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「2.1GHz帯は超高速バンドに位置づけ」KDDIが今後のLTEネットワーク戦略を説明

2013.09.02

Updated by Asako Itagaki on September 2, 2013, 22:53 pm JST

9月2日、KDDIは、一連のLTE通信障害への対策状況と今後のネットワーク戦略について説明会を開催した。田中孝司代表取締役社長が、障害対策が完了したこと、また今後のau 4G LTEの戦略についてプレゼンテーションを行った。

LTE通信障害への対策は前倒しで完了

201309022130-1.jpgまずはじめに田中社長は、4月23日、5月29日、5月30日の3回にわたって発生した4G LTEにかかわる通信障害に対して行った対策について説明した。

一連のLTE通信障害に対しては、「ソフトウェアとハードウェアの品質向上」「運用品質の向上」「通信障害防止に向けた容量設計・指針の確立」」の3つにもとづく「スマートフォン/4G時代に見合った"機能安全"の確立」すなわちフェールセーフの状態を維持することを基本方針とした。そのための推進体制として、田中社長を本部長とするLTE基盤強化対策本部を設置し、「お客様満足度向上」「運用品質向上」「収容設計改善」「設備品質向上」の4つのワーキンググループが中心となって対策をすすめた。

その結果、「ソフトウェア・ハードウェアの品質向上」については、当初予定を前倒しで実施し8月上旬には対策を完了。運用品質の工場については6月末まで、容量設計については障害の原因となったMME(Mobile Management Entity)収容基準を見直し、MMEを6月10日時点の19台から8月末時点で60台に増設。ひきつづき増強および検証・訓練環境を整備している。

こうした対策をもって、LTE通信障害については対処が完了したとした。障害対処フェーズを終え、ネットワーク強化フェーズでは、設備増設に合わせてLTEネットワークの拡充をしていく必要があるという認識を示した。

また、LTE基盤強化対策本部の4つのワーキンググループのうち、お客様満足度向上ワーキンググループの活動について紹介した。ユーザーの声をツイッターやSNSを活用してリアルタイムで収集して情報発信し、運用にフィードバックする。これをイベント対策に適用して、2013年夏に花火大会やコミックマーケットなど、全国約370のイベントで対策を行った。「花火大会などのイベントは、多くの人が集まって多量のトラフィックを流す、通信事業者にはネットワーク的に厳しい環境。このような場面でも通信が確保できるように、ワーキンググループの仕事としてイベント対策を実施し、大きな成果が得られたと自負しています」(田中社長)

▼「一番厳しかった」というコミックマーケットでは、車載型基地局と社員による人間Wi-Fiが登場。センターでモニターしているトラフィック状況やSNSの書き込みを見て、リアルタイムに社員に指示して人間Wi-Fiが必要なトラフィックを吸収していた。
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800MHz帯をベースにLTE全国エリアはほぼ完成

LTEのサービスを開始してから1年が経とうとしている今、新しいau 4G LTEのキャッチフレーズとして提示したのが「つながる力」である。つながる力の要素として、「どこでもつながる力」「超高速でつながる力」「こだわりのつながる力」の3つを挙げた。

「どこでもつながる力」はすなわちエリアカバレッジのこと。KDDIでは1.5GHz帯、2.1GHz帯、800MHz帯の3つのバンドでLTEを展開しており、2013年夏モデルのAndroid LTE端末はトリプルバンド対応となっている。このうち800MHz帯を「LTEのベースバンド」と位置づけ全国に10MHz幅・下り75Mbpsのエリアを展開する。

▼KDDIのマルチバンドLTE。800MHz帯をベースバンド・2.1GHz帯を超高速バンド・1.5GHz帯を混雑対策バンドと位置づける。
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800MHz帯の2013年8月末現在の実人口カバー率は97%。これを2014年3月末には99%に引き上げ、LTE全国エリアをほぼ完成する。

