「世界のモバイル通信事情」にて3回に渡ってカンボジアの通信事情についてお届けしてきた。
・東南アジア編(1) カンボジア通信市場の概観
・東南アジア編(2) カンボジア市場の端末
・東南アジア編(3)カンボジアで存在感のある中国、韓国企業と日本
筆者は2013年9月にカンボジアを訪問してきたが、そのカンボジアでは日本の上智大学が現地で非常に有名なことに驚いた。特にアンコールワット遺跡群があるシェムリアップではカンボジア人のガイドやビジネスマン、政府の役人だけでなく、ふつうの少年、少女や物売りの子供たちも日本の上智大学を知っていた。
たしかに、アンコールワットに入ると、すぐ左側に上智大学が修復したということを記すプレートが大きく掲げられている。そこでは日本だけでなく世界中から来た観光客が見たり、ガイドから説明を受けている。
物売りの子らはどこまで日本の上智大学を知っているのかは不明だがシェムリアップの遺跡群(バンテアイ・クデイにある教育センター)近所にいる物売りの子らは、上智大学の教育センターを指差して「ソフィア、ソフィア」と言っていた。
上智大学では石澤元学長が提唱した「カンボジア人のためのカンボジア人による遺跡修復」という哲学に基づいて遺跡の保存修復を行っているそうだ。シェムリアップ市内には「アジア人材養成研究センター」があり、そこも訪問しお話を伺うことができ、現地での上智大学の活躍ぶりを感じた。
現地での上智大学の活動の詳細について私は専門家ではないし、すでに新聞やメディアなどで多く情報は出ているので、ここでは割愛させて頂く。
日本語を学習している現地のガイドらは日本に行き上智大学に留学したいと真剣に語っていた。ビジネスマンや政府の役人は上智大学のアンコールワットでの遺跡修復への貢献に謝意とリスペクトを述べることが多く、たとえそれがリップサービスであったとしても日本人としても非常に嬉しいものである。そのせいか非常に親日的な国である。
カンボジアは2013年の選挙で政局は混乱していたが、観光やビジネスで訪れるには基本的に落ち着いている。そして日本人もたくさんアンコールワット周辺の観光に訪れていて、観光業は農業、縫製と並んでカンボジアの重要な経済産業である。そのカンボジアにおいて現地でここまで上智大学(英語読みで「ソフィア(Sophia)」と呼ばれている)の名前が有名なことに日本人として誇りを持ちたいものである。
上智大学のような日本の組織や個人がカンボジア(現地)では有名というようなケースは世界中に多くある。このような世界中のあらゆる地域でのローカルにおける、現地の人を主体とした持続可能な活動と、それによる現地からのたくさんの感謝とリスペクトで親日的な国が増えていくことが日本のグローバル化を支えているのだろう。
▼アンコールワットにある上智大学の業績を説明したプレート。「SOPHIA MISSION」と記されている。
▼バンテアイ・クデイにある教育センター。2011年12月に開設し、文化遺産啓蒙教育プロジェクトが本格的に始動した。
▼シェムリアップ市にある上智大学アジア人材養成研究センター。1996年設立。
【参照情報】
・石澤良昭氏インタビュー記事
・上智大学アンコール遺跡国際調査団
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登録はこちら2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。