ちょっと遅くなりましたが、Yahoo!が在宅勤務辞めないなら首にするぞという手紙を従業員に送った件について。
テクノロジー業界界隈ではかなり話題になっております。なにせ、あのYahoo!が、頭の柔らかい人々が集まる(はず)のテクノロジー業界では当たり前になっており、従業員の生産性を向上させ、環境にも優しいはずの在宅勤務を禁止したのです。会社によってはスタッフがほとんど外注とか、世界中に散らばった在宅勤務の人ばかりだというのが当たり前の今日この頃です。例えば、WordPressは、150人中130人の人がサンフランシスコ以外から働いており、創業者の方はやる気があるなら誰でも働いて下さいと言っています。
このYahoo!の決断は、500名ちょっといる在宅社員のうち、制度を悪用して全然働かない人を追い出すためであるという、噂もあります。が、旬を過ぎたYahoo!には、そもそもいけてる人というのはおらず、この決定は、自由にやりたい人や、子持ち社員、女性社員などの反感を買い、優秀な人が逃げていく可能性があり、Yahoo!の緩やかな終わりの始まりではないか、という憶測もあります。
メイヤー氏は、2週間の産休を取って仕事に復旧しましたが、社長室の横に育児室があり、乳母も雇えるだけの十分な給料をもらっているので、仕事をフルタイムでしていても家庭生活には何の支障もありません。しかし、Yahoo!の大多数である貧乏な社員は、乳母を雇う余裕も、自分のオフィスに育児室を作ってしまう様な権限もありません。メイヤー氏が何らかの反感を買うのは想像するまでもないでしょう。
さて、この騒動からは面白い教訓が得られます。それは、在宅勤務を可能にする条件です。条件というと、技術のことを思い浮かべる人がいるかもしれませんが、それは違います。
最も重要なことは、メンバーがビジネスの目的を共有していること、ビジネスに熱意を持っていること、そして、他のメンバーや会社と十分な信頼関係を保っていることなのです。
何をやるべきかわかっており、それを達成する強い使命感と熱意があり、働く人お互いに信頼関係があれば、在宅勤務制度を悪用してさぼる人はいないのです。私も創業期のスタートアップで働いたことがあるので、わかるのですが、目的がはっきりしていて、どんどん働かなければならない環境では、ずるなんてしている暇はありません。在宅であっても、朝も夜中も働くのです。
でも、それは、働かされているという感覚ではありません。他のメンバと協業してよい物を作っていくという感覚です。そういう環境であれば、喫茶店に休憩にいこうが、どこで働こうが関係ないわけです。
そして、熱意や信頼というのは、お金や豪華なオフィスで買うことはできません。
それは、金融関係の会社には強固な監査の仕組みや、従業員を監視するシステムがあることからわかります。豪華なオフィスや給料を与えても、熱意の共有も信頼もなければ、人は不正を働くのです。
今のYahoo!には、メンバの間に目的の共有がなされておらず、熱意を持った人が多くはなく、お互いを信用していない人が少なくないのかもしれません。Yahoo!の終焉をもたらすのは、その様な熱意のなさや、信頼の欠如なのかもしれないのです。メイヤー氏がそこをどのように改善していくのか興味深いです。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。