なお、新しいiPhoneの800MHz対応については、「ここでは言えません」とコメントしたものの、新機種が800MHz帯対応になった場合、利用を希望するiPhone 5利用者に対しては、「買い取り強化などなんらかの施策を考える必要がある」という見方を示した。

2.1GHz帯は高速ネットワークサービスバンドへ

「超高速でつながる力」は、マルチバンドLTEを活用して実現する。ベースバンドの800MHz帯に加え、3Gから順次LTEに転用する2.1GHz帯、特に混雑の激しいエリアから重点的に配置する1.5GHz帯の3つのバンドについて、混雑状況をネットワーク側で把握し、空いている周波数帯ををシームレスに切り替えて利用することで混雑時でも快適なLTEネットワークを実現する。

▼3つのバンドをシームレスに切り替えて混雑状況を均等化する。
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2.1GHz帯については、3Gの空き状況を見ながら徐々にLTEで使う周波数幅を広げていくことで、超高速バンドとして運用していきたい意向だ。現在、5MHz幅・下り37.5Mbps以上として見たときの実人口カバー率は72%。これを2014年3月末までに80%台半ばまで引き上げを目指しながら、ネットワークの混雑状況を見ながら可能なところから3Gの使用している周波数幅をLTEに切り替えていく。

2013年8月末時点でで10MHz幅・下り75Mbps以上の実人口カバー率は31%、同15MHz幅・下り112.5Mbpsの実人口カバー率は6%。3Gがすいている地域からLTEの帯域幅が増えるので、まず人口の少ない地方部からLTEが高速化していくことになる。「現状は東京近郊でいえば、横浜や、大宮のもう少し内側までが10MHz幅、逆にもう少し外側にいくと15MHz幅という感じ」(田中社長)とのことだ。また、既に一部では20MHz幅のサービスも8月から開始していることも明らかにされた。

▼帯域幅別の実人口カバー率。3G利用者の減少に応じて、順次高速化をはかる。
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都市部でも、LTE対応端末の利用者が増え、3Gの利用数が減ってくれば、3Gの周波数帯をLTEに移せるので2.1GHz帯の高速化が可能になる。しかし、具体的な高速化のスケジュールについては、「ユーザーがどれだけLTE対応端末に移動して3Gのネットワークが空くかによるので、なかなか決まった予定を言うのは難しい」とした。

「つながってほしいのにつながりにくい」場面を重点的に対策

最後の「こだわりのつながる力」は、「つながってほしいのにつながりにくい」場面をきめ細かくフォローすることで、「つながる実感」で高評価を得ることを目指す。

具体的には「高速移動中」「屋内」「イベント」の3つの場面を想定。高速移動中については、東海道新幹線でのLTEから3G へのハンドダウン回数が平均2.1回ということろまで改善された。屋内対策については、800MHz帯の電波が2.1GHz帯に比べると浸透しやすいことを利用したエリア化の他、ピコセルの設置などにより、主な屋内施設や地下街のLTE化はほぼ対策済み。全国の地下鉄駅のLTE対応率は99%、東京都内の地下鉄駅間のLTE対応率も99%となっている。また、イベントについては、今年の夏の経験を活かして移動基地局の設置など、通信環境への取り組みを強化する。

TD-LTEスマホについては「考えていきたい」

質疑応答では、先日UQコミュニケーションズに2.5GHz帯の新規周波数割り当てが決まったことを受け、auとしてTD-LTEにどう取り組むかという質問があった。田中社長は、「私自身としては、エコバンドの2.5GHz帯で、ほぼテクノロジーはTD-LTEもFD-LTEも変わらないので、スマートフォンの適用を考えたいが、いつから、どのような形でという具体的なことはまだ決まっていない」と回答した。

また、キャリアアグリゲーション(参考情報)などのLTE-Advanced(参考情報)への取り組みについては、「より新しいテクノロジーを使って、容量が得られるのであれば阻害要因はない」と、準備は進めているとしつつも、時期については「しかるべきタイミングがきたら発表することになる」とした。

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。

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