷酷に言われます。

大企業も中小企業もフリー使うことができる様な貸し会議室、電話秘書サービス、私書箱、ネット、ラウンジなどを包括的に備えたシェアードオフィスはシェアードオフィスセンターと呼ばれています。ロンドンには440あまりのシェアードオフィスセンターがあり、主要都市の中では最も数が多い都市となっています。世界市場の約8%を占めます。このサイズ、香港、パリ、ニューヨーク、東京、シドニーのシェアードオフィスを合わせた数より大きいのです。次に大きな市場はニューヨークですが、それでも100か所ほどしかありません。

ちなみにロンドンはこういうオフィスの数が多いので値段はお手頃であります。なぜか東京の方が高いんですよね。何でもぼったくりの日本らしいですね。

ワタクシもこういうオフィスを使うことがあります。なぜスタバに行かないか?あんなドブ水コーヒーを誰が飲むんですか。しかもカフェなんてDQNやヤク中の巣窟ですからね。

ロンドンの場合、使っているのは中年以上の専門職風おっさん&おばさんばかりで、チャラチャラとMacBookエアで動画見てひゃっはーなお子様などおりません。Windows率が80%以上で、暗黒装束の人々が寡黙に仕事する場所であります。どこもシーンとしております。部活とか交流?ありません。みんな忙しいですからね!うざいから話しかけてくんじゃねえよ、という雰囲気が蔓延しております。

「コワーキングで新たな出会い!「シェアオフィスで従来の働き方とは異なる新たな価値の創造!!」なんてお花畑なことを言ってる人はいないんですよ。だってそこにいる人の多くがレイオフになった自営業ですからね。現実を知っている大人は自分の誰とも出会いたくないんですよ!

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。